地獄めぐりファンタジー:嘘つき閻魔と十王裁判第二章 嘘つき閻魔の居眠り裁判!? #創作大賞2024 #漫画原作部門
「最初の目的地は、一番地獄! 嘘つき閻魔の舌抜き地獄でございます!」
ガイコツのハイテンションなアナウンスに、バスは大きく揺れながら、禍々しい炎に包まれた谷へと進んでいく。窓の外には、真っ赤に煮えたぎる鉄鍋の中で、罪人たちが「熱いよー!」と叫びながら、鬼たちに舌を抜かれているのが見える。
「うわぁ…」
思わず目を背ける私に、隣の席の老婆が話しかけてきた。
「あんた、初めてかい? 地獄は初めてでも、閻魔大王の顔は見たことあるだろう?」
老婆に言われて、閻魔大王の顔を思い浮かべてみる。…あれ? どんな顔だったっけ?
「閻魔大王って…どんな顔でしたっけ…?」
恐る恐る尋ねると、老婆は大きなため息をついた。
「まったく、最近の若いやつは…閻魔大王様といえば、あの、恐ろしくも厳格なお顔! ひと目見ただけで、罪人どもは震え上がり、嘘をつけなくなるっていう…」
老婆が熱弁を振るう中、バスは巨大な裁判所のような建物前に到着した。
「着いたようだな。第一地獄、嘘つき閻魔の舌抜き地獄だ」
重々しい声と共に、バスの扉が開く。目の前に立っていたのは、身の丈二メートルはあろうかという、筋骨隆々の赤鬼だった。…しかし、よく見ると、その顔には不釣り合いなほど小さな、丸眼鏡がちょこんと乗っている。
「え…っと…」
「なんだ、小童! 閻魔大王様に何か申し立てがあるというのか!」
「い、いえ、あの…その眼鏡…」
思わずツッコミを入れると、赤鬼は慌てて眼鏡を隠し、咳払いをした。
「こ、これは…えーっと、最近の地獄は書類仕事が多くてな! 老眼対策に必要なんだ!」
「あ、はい…」
何か色々とおかしな閻魔大王だが、とりあえず裁判は始まるらしい。巨大な裁判所に入ると、そこには地獄の裁判とは思えない、明るくポップな装飾が施されていた。
「なんだこれ…?」
「最近の地獄は、明るく楽しくがモットーらしいんだ。閻魔様も、イメージアップに必死らしいぜ」
後ろに並んでいたサラリーマン風の男が、呆れたように呟く。
「それでは、被告人、佐藤誠! 前へ!」
名前を呼ばれ、恐る恐る閻魔大王の前に進む。大王は、分厚い書類の山に埋もれながら、あくびを噛み殺している。
「さ、佐藤誠…。貴様は生前、上司に嘘をつき、残業を逃れた罪でここに来たな…?」
「え、あ…はい…」
「…で、言い訳は?」
「えっと…その…疲れてて…」
「判決! 佐藤誠には、嘘つき地獄にて、永遠に舌を抜かれる刑を言い渡す!」
「えぇーっ!?」
あまりにもあっさりとした判決に、私は思わず叫んだ。
「ちょ、ちょっと待ってください! まだ何も説明してません!」
「ん? まだ何かあるのか?」
閻魔大王は、面倒くさそうに書類から顔を上げた。その瞬間、私はあることに気がついた。
「…閻魔様、今、あくびしましたよね?」
「え?」
「それに、その書類、逆さまです」
「なっ…!?」
閻魔大王は慌てて書類をひっくり返した。裁判所内がざわめき始める。
「な、なんだこれは…!?」
閻魔大王は、冷や汗を流しながら、書類をパラパラとめくっている。
「こ、これは…昨日の残業の…」
「閻魔様、まさか…」
「う、うそをつけぬ…!」
ドサッ!
閻魔大王は、机の下に崩れ落ちた。
「「「閻魔様が倒れたーっ!?」」」
裁判所は大混乱に陥った。
嘘つき閻魔の居眠り裁判、一体どうなる!?
第二章はここまでです。
閻魔大王の秘密が明らかになり、誠の運命は?
続きが気になる展開をお楽しみに!
この度のご縁に感謝いたします。貴方様の創作活動が、衆生の心に安らぎと悟りをもたらすことを願い、微力ながら応援させていただきます。