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【カルロフ邸殺人事件】の『壁』カードをレビュー

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はじめに

久しぶりすぎて多分あまり知られていないことだが、私はタフネスが高いクリ一チャ一や「防衛」を持つクリーチャー、通称『壁』が大好きである。

最後のレビューから1年以上のブランクが発生してしまったが、決して筆者が飽きた訳ではないと言い訳をしたい。実のところ2023年発売の本流のセットでは残念ながらレビューできるほど壁カードがまとまって収録されなかったという点が理由として大きい。去年はまばら〈床岩の亀〉興味があるカード〈Rammas Echor, Ancient Shield〉あれど〈水の辺村の合戦〉、セットごとではレビューを展開できるほどユニークな『壁』のカードの数が少ないと感じた。それどころかピンポイントで『壁』をメタったカードがいくつか刷られた。

壁デッキを回している者としては供給が少なく、やや不満が残ったと言わざるを得ない2023年だったが、2024年最初の本流のセットでついに風向きが変わった。次元としての「ラヴニカ」は振り返ってみると《幻の漂い》なり《斧折りの守護者》なり《厳戒態勢》なり再訪するたびに『壁』に有用なカードが収録され続けてきた歴史がある。今回のセットはギルドにはフォーカスはせずとも「ラヴニカ」のセットなのだ。さっそく『カルロフ邸殺人事件』の壁カードを見てみよう。


《育殻組の誉れ》

デッッッカい。かなり珍しい防衛を持つ伝説のクリーチャー。地上戦においてはほとんどのものを受け止めることができ、タフネスデッキを扱う上では大体の場合1マナで唱えることができる。設定上はファイレクシアの侵略を自力で生き残り、シミックのマスコットとなった実験体らしい。

《Shield Sphere》2体を並べれば1ターン目に出すことが可能。《サルーリの世話人》+《根の壁》+1マナ壁1体や、《欠片の壁》、《ガラクタの壁》といったタフネス7以上の壁を出すパターンでも2ターン目に出すことが可能。3ターン目に《厳戒態勢》を出せれば3ターンキルである。早いターンで戦場に出し20点以上与えるパターンは他にもまだまだあり、そう難易度は高くはないと考える。

4マナの起動能力は防衛持ちが攻撃に参加できるようにはなるが、いわゆる「重厚」効果でタフネスでダメージを与えられるようになるわけではない。能力はあくまでダメージ目的ではなく、カードを引くための能力だと認識しておきたい。自身でカードを15枚引くのはロマンがあるが、高タフネスの飛行持ちクリーチャーで4~6枚くらい引いても十分強力であろう。スタンダード内では同じ(元)シミックの《変異体の鑑定人》などが噛み合う。また無限マナが出せる状況で能力を10億回起動すれば+10億/+0修正の必殺攻撃になることも覚えておきたい。一方、同時に《突撃陣形》などのタフネスでダメージを与える変換効果がある状態では能力のパワー強化は特に意味はなく、逆にカードを引く効果が強制的に10億回誘発しライブラリーアウトで敗北してしまう妙なディスシナジーがあることは要注意だ。

ブロールや統率者戦においては《策略の龍、アルカデス》の統率下に採用可能な強力な一枚であるが、固有色の関係上《包囲の搭、ドラン》や《欺瞞の神、フィナックス》では使用できないことが悔やまれる。自分自身を統率者としたデッキでは《原初の飢え、ガルタ》の如く統率者税を軽減できるため、統率者を除去されてしまうとデッキが機能不能になりがちな状況を回避しやすいというのは他の3体にはない特徴であり、長所である。通常の戦闘での勝利ではなく、カードを引くことで無限マナなどのコンボへとつなげる別ベクトルのタフネス統率者として活躍するポテンシャルは大いにある。上記の無限パワー修正でゲームを一発で決めるコンボパーツを統率者領域に置けるという視点で見ても興味深い統率者であろう。また繰り返しになるが、多人数戦では誉れ無限パワーコンボを決める場合、全員同時に倒せないとライブラリーアウトで敗北してしまうことは心に留めておきたい。

一方弱点としては全体除去を撃たれて更地にされてしまうと素の11マナを払う必要があり、めったなことでは唱えることが出来なくなってしまうというのがある。また、自身のタフネスで殴る前提のデッキでは回避能力やタフネス以外の除去耐性は持っておらず《逃亡者、梅澤哲子》のサポートも受けられないのは歯がゆい。他に助けがなければ延々とチャンプブロックされてしまうであろう。そのうえ能力をより一層活用するためにはブロッククリーチャー指定後にブロックされなかったクリーチャーを対象として起動したほうがより戦略としては効果的であり、防衛デッキでの運用では『防衛を持たないかのように攻撃できる』ように能力を先に起動する必要があるため、せっかくのインスタントタイミングで起動できる能力が微妙に噛み合ってないように見える。また肝心の能力の起動コスト自体もやや重く感じ、ハイリターンではあるが4マナはハイリスクに思える。

