断髪小説~恵美子~つづき

「髪、梳かしますね」
男性が言った。
恵美子は黙って頷いた。
背の高い男性に合わせ、恵美子の座る椅子はさらに高い位置に上げられた。
男性が歯の荒い櫛で恵美子の髪を梳いていく。
いつバリカンを取り出すんだろう。
恵美子は目をキョロキョロさせながら、鏡に映る男性の姿を追っていた。
男性は長い時間を掛けて、丁寧に丁寧に髪を梳いてくれた。しばらくすると恵美子の髪を味わうように、櫛の代わりに指を髪の中に潜らせた。

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