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【ニューカペナの街角】の『壁』カードをレビュー

はじめに

まだあまり知られていないことだが、私はタフネスが高いクリ一チャ一や「防衛」能力を持つクリーチャー、すなわち『壁』が大好きである。

《稲妻》や《踏みつけ》と言ったフォーマットを定義する火力が蔓延る構築戦にて、2~3点程度のダメージなら余裕で耐えるタフネスを持つ壁のみを採用したデッキというのは何とも言えない安心感を得ることができると主張したい。せっかくクリーチャーを展開しても対戦相手側の立っている山から火力が飛んできて即座に焼かれてしまうのでは・・・と不安を抱えるプレイヤーには一度は壁デッキを握ってみることをお勧めしたい。

ニューカペナの『壁』のレビュー

前回『神河:輝ける世界』のプレビュー後、完全に趣味で書いた 『【神河:輝ける世界】の『壁』カードをレビュー』 に対し予想以上に反響を頂いた。何よりレビューを書いたことにより同じタフネス愛好家があちこちに潜んでいたことが判明し、個人的に微笑ましかったのであった。前回の宣言通り今回も壁のレビューを書かせていただきたいと思う。

さて、早速ニューカペナの街角の『壁』を見てみよう。

・《斡旋屋一家の新入り》・《継ぎ当て》

実のところ、プレビュー前の『ニューカペナの街角』の統率者デッキのテーマが発表された当時、個人的には斡旋屋一家にかなりの期待を持っていたのである。白・青・緑の色は何かとタフネスのテーマに集中されがちであり、なんと言っても斡旋屋一家の統率者デッキの公式の解説には「堅牢な防御は最大の攻撃であると信じるプレイヤーに斡旋屋のデッキをおすすめしましょう。」と事前に語られていた。これはもはやタフネス一家ではないのだろうかと勝手な期待を持ってプレビュー期間は開始された。

しかし実際にカードを見てみると斡旋屋の固有メカニズムの盾カウンターはブロックを重点する『壁』とはそこまで相性が良いものとは言えず、さらに統率者デッキのテーマはカウンターの種類数であった。今回のプレビューの公開形式としては一家ごとの順番で公開されていく形となり、斡旋屋のカードの公開は最後であった。最後の最後の公開ということもあり勝手な期待を重ねてしまっためか、勝手な予想外れを経験してしまった。というのが率直な感想である。

それでもやはり白と青はタフネスの色になりがちのようだ。今回のレビューにも登場するカードが白と青のカードが多く出ているのもその傾向が見られ、《斡旋屋一家の新入り》はその傾向を体現している一枚と言えよう。

ケツがペンや剣も強し。1マナ0/4で防衛を持っていない猫・市民はタフネスで殴るデッキに1マナ域のクリーチャーとして採用できそうだ。防衛を持たない同マナで白のクリーチャーは《ラゴンナ団の先駆者》や《王神の信者》が存在するが、新入りの強みはタフネスで殴らせてくれる《突撃陣形》や《太陽の義士、ファートリ》が場になくても最悪自力で戦闘を行える可能性があることにある。

パイオニア以下の環境では1マナ0/4クリーチャーを多く採用し《継ぎ当て》で墓地から合計タフネス12点分を復活させるという動きも面白そうだ。安価で白単で守りながら戦うタフネスビートを組めそうである。《斡旋屋一家の新入り》は統率者戦では一番使い道がありそうな《包囲の搭、ドラン》を統率者としたデッキには固有色に青を含むため使用できないことは少々残念か。斡旋屋はドランには厳しい。


・《路上の師、リガ》

彼自身は『壁』ではないが、そんなタフネスビートプランのサポートとして採用できそうな斡旋屋の伝説のクリーチャーが《路上の師、リガ》である。なんと白単デッキでも採用可能な3色クリーチャーであり、《集合した中隊》でも拾える3マナであることも良い。似たようなドローソースやマナ総量範囲としては《弱者の師》や《アブザンの獣使い》が思いつくが、リガは自身の能力で盾カウンターが乗って戦場に出ることが強みであろう。中速な壁ビートデッキの天敵である全体除去を(追放除去やマイナス修正ではなければ)1回は耐え、体制を立て直す機会を与えてくれるというのは他の2枚のカードにはない強みである。なお自身の一家の隆盛とは相性が絶望的に良くないのは何とかならなかったのであろうか?