シミック産のオモシロ合成クリーチャータイプ、特に「海亀」にも注目しておきたい。守りを象徴する甲羅を背負う亀はどちらかというとマイナー種族でありながら近年数を増やしつつある。青と緑に多く存在し、イメージ通りタフネスが高いことや、その多くが呪禁や護法を持っていることがアイデンティティとして目立つ。「海亀」こそが壁やツリーフォークに続く防御を重視した種族として開花するのではないだろうか。『壁』の視点で実用的な海亀は性能が変化〈死の影〉したり、デメリット能力があるクリーチャー〈ファイレクシアン・ドレッドノート〉などを除けば1マナ域最強のタフネスを持つ《神盾の海亀》や、現スタンダードのタフネスデッキの核である《床岩の亀》が存在する。

あと数枚キーカードがあればパイオニアどころかスタンダードでも海亀デッキが組めそうであり、《魂の洞窟》からクリーチャータイプ「海亀」を指定する日がやってくるかもしれない。個人的には追加の援亀は今年後半発売予定の動物の次元を舞台にしたセット、『Bloomburrow』に大いに期待している。マローが言ったように、近頃のセットでそういう布石を打っているようにも見える。

 セットを作る上でしなければならないことの1つが、先のことを考えることである。つまり、現在のセットで取り組むことができる、将来のセットで必要なものがあるか、ということである。我々はこれを「種まき/Seeding」と呼んでいる。例として、『Bloomburrow』の話をしよう。『Bloomburrow』は、2024年の後半に登場する、動物の次元を舞台にしたセットである。動物のセットを扱うには、プレイヤーが動物をテーマにしたデッキを作れる必要があるが、どのセットにでも特定の動物を入れることができるわけではない。ハツカネズミはまさにその例である。
(中略)つまり我々は、後にスタンダードで『Bloomburrow』と一緒になるセットを手掛けるにあたって、ハツカネズミの種まきをするのにふさわしい場所かどうかを考えなければならないのだ。・・・・・・どれがそうだとは言わないが、このセットには『Bloomburrow』を意識した動物が他にも入っている。

『蒼き『森』の彼方へ その1』より引用


《古代の化身》

《古代の化身》も無駄にタフネスがデカい。構築での運用としては除去されてしまうとデッキが機能不能に陥りやすいドランや《床岩の亀》を守ってあげたいところである。やや重いが、変装込みならタフネス殴りデッキでは採用可能かもしれないラインにあるように思える。リミテッド上では出しておけば地上戦では接死や威迫などがなければ大体は突破不可能である。

またリミテッドに限った話だが、『カルロフ邸殺人事件』からドラフトブースターとセットブースターが消滅し、新たに『プレイ・ブースター』が登場する。注目すべき点は今回からリミテッドでは『ザ・リスト』のカードが使用可能であり、カルロフ邸殺人事件のザ・リストには《厳戒態勢》が収録されていることである。 確率としてはかなり低いものとなるが、厳戒態勢を引き当てられれば古代の化身は3マナで変装する実質10/10の怪物となる。運よく引けたらぜひとも狙っていきたいところだ。


《早められた相続》

クリーチャーがダメージを受けると衝動的ドローを誘発させるエンチャント。普通に使うと対戦相手もカードをプレイできるようになってしまうためやや使いづらい印象を受けるが、パワー0の壁を採用することで戦闘では対戦相手にカードを渡すことなく使用できることに注目したい。

現スタンダード内での赤の『壁』クリーチャーに絞れば《くすぶる卵》《熱錬金術師》《物騒なカタパルト》などが存在する。この3枚を並べただけでも既に何かデッキになりそうな雰囲気がある。

攻撃をブロックすればその点数分カードアドバンテージが開いていき、衝動的ドローからクリーチャーのおかわりや除去を唱え、さらに2枚目3枚目の《早められた相続》を探しに行ける。火力呪文があれば自分のクリーチャーに打てばその点数分がカードに代わる。ブロックを繰り返している間に何か別の方法でジリジリとライフを削るクリーチャーベースのコントロールデッキが組めそうではないだろうか?青を混ぜれば《路上芸術家、エラント》や《逸失叡智の御神体》も加えられ、火力に頼らない除去や別のフィニッシャーを採用できそうだ。また下のフォーマットでは赤を含んだ壁デッキの息切れ防止や対ミッドレンジのサイドボードに採用してみてもいいかもしれない。


《疲れ切った分析者》

近年よく見る条件を達成すると自主的に攻撃できるようになる系防衛持ちクリーチャー。実のところ2023年のスタンダードの防衛持ちクリーチャーの大体がこれ系であった。

今回のは「防衛を持たないかのように攻撃できる」わけではなく、なぜか防衛をターン終了時まで失う。フレイバー重視のためだろうか?今セットのドラフトでは青白が探偵アーキタイプであり、探偵と結びついた手掛かりトークンを使って2枚目のカードを引き、攻撃できるようにするというデザインであると思われる。

