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【団結のドミナリア】の『壁』カードをレビュー
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はじめに
未だによく知られていないことだが、私はタフネスが高いクリ一チャ一や「防衛」能力を持つクリーチャー、すなわち『壁』が大好きである。
壁レビューも今回で3回目になるが、なんと「団結のドミナリア」では『防衛』がリミテッドのアーキタイプの一つとして選ばれた。ここ数年のあいだ「イニストラード:真紅の契り」や「ラヴニカの献身」等で幾度かタフネスがテーマとしてフィーチャーされたことはあったが、あくまでそれは高いタフネスのみに焦点を当てたものであり、『防衛』をテーマを含んだスタンダードのセットは12年前の「エルドラージ覚醒」や10年前の「ラヴニカの回帰」ぶりと言えよう。
『壁』の選択肢が増えれば、その分スタンダードでも壁デッキが組める可能性が広がる。そのため今回のプレビューは個人的には何とも期待に胸はずむものであった。さて早速「団結のドミナリア」の壁を見てみよう。
《機械仕掛けの跳ね橋》
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《跳ね橋》や《怪しげな書架》よろしく、タップすると物理的に傾けたことにより戦場を干渉するフレーバー溢れた可動橋ギミックが搭載された「団結のドミナリア」のタッパークリーチャーが《機械仕掛けの跳ね橋》である。橋門を下げる《跳ね橋》とは逆に橋を上げるアクションにより敵のクリーチャーが橋を渡れず攻撃できなくなってしまうワンシーンが表現されている。同じタッパー能力持ちの《まばゆい塁壁》よりはイメージがしやすくなっているのではないだろうか。リミテッドでは防衛アーキタイプでの採用はもちろん、パワー2までを素で止められるタッパーは白を選ぶ以上良い時間稼ぎができるであろう。
しかし同じような性能のクリーチャーを見てみると、起動に青マナが必要とはいえ《精鋭拘引者》より起動のためのマナが重くなっていたり、アーティファクトであるという弱点も増えてしまっている。デメリット能力であるはずの防衛が付いているのだからタフネスを引き上げるか起動のマナを減らしてほしかったと思った。
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構築においてはやはり起動の3マナは重く感じ、スタンダード等のデッキでの採用にはやや難しいのではないかと思ったが、《策略の龍、アルカデス》を統率者としたブロールや統率者戦では1マナであることは何であろうと強みであり、採用の余地がある。また無限マナと無限アンタップ手段があれば無限クリーチャータップができるという点も見逃せない。
《花咲く蔦壁》
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《門を這う蔦》を彷彿させる《花咲く蔦壁》のサーチは確定ではないが、結構な確率で土地を手札に1枚持ってくることができる。また基本土地だけではなく土地なら何でもよいためデッキの多色化の安定性に貢献してくれるであろう。
何かの間違いで次セットの『兄弟戦争』でウルザランドが再録されたら壁トロンでも組めそうである。そうでなくとも現在のパウパーフォーマットの『トロン』デッキにでもウルザランドを探すために採用する余地はあるのではないだろうか?すでに《記憶の壁》が採用されているパウパートロンとフォーマットに存在する『壁コンボ』デッキを《花咲く蔦壁》で糊付けし、融合させてみても面白いかもしれない。
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ただしタフネスが2しかないというのは少々心細い。防衛持ちであることを活かし、戦場に出でた時点で仕事は終え、基本的にマナ基盤のサポートに回す壁として割り切ったほうが良いであろう。
《アカデミーの壁》
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《アカデミーの壁》は現状ローテーション後のスタンダードでは3マナ域で最高のタフネスを誇る3枚のクリーチャーカードの内の1枚であり、同じ3マナ域で素のパワーで突破できるのは《強請る大入道》とクリーチャー化した《ハネムーンの霊柩車》の2枚くらいである。リミテッド内でも同じコモン域にてパワーでこの壁を突破できるのは重量級の4枚のクリーチャーしかいなく、《アカデミーの壁》に+1/+1カウンターを1個乗せればそれらもほとんどは機能停止に陥ってしまう。なんとも頼もしい壁である。インスタントやソーサリーを唱えれば(ターンに1回とは言え)ルーティングをさせてくれるおまけ効果も有利に働くこともあるであろう。ドローさせてほしい。
