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キラキラネームに基準を設定!!

政府は、現在記載のない氏名の読み仮名を必須とした上で、読み方の基準を定める戸籍法の改正案を3月7日に閣議決定しました。成立すれば2024年度から施行される見通しです。

定着して久しい「キラキラネーム」は、漢字本来の読み方と異なる読み方の名前だったり、漢字の読み方や意味から連想することができない名前のことなどを言いますが、今回の改正案ではそうした名前の読み方について「指名に用いる文字の読み方として一般に認められているもの」を許容範囲として明記するそうです。それにより新生児が初めて戸籍に載せる際には読み仮名も併せて付け、既に戸籍がある国民は施行後1年以内に本籍地の市区町村に届け出ることになるとのこと。

また、「一般に認められているもの」の範囲外となるものは常用漢字表や辞書などへの記載が無いものであり、こうした場合でも届出人の説明があれば記載が認められる場合もあるそうです。法務省から出される通達では①漢字とは意味が反対、②読み違いかどうか判然としない、③漢字の意味や読み方からはおよそ連想できない、といった読みは許容されないと示される予定です。

まぁやっとですね。この問題を修正するのに何年かかったのでしょうか。親戚の子供が通っている中学校でも、読めない名前の子供がたくさんいます。常用外の漢字を使うケースや某キャラクター名に当て字したケース、常用漢字だが、意味がバラバラのケースなどですね。こうした名前が当たり前になればなるほど、様々な弊害が発生すると思ってしまいます。


■キラキラネームは違法?

そもそも、読み仮名もそうですが、とても人名に思えない名前をわが子に付ける親は法律に抵触する可能性があることをご存じでしょうか。それは有名な「悪魔ちゃん命名騒動」で裁判所が判断したことで明らかになります。

この騒動は、昔、自分の息子に「悪魔」という名前を付けて出生届を提出した親がいました。役所はその出生届を受理したものの、職員の間で疑問が生じたため法務省に確認を取ったところ「問題ない」との回答を得たため受理手続きに入りました。

しかし、後になって法務省から「子の名を『悪魔』とするのは妥当でなく、届出人に新たな子の名を追完させ、追完に応じるまでは名未定の出生届として取り扱う」との指示があったため、役所は戸籍に記載された「悪魔」の文字を誤記扱いとして抹消し、親に別の名前を付けるように指導しました。

ところが、届出人である親は家庭裁判所に不服申立を行い、その結果、家庭裁判所は「受理手続きを完了するように」との判断を下しため、「悪魔」の名前が認容されることになります。この時の家庭裁判所の判断は

命名権の行使は自由であり、市区町村長の命名についての審査権も形式的審査の範囲にとどまり、実質的判断までも許容するものではない。しかし、例外的に命名権の乱用に亙るような場合や社会通念上明らかに名として不適当と見られるとき、一般の常識から著しく逸脱しているとき、または名の持つ本来の機能を著しく損なうような場合には、市区町村長においてその審査権を発動して名前の受理を拒否することも許される。」

「本件命名によって出生子の社会不適応を引き起こす可能性も十分ありうるため、本件命名は出生子の立場から見れば命名権の濫用であり、市区町村長が不適法として出生届の受理を拒否されてもやむを得ない。」

「しかし、本件命名については役所は誤って戸籍面に記載する等して、その届け出を受理しているため、本件命名を訂正(抹消)するには法廷の手続(戸籍訂正)をとる必要があったが、役所はそれをせずに戸籍の記載を抹消したため、違法、無効と言わざるを得ない。」

簡単に言えば、「悪魔」という名前は命名権の濫用で戸籍法違反であり、例外的に役所は名前の受理を拒否することも許されたが、(法務省の指示に従ったとはいえ)一度その届出を受理して戸籍に記載している以上、両親に戸籍訂正の申請をさせずに、一方的に『悪魔』の表記を戸籍から抹消したのはイカンでしょという事です。

この判断に役所側は即時抗告する方針を固めたものの、最終的に親が不服申立を取り下げたため審判は終了し、出生から10ヵ月後に新しい名前の届け出られたことによりこの騒動は終結しました。

この問題は大手新聞社でも報じられ、様々な反響がありました。親は週刊誌などで「悪魔が認められれば、次は帝王か、爆弾を考えている」などの発言をしており、個人的には非常識極まりないと思ったのを覚えています。

現在でも、子どもにキラキラネームや、そうとは言えないものの漢字本来の意味から外れた当て字などで名づけをする親はいますが、今一度、社会通念上明らかに名として不適当でないか、一般の常識から著しく逸脱していないか、または名の持つ本来の機能を著しく損なうような名前ではないか、客観的に考えた上で名づけをして欲しいと願います。

なお、徒然草116段には以下のように書かれています。
「寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は、少しも求めず、たゞ、ありのまゝに、やすく付けけるなり。この比は、深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。  何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ」

現代訳では
「お寺の名前や、その他の様々な物に名前を付けるとき、昔の人は、何も考えずに、ただありのままに、わかりやすく付けたものだ。

最近になって、よく考えたのかどうか知らないが、小細工したことを見せつけるように付けた名前は嫌らしい。人の名前にしても、見たことのない珍しい漢字を使っても、まったく意味がない。

どんなことも、珍しさを追求して、一般的ではないものをありがたがるのは、薄っぺらな教養しかない人が必ずやりそうなことである。 」


■政府の対応

当時の法務大臣は、「悪魔」という名が社会通念に照らして命名権の濫用であるとしたものの、「命名の基準のような価値評価がからむ事案に行政庁が一律の基準を作るのは難しい」とも答えました。そこから四半世紀以上の時を経て、やっとキラキラネームに対する制限がなされるわけですが、正直遅いなぁという感想しかありません。

この騒動以外でも、「王子様」と名付けられた子供もいましたね。この子は成長してから自ら家庭裁判所で名前の変更を行ったそうで、その時のことをネット上で公開したため、ちょっとした反響がありました。

こういう子供はまだまだ居ると思いますし、社会不適応になった子供もいるでしょう。それは対応が遅れた政府にも責任がありますし、そうした非常識な考えを是とする親を教育した者にも、肯定し、応援した者にも責任があります。両親の離婚に際し、子どもの福祉を盾に非常に高い確率で母親に親権を渡しているのに、命名に関しては子どもの福祉をまるっと無視するのでしょうか。

命名は誰のために行うのか

それを多くの人にもう一度よく考えてもらいたいですね。


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