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オリトとイオを好きになって

ライオンに何故こんなに惹かれるのか自分でも良くわからないが、
人をハグするライオンの写真をどこかで見たのがきっかけだと思う。
家畜も人も容赦なく襲う獰猛で怖いだけの存在でしかなかった
ライオンに、心があると知ったからかもしれない。

旭山動物園のオリトとイオ

何年も一人ぼっちだったオリトの元にお嫁さんのイオが来てくれた。
オリト北海道4年目の春。
最初はイオに攻撃したという。
ずっと一人だったからどう相手していいか分からなかったのかもしれない。
オリトも1歳になったばかりで突然親から離れ、遠い寒い土地に連れてこられさぞ不安だったろう。
隣の柵越しに見えるアムールトラに怯えながら、孤独と北海道の過酷な寒さをいくつも耐えて来たことを思ううと抱きしめてあげたくなる。
イオも同じまだ2歳。
よく分からないオスと一緒にされてただただ怖かったろう。
同じ孤独なライオン同士。
オリトがアプローチするもイオは怯えるばかり。
オリトも少しずつ慎重に近づいてみたり、
距離を置いてみたり、
ポリタンクを使って気を引いてみたり、
しつこくして威嚇されてボー然としたり
寄り添ったり
徐々にイオもオリトを受け入れるようになり
時には嬉しそにはしゃいだり
何ら人間と変わらないような恋模様を見ながら
同じフィールドで生きていけないことや、
家族から切り離して観賞用にしている人間の身勝手さ、
それに抗えない弱い存在であること 
動物園で守られて生きていても囲われたまま人生を終えることと、
自由だけど過酷な大地で生き抜くことの
どっちが本当の幸せか考えると複雑で切なくなる。


出演から保護活動家へ

このことをYouTubeでコメントしたら、”野生のエルザ”のことを教えてもらった。1960年代のこと、ケニアの動物保護官だったイギリス人のジョージ・アダムソンは、人を殺めてしまったライオンを撃ったが、その後不意に襲ってきた雌ライオンも殺めてしまった。そのライオンには3頭の子供がいた。ジョージは親をなくした3頭を持ち帰り、その子供達を哺乳瓶から愛情を持って夫婦で育てられた。
アダムソン夫妻に懐いた子供たちも大きくなりだんだん手に負えなくなってきた。周りからも動物園へ保護するよう勧められるが、妻ジョイの意思により、お気に入りの一頭エルザを手元に残す。それから、初めて人の手で自然に返す試みをする。
動物の狩りなどしたこともないエルザに、少しずつ家族と距離を取りつつ、狩りやオスとのお見合いなどを経て、時にはエサも取れず痩せ細ったりすることもありながら、徐々にエルザ自身にも野生が芽生え始める。エルザはオスとの恋愛や出産を経験し、プライドの一員となることが出来た。
人間の手で自然に帰すことに初めて成功したのだった。
その後も、アダムソン夫妻とエルザの交流は続いた。エルザは人間との関係も保ちながら、プライドでのライオンの生活を続けていたのだ。残念なことに自然に帰って1年ほどで感染症にかかり死んでしまった。
のちにその物語が、ジョイの執筆で”野生のエルザ”として書籍化されベストセラーとなり、映画化されることになった。驚くことに、その映画にアダムソン夫妻役になった女優ヴァージニア・マッケンナと夫役であるビル・トラヴァース(実際も夫婦)と共にのちにBOON FREEという保護団体を立ち上げ、女優の傍らアダムソン夫妻とも交流を持ちながら活動を続けたという。映画でエキストラとして登場したライオンも、アダムソン夫妻によって野生へと戻された。
その後も、アダムソン夫妻もアフリカで、野生の保護活動を続けていた。
映画に感銘した日本の松島奉子さんが、ジョージに手紙を書きTIME21のテレビ番組の取材を申し込んだ。取材中、ジョージが目を離していた時、小ライオンと戯れていた松島さんが、その母ライオンに襲われた事件は、日本でも有名な話。他にもジョージが世話をしていたライオンが人を襲ったりしたこともあったたそうだ。
また、イギリスの百貨店で売られていた小ライオンクリスチャンを、二人の大学生が家具屋の倉庫で育てていたが、大きくなりヴァージニア・マッケンナの紹介でアフリカのジョージの元へ引き取られ、野生に戻しその後プライドを持ち、当時大学生だった育ての親と、アフリカで2回再開を果たしている。再会の時遠い丘からゆっくり近づき、少し考えていたが、二人だと分かった途端、走り出して飛びついてハグしていた映像が印象的だった。
残念なことにアダムソン夫妻は、妻のジョイは元使用人に、夫のジョージは密猟者によって殺されてしまったのだ。ライオンに襲われてのではなく人間に。
ジョージが書いた本の最後には僕らがいなくなったら、誰がライオンを守るのだろうと書かれている。今でもトロフィーハンティングが合法のもとで行われている。
小さいうちは人間に懐かせ、子供のうちは抱っこさせたりしてお金をとり、大きくなって自然に放ち高額でハンティングさせるのだ。
その一部が動物の保護のお金になるというのが言い訳らしい。
人間を慕ったライオンの心は、大きくなって体ごと人に撃たれるのだ。
ライオンだけではない、ホッキョクグマ ゾウ ヒョウ ワニ なども含まれる。

終わりに

私は、動物園で生きるライオンも野生で生きるライオンもどっちが幸せで、どっちが不幸とは思わない。動物園では安全は保障されている中で家族を持つことが出来ている幸せを知れたのだ。たとえ柵の中でも、野放しの人間でも幸せを感じるのは難しいことをを思うと複雑でまた切なくなる。この前アンビリーバボーで、オリトとイオと子供達の同居を試みたことが放送されていた。人が囲っている以上、ライオンらしく生きていける努力を動物園も模索されていることを知れて良かった。
映画出演してライオンと触れ合い保護活動へ転身した夫婦も、ライオンと共演しなければ、BOON FREEという保護団体は存在しなかっただろう。

https://youtu.be/b0NQh3pPv7o?t=50


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