パイオニア以下のフォーマットに視点を動かすと飛行やタフネスがより防御に特化している《浮遊障壁》が存在するため採用には何とも難しい。そもそもタフネスだけを見るなら2マナ0/5の《霧の壁》等を採用したほうがよいと思った。
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だが次期スタンダード内に限れば問題なく最硬の壁であり、追加コストを払った4点火力の《電圧のうねり》さえ平気で耐える。ただ立っているだけで仕事をする、壁とはそういうものだ。
《珊瑚の群棲》
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《門衛》に似た能力を持つ、壁の勝利条件をライブラリーアウトに変化してくれる《珊瑚の群棲》。《門衛》と比べ起動コストが減り、パワーが1付いた。
話が逸れるが、壁に不案内なプレイヤーには『壁にはパワーがない』という先入観があることが見受けられる。実際にパワーが1ある《欠片の壁》に向けて《ちらつき蛾の生息地》や《スレイベンの守護者、サリア》といったタフネス1のクリーチャーを突撃させられたことは個人的に数えるほどは経験したことがある。アートが生物ではないことが間違われる一因かもしれないが、きっと次期スタンダードでも世界のどこかで《珊瑚の群棲》に突っ込んでいくクリーチャーが存在するであろう。
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それはさておき、2マナ1/4は良いタフネスマナレシオであり、次期スタンダードに置いては接死を持つクリーチャーと機体である3枚のカードを除けば、2マナ域においても素のパワーそのままで4点のタフネスを突破できるクリーチャーは存在しない。あまつさえ3マナ域ですらパワーが4を超え、構築に使用できそうなクリーチャーは数えるほどしかいない。メタゲームによっては《アカデミーの壁》よりもスタンダード採用の候補が上がるかもしれないと考えている。また少なからずパワーが1でもあるのはやはり大きな利点である。特に訓練メカニズムや1/1トークンを生み出す効果が多く存在するスタンダードでは重要な点となる。
何よりゲームを決める可能性がある能力を持っている壁として3点火力では焼かれないというのも強みである。ただし、フラッシュバック・降霊・《しつこい負け犬》・《墓地の侵入者》等々と言った墓地利用ギミックが多い次期スタンダードではライブラリーアウトを目指すことは考え物だ。また、ちなみに無限マナと無限アンタップ手段で無限ライブラリーアウトになる。
《囈語のバリケード》
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ナイトメア能力は持ってはいないが、ナイトメア・壁である《囈語のバリケード》。なんとも《スカルポートの商人》が壁になったような能力を持つ。起動コストが重くなっていたり宝物が出なかったり宝物をコストに払えなくなっている等の微々たる差はあるが、いざとなれば自分自身も生贄に捧げられるのは商人にはない利点である。ただし《機械仕掛けの跳ね橋》同様3マナの起動は重く感じ、正直言って飛んできた除去に対し能力を起動している暇などなかなかないのではないだろうか。
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ただし《しつこい負け犬》や《税血の収穫者》と言った環境に蔓延る3/2クリーチャーを単体でしっかりと打ち取ることが出来るのはパワーが2ある壁のメリットであり、2体いればタフネス4までのクリーチャーの攻撃を戸惑わせることが可能だ。そしてやはり自身のタフネス4もそこそこ硬い。
ちなみに《石の壁》は同じ3マナ域で0/8だ。フレイバーテキストのブレイズの提案は《囈語のバリケード》を少々過大評価をしているように読める。ナイトメア同士のえこひいきだろうか。気持ちは嬉しいが個人的にはどちらかと言うと《石の壁》の方がスタンダードに欲しいと思った。
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《翼套の司祭》