・《斡旋屋一家の隆盛》

その隆盛サイクルのカードが《斡旋屋一家の隆盛》である。『ニューカペナの街角』で最初に公開されたカード群の内の1枚であり、今思えばこの時点で斡旋屋は別にタフネス重視一家ではないと気付くべきであったのであろうか。とはいえ、ずらりと並んだ自軍のクリーチャーに毎ターン+1/+1カウンターが置かれていくのは事実驚異的な効果である。個人的にプレリリースで対戦相手に3ターン目に《斡旋屋一家の隆盛》を置かれ、あっという間に手も足も出ないまま0-2と完封された。そのカードパワーは経験済みだ。

また、何と言っても各クリーチャーにカウンターが乗るということは改善されるという事が重要なポイントになる。なぜならば、スタンダードの防衛ビートを可能にする《朧宮の守り》のキーパーツになるからだ。

前回《朧宮の守り》に対し今後のスタンダードに注目とは言ったが、こうも早く伏線が回収されるとは思わなかったものである。あとは意味不明にパワーが高い防衛クリーチャーの収録を待つばかりである。よろしくお願いします。


・《裏通りの暴れ者》

『高パワー防衛クリーチャーを収録するまでとりあえずこれでも使っておけ』と言わんばかりにスタンダードに投入されたパワーがある防衛クリーチャーの新入りが《裏通りの暴れ者》である。現在スタンダードには似たような能力を持ったパワー持ち防衛クリーチャーとして《スカイクレイブのイカ》と《プリズマリの誓約魔道士》と《鋼纏いの霊》が存在するが、同セット内収録の《斡旋屋一家の隆盛》を見た後だと比較的使いやすそうに見えると感じる。いざ現在のスタンダードのプールで防衛ビートと組むとなればこれらよりは《裏通りの暴れ者》が2マナ枠のクリーチャーとしての軍配が上がりそうだ。

それにしても、こう並べてみると見事にクリーチャータイプがばらけている。開発の裏で青い2マナの防衛を持つクリーチャータイプはダブらせてはいけないというルールでも存在するのだろうか?

・《路上芸術家、エラント》

瞬速、防衛、速攻。とにかく速そうな能力の組み合わせを持つ《路上芸術家、エラント》。能力は分かりづらいが、要するに呪文のコピーをコピーできる能力である。ニューカペナの犠牲メカニズムへ向けた専用の能力かと思えば、スタンダード在中の《モンスター見聞家、ヴォーロ》の誘発能力などもコピー可能だ。なるほど、このために防衛持ちのクリーチャータイプがばらけているのかと納得してしまいそうだ。

しかしエラントは伝説であること、タフネスがそこまで大きくないこと、また能力でコピーできるのはコピーというのは防衛デッキでは使えそうな役割は薄そうであり、防衛をテーマにしたデッキではなく別の戦略を軸としたデッキに採用したほうが良いと感じる。しかし、近年になってMTGはパーマネント呪文をコピーできるようになったり、犠牲というカード単体(と生け贄)でコピーを行うメカニズムを導入したりと今後も何かとコピーに関係するメカニズムや能力を出してきそうであり、その時に再度評価が楽しみになりそうな一枚である。

また《策略の龍、アルカデス》を含む防衛デッキでは1マナの防衛持ちということで検討に値すると感じた。タフネスで殴るとなると「青の1マナ3/3瞬速、速攻」であり、文脈無しにここだけ切り取ると化物である。《欺瞞の神、フィナックス》デッキでも青ではかなり珍しい速攻持ちクリーチャーであり採用への検討をしてみてもよいかもしれない。

・《怪しげな書架》・《屈服の拒否》

基本セット2019からの再録であり、レビュー初の正真正銘の『壁』であり、《メカ巨神》のパーツである。個人的には《策略の龍、アルカデス》を統率者としたヒストリックブロールで既に《怪しげな書架》は採用しており、どうしても落としたいプレインズウォーカーがいる時や、《パラドックス装置》でのコンボを決めた時にクリーチャーを押し通すときに役立つ。アーティファクトであることは即席のコストに割り当てたり、畏怖を持つクリーチャーに対してブロッカーとして機能することもプラスに働くことが多い。
リミテッドでも序盤は文字通り壁になり、最後の一押しを通すためのフィニッシャーへのサポートになることも数少なくはないはずだ。