しかし今回のセットでは変装/偽装メカニズム経由で護法を持った2/2クリーチャーが数多く登場するため、その中でのタフネス2というのは何とも心細く感じる。他のこれ系で比較してもタフネスが低いことが目立ち、デフォルトで攻撃できない誓約を持っているのだからせめてタフネスは3でも良かったのではないだろうか。警戒も相まって防御的なクリーチャーと見せかけ、実のところは攻撃的なクリーチャーとして運用するよう必要があると感じた。


《世慣れた見張り、デルニー》

セット内アーキタイプと言えば、白黒が「パワー2以下」を軸として動くコンセプトである。セット的には多くが2/2の変装クリーチャーのことを指すが、実は大体の『壁』もパワーが2以下なのである。

壁がほとんどのクリーチャーにブロックされなくなるのは《逃亡者、梅澤哲子》を彷彿させる。哲子と比べ、相手のクリーチャーによっては確定でブロックされなくなった代わりに範囲が1パワー分大きくなり、またタフネスが1低くなった分焼かれやすくなった。そのうえ1マナ増えたが、それらを差し引いても壁の誘発能力を倍化させる能力が付いているのは強力であり、哲子を採用しているデッキにその席が入れ替わる可能性は十分にある。《パンハモニコン》などの能力倍加系のカードは4マナ以上が相場であり、1マナ軽い3マナでありつつクリーチャーである点は《集合した中隊》に引っ掛かるなどパイオニア以下のフォーマットでは大きな意味を持つ。そしてもちろん壁には《前兆の壁》《境界線の隊長》《ニクス毛の雄羊》などの誘発が倍加して嬉しい効果は山ほどある。

スタンダード内でも《翼套の司祭》や《別館の歩哨》の誘発が2倍になる。戦場を鳥だらけにしてみても面白いかもしれない。一見アルカデスとも相性が良さそうだが、防衛持ちが戦場に出て誘発する能力の発生源はパワー3のアルカデスにあるので残念ながら倍加しないことに注意だ。


《前兆の壁》

《前兆の壁》と言えば今週公開されたSecret Lairの『Winter Superdrop 2024』の『Deceptive Divination』にて収録されている。Secret Lairというブランドが発表されてから5年ほどになるが、何気にSecret Lairとして収録されるカードとしては(トークンや銀枠カードを除けば)初めての防衛持ちである。 長年防衛テーマSecret Lairを待ち続けているが、まあ、やっと一歩前進といったところである。

モダンなどでの壁デッキでは潤滑油としてキャントリップ付きの0/4はコンボのキーパーツを探すのにも、アグロを凌ぐ序盤の壁としても長年採用され続けてきた。色的には《花の壁》と枠を競うことになるが、両方採用するデッキも存在する。個人的にはSecret Lair内の他のカードは使う予定がないのでシングルで集めたい。


《聖域の壁》

同じく2マナ0/4の、最近ではちょっと珍しい正真正銘の壁。セレズニアの聖域を護っていると思われる。門に見えるが壁であり《セレズニアのギルド門》ではない。よくあるリミテッド用の白のタッパークリーチャーであり、序盤では高いタフネスで時間を稼ぎ、終盤ではフィニッシャーや飛行持ちなどをタップして縛る。防御にも攻撃にも使える一枚である。

今回は麻痺カウンターを乗せる形になり、束縛するターンが上がっている。その一方《聖域の壁》にも麻痺カウンターが乗ってしまう。2ターン分のタップを3マナ一括で払っていると考えよう。構築に採用するなら《契約紡ぎ、ファルコ・スパーラ》で麻痺カウンターを取り除いたり、増殖メカニズムで相手の麻痺カウンターだけ増やすなどのカウンターを活用したいところだ。


最後に

『壁』にはめぼしい収録が少なかった印象の2023年に打って変わり、2024年最初の本流のセット『カルロフ邸殺人事件』では良いスタートを迎えられたと感じた。スタンダードローテーションの期間も延長され、防衛フィーチャーが収録されている『団結のドミナリア』の使用期間が延び、タフネスで殴れる《床岩の亀》や《古きもつれ樹》もまだスタンダードに存在している。壁デッキはまだまだ組めるのだ。

MTG30年の歴史上、本流のセットに収録されたカードでは神話レアの防衛持ちクリーチャーは5体存在するが、そのうち3体は現スタンダードで使用可能である。伝説の防衛クリーチャーも4体目が登場し、個人的にはこれからも増えることを願う。同時に数を増やし始めたように見えるクリーチャータイプ『海亀』にも注目したく、新たな発見だけではなく、新たな楽しみが生まれたセットであった。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。

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次セットは『サンダー・ジャンクションの無法者』ですが、十分の壁カードが収録されたらまたレビューを展開しようかと思います。万一『Fallout統率者デッキ』でも何かあったら書くかもしれません。

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