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どうやらリミテッドにおいての防衛アーキタイプ最強のボムカードであるようで、個人的には『団結のドミナリア』内ではかなり可能性を感じる防衛持ちクリーチャーの1枚、それが《翼套の司祭》である。
戦場に出た時点ですでに効果は発揮しており、それでいて即座に除去しないと援壁によって鳥トークンが次々と湧き出てくる。変則的なロードのような能力ともいえ、単体除去では完全に対処はできない。ボードアドバンテージを得させないようにするには打ち消すか全体除去を使うしかないというのが強みだ。スタンダードでは《食肉鉤虐殺事件》が天敵だが、逆にこっちが使ってもよいかもしれない。
4マナに届くころには壁は2~3体戦場に出ているはずであり、自身を含めた防衛クリーチャー分の1/1鳥トークンが3~4羽は戦場に出る。そのまま鳥トークンで攻撃してもいいし、ブロッカーに回し粘り強く時間稼ぎにしてもいい。次期スタンダードの飛行対策を埋めるカードでもあり、鳥で殴り勝つフィニッシャーとしても運用できる。しかし「団結のドミナリア」の多くの他の壁にも言えることだが、タフネスが3しかないのは少々気になる。基本的にはブロッカーとしては回さず、除去されそうになったらブリンク効果などで守ってあげたい。
また《神秘の反射》と組み合わせてしまえば場に出たコピーがお互いに誘発する。他の防衛持ちが2体いれば27羽、3体いれば48羽、4体いれば75羽鳥トークンがわらわらと生成される。これ以上に相性が良いコンボはないであろう。しかし《神秘の反射》はちょうどスタンダード落ちするためこちらのコンボは残念ながらスタンダードでは実現できない。パイオニア以下で是非とも狙ってみてもらいたく、なんとも壁の可能性が広がる1枚である。
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《盾壁の歩哨》
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そんなリミテッド最強の防衛アーキタイプをサポートし、壁が壁を呼ぶ《盾壁の歩哨》。まさかの防衛専用サーチカードであり、1枚でメカ巨神のパーツが自主的に集まってしまう。そう言われてみるとフレイバーテキストもそれっぽい。リミテッドでは防衛デッキのキーカードを確実に探し当てるために有用であり、自身も防衛を持っているため防衛カウントを上げるためにも役に立つ。ただし構築においては4マナ1/3はかなり重いと思った。せめて3マナであってほしかったというのが本音である。
しかしながら統率者戦やパウパーにおいての壁コンボではコンボパーツをサーチできる手段として可能性はありそうであると感じた。《幻の漂い》ではサーチできない《隠し扉》や《草茂る胸壁》と言ったパーツをサーチできるのは利点であり、最悪《幻の漂い》そのものもサーチが可能だ。
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《荒廃の塊》
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自軍の防衛クリーチャー分のライフロスをもたらす、黒くなり効果が各対戦相手に広がった《孔の歩哨》とも言える《荒廃の塊》。2マナ3/3はクリーチャー同士の相打ちには有用だが、攻撃手段が付いた壁はただでさえ除去に狙われる傾向にあり、できるだけブロックさせたくないという点においてどうも役割が噛み合っていないように感じる。3度目になるが3マナの能力起動は重いのである。能力を起動を始める事をできるのはゲームのかなり遅いタイミングであり、正直起動できる頃にはゲームは既に終わってるような気がする。せめてライフドレインであったなら話は違っていたであろう。
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加えてタフネスが3しかないのはやはり《稲妻の一撃》が存在するスタンダードでは脆く、守るためのマナと能力を起動するためのマナを構えるだけでもいっぱいいっぱいだと考える。よって構築での採用は今現在では難しいと個人的に思った。ちなみにこちらも3度目になるが無限マナと無限アンタップで無限ライフロスになる。コンボパーツとしての採用の可能性はまだ残されている。
《歩く防壁》
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《歩く防壁》は重厚効果を与えるクリーチャーであり、この手の能力を持った初の防衛クリーチャーである。まず1マナ0/3というタフネスレシオは合格点ではあるが、壁としてはやや柔らかい分類である。スタンダードどころか『団結のドミナリア』のセット内だけでもかなりの天敵が存在しており、《歩く防壁》1種類に頼った壁デッキの構築はどうにも不安がある。また回避能力を持つ壁も次期スタンダードでは少なく、地上で0/5の壁を走らせたところでチャンプブロックされてしまうのが目に見えてしまう。
