■きっかけはグループ展 2022年の春、写真仲間と同年9月頃にグループ展を開催しようという話になったことが始まり。都会の暮らしの中で目に入ってくる意外なギャップを共通のテーマとし、6人のカメラマンがそれぞれのテーマで数点の作品を発表するという写真展です。都心からわずか15分以内に昭和の町並みを走る小さな電車、東急世田谷線をテーマに撮り歩きすることにしました。
外国のような雰囲気の三軒茶屋駅 OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 24.0mm / シャッター速度 : 1/80 秒 / 絞り値 : F4.5 / ISO感度 : 400 ■町中を走る小さな電車 東急世田谷線は、東急田園都市線の三軒茶屋から京王下高井戸までの約5kmを20分弱で結ぶ東急電鉄の路線で、途中、山下駅では小田急とも接続します。「東京さくらトラム」とも呼ばれる都電荒川線と同じく、東京都内に残る軌道線ですが、都電とは違って併用軌道はなく、各駅の駅間距離が1km以内で、終日、地元住民の足として利用されています。すべてカラーが異なる2両の300系10編成が、昭和の雰囲気が残る町の中を走ります。
昭和の雰囲気が残る西太子堂駅前 緑のお店と 旧 玉電カラーの電車 OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 46.0mm / シャッター速度 : 1/160 秒 / 絞り値 : F4.0 / ISO感度 : 400 ■視点を変えた鉄道写真 比較的新しい電車で特に珍しくなくても、ちょっとした視点や撮り方の工夫で、オリジナリティのある作品が撮影できるのではないかと、線路沿いの道を歩きながら撮影。沿線の鮮やかな色が目につく昭和の町並み、電車と同じ色と合わせてみることができるのでは、とイメージが浮かんできます。
沿線のカラフルな被写体を引き立たせようと、スローシャッターで電車を流したり、手前の被写体にピントを合わせで電車をぼかすなど、主役の被写体に目がいくように撮影をします。
若林駅前の緑と白のお店と 旧 玉電カラーの緑と白の電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 114.0mm / シャッター速度 : 1/3 秒 / 絞り値 : F18.0 / ISO感度 : 100 2021年に撮影したキバナコスモスとオレンジの電車 OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 80.0mm / シャッター速度 : 1/3200 秒 / 絞り値 : F2.8 / ISO感度 : 400 ■花といろあわせ 沿線の建物や花と合わせて撮っていくうちに、花と合わせたものだけで展示ができないかと、想像が膨らんできます。まずは、その時点で撮影していた花との組み合わせたカットをセレクトしてみます。
ピンクのタチアオイと電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 42.0mm / シャッター速度 : 1/5 秒 / 絞り値 : F18.0 / ISO感度 : 100 白のタチアオイと 旧 玉電カラー 緑と白の電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 46.0mm / シャッター速度 : 1/6 秒 / 絞り値 : F16.0 / ISO感度 : 100 オトギリソウと黄色の電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 190.0mm / シャッター速度 : 1/160 秒 / 絞り値 : F7.1 / ISO感度 : 1000 花との組み合わせだけでまとめられそうな気がしてきました。展示するイメージも考えるとまだ足りません。ちょうど6月にかかっており、あじさいの花と合わせようと撮影に出かけます。
青のあじさいと青の電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 42.0mm / シャッター速度 : 1/10 秒 / 絞り値 : F6.3 / ISO感度 : 200 緑の電車は葉っぱと合わせてみました OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 132.0mm / シャッター速度 : 1/125 秒 / 絞り値 : F8.0 / ISO感度 : 200 ■「幸福の招き猫」電車 2019年より50周年記念企画のひとつとして運行されている、豪徳寺が発祥とされる招き猫をデザインしたラッピングの「幸福の招き猫電車」も展示作品に入れたいで電車です。花ではなく招き猫と合わせたいところですが、電車から豪徳寺の招き猫は見えないので、豪徳寺の授与品の「招福猫児」を最寄りの宮の坂駅に持ってきて撮影をしました。
豪徳寺の招福猫児 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO 焦点距離 (35mm換算) : 62.0mm / シャッター速度 : 1/50 秒 / 絞り値 : F5.6 / ISO感度 : 1000 最寄り駅の宮の坂駅 豪徳寺の授与品「招福猫児」と「幸福の招き猫電車」 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 128.0mm / シャッター速度 : 1/320 秒 / 絞り値 : F8.0 / ISO感度 : 400 ■よりいい作品を目指して 撮影も7月に差し掛かり、沿線ではひまわりが咲き始めました。黄色はすでにオトギリソウと撮影していましたが、ひまわりに魅力を感じて途中下車。なかなか花と電車のバランスやタイミングで思い通りに撮れず、何度も折り返してくる黄色の306号を待ち続けて撮影しました。翌週にはひまわりの背が高くなっており、このイメージでは撮れなくなっていました。
ひまわりと黄色の電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 32.0mm / シャッター速度 : 1/15 秒 / 絞り値 : F13.0 / ISO感度 : 80 展示イメージの8点は揃い、そろそろ写真展の作品の注文時期に近づいてきたころ、1年前に撮影していたオレンジのキバナコスモスとの組み合わせを撮りなおしたく、稼働している確率が高い、平日のラッシュ時に出かけます。沿線にはこの年もたくさんキバナコスモスが咲いています。広角レンズで捉えたこの1点を最後に展示作品を確定しました。
2022年に撮影したキバナコスモスとオレンジの電車 OM-1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO 焦点距離 (35mm換算) : 24.0mm / シャッター速度 : 1/4000 秒 / 絞り値 : F2.8 / ISO感度 : 200 ■作品を通じて地域の魅力を発信 展示のレイアウトまでが作品づくり 世田谷線のカラフルな電車ならではの特徴で捉えた8点の作品を、プロフィールと組み合わせて3×3でレイアウト。スローシャッターで流れている電車が真横に写っている作品を四隅に配置することで、全体が引き締まった感じになります。豪徳寺の招福猫児を再現したプロフィール 世田谷線のカラフルな電車に、世田谷の招き猫のイメージを組み合わせたく、プロフィールのパネルでは豪徳寺の「招福猫児」を立体的に再現、来場いただいた方との会話につながりました。
2022年9月 グループ展での展示イメージ 東京お写んぽ倶楽部 First 写真展「GAP the TOKYO」 すべてが一期一会 町の電車の撮り歩き、小型のカメラリュックで機材を身軽に持ち歩くこともあれば、カメラ1台を手に持って、ぶらっと出かけることもあります。機材が軽いと、歩く距離も伸び、多くのシャッターチャンスに出会えます。みなさんもぜひ小型軽量の OM SYSTEM を持って、のんびり歩きながら撮影を楽しんでください。
撮影・記事 高橋 渉 / Wataru Takahashi 公益社団法人 日本写真家協会 会員 公益社団法人 日本広告写真家協会 会員
●今回の機材OM SYSTEM OM-1 M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO ●以前に撮影した作品の機材 OM-D E-M1 Mark II
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