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<連載>OMと旅する鉄道情景(第6回/神谷 武志)GROUP K.T.R

輝く夜の電車区を撮る(その1)

地元で楽しむ「変化球の撮影」

東京の西部、多摩から埼玉にかけてネットワークを広げる西武鉄道。
神谷の地元は京王線・JR中央線のあたりなのですが、西武も準地元。高校も大学も、西武バスと西武電車に揺られて過ごした身近な交通機関です。
当然ながら神谷が学生だった遠い昔から、車両の顔ぶれは相当代わってしまいましたが、依然としてバリエーション豊かな形式の電車が次々やってくる楽しさは今も健在。そんな西武線を変化球で撮ってみようと、最近広角主体で出番が少し減っていて防湿庫の中で不満そうな表情をしていた(ように思えた)M.ZUKO DIGITAL ED100㎜~400㎜ F5.0-6.3 IS を、毎度の相棒「無敵のM.ZUKO DIGITAL ED12~100㎜ F4.0 IS PRO」と単焦点レンズ2本のトリオにプラスして電車に乗りました。

向かうは池袋線・小手指駅。

OM-D E-M1MarakⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

神谷の学生時代の西武線といえば、このカラー。
多摩川線で今も復刻塗装として見ることができます。

OM-D E-M1MarakⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

こちらは現役。滋賀県・三岐鉄道に移籍した元西武701系電車。三岐鉄道の心尽くしで、1編成が懐かしい西武色に復元されました。
今も西武線沿線に住む、高校時代の同級生に連れてってもらって撮った一枚です。

驚きスケールの小手指車両基地

小手指車両基地は、小手指駅の先、次の狭山ヶ丘駅への駅間半ばに至るまでの広大な面積を誇ります。
駅から線路に沿って歩きます。と、遠い…
もう見えているのに、広大ゆえに一向に先に進まないかのような錯覚をするほどの縦長な車両基地。でもボディ2台、レンズ3本を背中にしょってもこうして歩けるのは小型軽量なOMならでは。
OMでなければ…。つくづく実感します。
一体誰が800㎜相当の望遠レンズまで持って、まだ暑かったこの時期、汗をかきながら歩けるでしょうか。過去、徒歩鉄に際して「やっぱり重いもんな…」と躊躇しながらレンズを減らして旅に出て、そういったときに限って置いてきたレンズの出番が山盛りに現れる…という「マーフィーの法則」に幾度となく対面し、それでもなお同じ失敗を繰り返してきた私。OMに機材コンバートしてから、ようやくその桎梏から脱することができた気がします。

駅から歩くこと25分、約1.7㎞。車両基地の西端に到着します。
西端は道路に面していて、金網や有刺鉄線はあるものの、広大な車庫をすべて見通すことのできる、レアで素敵な場所です。
でも線路の反対側は住宅地。言わずもがなのことですが、ここは生活の場でもあります。しかも今は夜。われわれはマナーを守って、静かに電車たちを見守りましょう。

OM-D E-M1MarakⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

まだ走り続ける本線電車を横目に、一足先にお休み。

手持ち無双のOMシステム

時刻は夜の22時。平日なので、これから一日の務めを終えた電車たちが次々と帰庫してくる時間。車庫撮影にはゴールデンタイム。
しかし広大ゆえに、10両編成の電車が縦列に3本入庫するという撮影者泣かせの基地なんです。日によって停車位置が変化するというのも、アングルに悩みます。入庫の位置あては「占い」のようなものです。
でも、それもまた愉しきかな。
今日の狙いは、縦列の中ごろ。ずっと遠景を狙おうとするもの。
こんな時こそ、さあ。100~400㎜の出番だ。
頼むぜ100~400㎜。
夜の車庫撮影に、このレンズの見せ場を用意する。
野鳥や飛行機、モータースポーツにもちろん鉄道も。
どちらかというと「昼間の動きモノ」に活躍の場が多いこのレンズ。レンズに口が聞けたらびっくりするかもしれないけれど、その威力を発揮するのは今。
コントラスト高いLED照明で照らされた車両基地の情景は、昼見るそれとまったく異なるSF映画のような異次元感があります。
ファインダーの中、超望遠独特の遠近感が圧縮された絵柄の中、身体を休める通勤電車たち。鞄を持ち電車を降りる乗務員さん。
電車も乗務員さんも、今日一日、お疲れさまでした。
異次元感ある…とつい書きましたが、一方どこか懐かしい、蒸機時代から変わらぬ「車庫」の眺めのようでもあります。
フードを外し、金網にレンズの前面を密着させて、心静かに電子シャッターを連写する手持ち撮影。それでも金網は画面にかかってしまいますが、絞りを開放にして網の位置を工夫すれば、大きな障害は避けられます。高所照明が金網の干渉でクロス状に光条を放って、むしろアクセントになりました。

OM-1 / MM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
(ISO6400 絞り開放 1/50秒 400㎜で撮影)
OM-1 / MM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS(ISO6400 絞り開放 1/30秒 400㎜で撮影)

カメラを持って出かけよう。「近場の冒険」

100~400㎜にはレンズ内手振れ補正とボディ内手振れ補正のシンクロ機能はありませんが、それでも充分頑張ってくれました。
「換算800㎜で、手持ち1/30秒&1/50秒」。
OMシステムでなければ簡単には成しえない優位点でしょう。
鉄道写真はスタジオワークではありません。
持って出て、手持ちで撮れる「800㎜の画角」。
この組み合わせでないと見ることの出来ない情景は、身近なここにもありました。
カメラを急いで仕舞い、小走りで駅へと向かいます。おっと!最終電車の時間が秒読みだ。
行きよりなぜか荷物も足取りも軽く感じる。100~400㎜の活躍のおかげだね。
ありがとうね100~400㎜。

筆者紹介

神谷 武志(カミヤ タケシ / Takeshi Kamiya )

1963年 東京都新宿区生まれ。1995年より、交通新聞社「月刊鉄道ダイヤ情報」誌にて海外蒸機紀行を6年、国内編を4年、足掛け10年間連載を担当。ほかJAL機内誌や鉄道雑誌(日本・台湾)などで活動。著書は「世界を駆ける蒸気機関車」(弘済出版社)、「日本路面電車カタログ」、「蒸気機関車紀行」(イカロス出版)など。クラブツーリズム社写真ツアー講師。「鉄道写真をもっとオトナの趣味に」をテーマに、地元・鉄道・撮影者がみなHAPPYになれる関係を目指して、さまざまな撮影イベントを企画・運営している。

※GROUP K.T.Rとは、このnoteを担当する「鉄道を愛し、OMを愛する」3人のフォトグラファー牧野和人、神谷武志、高屋力の名前のイニシャルから取った頭文字です。
グループの首謀者神谷の準地元であり、OM SYSTEMの地元でもある「京王線」の旧社名をリスペクトした名称でもあります。今後もさまざまな鉄道ネタをご紹介していきます。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。


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