ニューカペナの街角のリミテッドで同じくお世話になりそうな呪文が《屈服の拒否》である。基本セット2019の《天界の神盾》より二回りほど強化されており、とにかくタフネスがデカくなる。壁ビートデッキでお馴染みの《塔の防衛》よりは総合的な修正値では及ばないかもしれないが、クリーチャー1体をアンタップできる効果は器用でありコンボ方面に何かしら使えそうだ。3マナ以上を生み出すクリーチャーに撃てばマナ加速となり、タップが必要な起動型能力をもう一回使えるようになる。

リミテッドでもクリーチャーをアンタップしてブロッカーにしたり、タフネスを上げて生存させるのはもちろん、マナが十分ある終盤でいざとなれば《怪しげな書架》を対象に取ればクリーチャー2体分をブロックできないようにでき、《路上芸術家、エラント》を対象に取れば犠牲呪文を追加でもう1回コピーできる。リミテッドで使える『壁』のテクニックとして使える日があるかもしれない。

・《雨ざらしの番兵》

これこそが《朧宮の守り》が求めていたパーツではないのか!?と叫びたくなる1枚。残念ながら《雨ざらしの番兵》は統率者デッキ(土建組一家の猛威)収録のカードであり、スタンダードでは使用不可だ。殴る前提の壁が作られたらどうなるかを体現したようなこのカード。3マナでタフネス5点は合格点であり、到達を持っている事とパワーが2点あることは対空性能に優れており、まごうことなき「壁」である。また報復ともいえる能力は統率者戦に置いて中途半端な攻撃先を別のプレイヤーに向けてくれる、ある意味心理的なガードまで付いてくる。

タフネス三銃士を連れてきたよ。

それが《策略の龍、アルカデス》の統率の下で戦場に出たら実質3マナの8/8 警戒、到達、トランプル、破壊不能(キャントリップ付き)の壁の完成である。自主的に攻撃はできないが、壁として活かせる《包囲の搭、ドラン》や《欺瞞の神、フィナックス》デッキでも採用可能であり、何とも頼もしい。やはりスタンダードに収録して欲しかったカードであり、何かの間違いでせめてヒストリックかパイオニアで使わせてほしい。


最後に

大変自分勝手な期待から自分勝手な予想外れを体験した『ニューカペナの街角』だが、毎セット新しい壁を待っているプレイヤーとしては割といつものことである。斡旋屋一家の事前情報抜きにしてもニューカペナは他次元と比べると技術水準が高い方に分類されると見れ、そのため人工物である障壁や壁は多く建てられていることは想像に難くなく、それもそれを建てたり解体したりする土建組一家も存在する。ニューカペナの街角のメインストーリー中には『壁』という字が16回登場したが、実際に収録された壁は書架であり1枚(と動く石像1枚)、防衛持ちは計4枚である。《裏通りの暴れ者》のアートは壁際に立っていたり、《路上芸術家、エラント》は壁を駆け上がったりしているが、本体のタフネスの数値とは直接関係ないものと思われ、次元の技術水準と収録される壁の枚数の繋がりというものは無いようである。(ちなみに神河:輝ける世界のメインストーリーには『壁』という字は34回登場する。) 

だが、今回は統率者とエターナルのみでしか使用できないが、『ガチ目』な壁が作られたことは確かであり、『壁』はまだまだ可能性が残されていることが見れたのは大きい。またレアの防衛持ちも少しづつだが近年のスタンダード中で数が増えている傾向がみられることは喜ぶべきことである。今後のスタンダードにもまだまだ期待は掛かっており、いつか訪れるであろう壁・防衛の黄金時代は待ち遠しいものである。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。


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次セットは『統率者レジェンズ:バルダーズ・ゲートの戦い』が公開されますが、十分に『壁』が公開されたら特殊セット編もレビューを書くかもしれません。

さて、せっかくなのでご支援いただけた方には、今回も以下に【青黒家の食卓】の知っていても全く役に立たない秘密を伝授いたします。

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