パイオニアにおいてはマナ能力を持つ防衛クリーチャーはタフネス3に集中しがちであり、これ以上タフネス3のクリーチャーを増やすとデッキ全体としてのタフネスが下がってしまうどころか3点の全体火力にまとめて焼かれてしまうリスクが出てくるのはいただけない。またモダン以下の話になると今度は《稲妻》という試練が待ち構えている。
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また個人的にはタフネスでダメージを与えるカード群の強みの多くは常在型能力であるからこそと考えており、その点『起動はソーサリーとしてのみ行う』というテキストがなんとも惜しいと感じる。なぜならば、高いタフネスがパワーになるというのは相手のクリーチャーが攻撃しにくい状況を作り出し、「そもそも攻撃してこない」という最強の防御態勢が出来上がるためである。ソーサリーとして起動できないのは防御面では使用できない能力であり、《歩く防壁》はむしろ攻撃やコンボの起動、つまり「攻め」に特化したカードなのではないだろうか。
ただしこの手の能力が起動型能力である事にはもちろん利点はある。能力を起動さえしてしまえば、たとえ対応され《歩く防壁》が破壊されても一度対象にした壁はターン終了時まで最低1回はタフネスをパワーに変えそのまま攻撃する事が可能である。こちらは《突撃陣形》やアルカデス等でありがちな「大元の効果が除去されてしまえばただの壁の集まりになる」という弱点を多少ながら回避できている。ただし《歩く防壁》が戦場に出ることによって他の能力(例えば《翼套の司祭》の誘発型能力)が誘発してしまうと、ソーサリーとしてのみしか起動できない能力が起動できないまま除去されてしまう隙が発生するのは要注意だ。同じく能力を起動したスタックに飛んできた除去に対応し、さらに能力を起動すると言った動きもできないというのも痛手だ。
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しかしそれらを差し引いても防衛持ちが速攻を得る能力はかなり強力な効果であり、《草茂る胸壁》や《斧折りの守護者》が突然莫大な量のマナを生み出す動きは壁デッキにとってこれ以上なく強力である。この点は《跳ね橋》や《タクタクの瓦礫砦》を採用している壁デッキが証明済みだ。また1マナという軽さとアーティファクトとクリーチャーであることもサーチ手段を幅広く容易にしてくれる。幸い起動にはタップが必要ないことは頼もしく、いざとなれば自身が3マナ3/3速攻として突撃してしまえばよい。
欲を言えば0/4であってほしかったことと、クリーチャータイプが壁であってほしかった等々と不満点を上げればキリがないが、《歩く防壁》は壁デッキに対し新たな光として構築の道が開かれることを期待している。スタンダードではローテーション落ちするまで今後の『壁』に要注目である。
最後に
全体的に眺めてみると「団結のドミナリア」の壁は防衛を持っている割にはタフネスが控えめである、というのが第一印象だ。それはリミテッドのアーキタイプである以上、軽いマナコストの壁が高タフネスを振りかざしていたら防衛アーキタイプが最強になり、最悪ゲームにならなくなってしまう、というのはまあ理解可能である。この手の話はアーキタイプとして選ばれた以上仕方ないことなのかもしれない。またさらに欲を言えば「団結のドミナリア」こそレアの防衛関係のカードが欲しかったところだが、それは今後のセットの楽しみに取っておこうと思う。
今回のローテーションで防衛を持つカードのうち8枚がスタンダード落ちするが、「団結のドミナリア」ではそれを上回る9体の防衛を持つクリーチャーが追加され、次期スタンダードのプールには24体の防衛持ちが存在することになる。そろそろ防衛デッキが本格的に組めそうであり、何枚か壁デッキのキーカードになり得る壁が環境に投入された事態は今後のセットにも注目が今以上に上がっているということである。次のセットの『兄弟戦争』は過去編だが、壁の未来にはまだまだ期待が持てる。
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ここまで読んでいただきありがとうございます。
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