愛宕千日詣

嵐山から北へ　
嵯峨野を背に進むと すぐ渋滞に つかまる…　うつむかせたヘッドライトが無駄に前車のテールランプを照らす…　山の方から くだってくる車は極端に少ない…　　

あだし野念仏寺の看板あたりで車は 動かなくなる　遠く前方に見える鳥居本の料亭をオカズに 持って来た おにぎりを ほおばる　　ジリジリ  ジリジリとしか進まない車……　やっとの思いで 妖気帯びるトンネルを抜け 車あふれる駐車場へ……　　時間を見ると すでに真夜中を過ぎている……　誘導され奥の山際へ　エンジンを止め 漸くヘッドライトの火を落とした……　係の人が料金を告げに近づいてくる……　キーを預け「いってらっしゃい」 の声に押されて お山へ……　随分久しぶりに地に足を付けた心持ちになる
しゃがんでソックスを勢いよく上げた……

もう一度 身支度を確認して 屈伸運動を試みる　清滝川は暗い……　ラーメン鉢の模様に似た欄干の橋を渡る……　　愛宕神社二の鳥居前で一礼　
裸電球 連なる先へ 導かれるまま登る…　ゆっくり ゆっくり…　　ひと足ごと内省を促す道…　目指すは山深くおはす火伏せの神　　深呼吸して人の声する山へ呑まれていく……

いつも時間予定は決めない
登りに だいたい四時間　帰りに同じ表参道をくだるならプラス二時間半程かける……　
無事祈る道中　
背負うリュックには冷凍したペットボトル　　ゆすられて溶けたぶんだけ口にふくんで……
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山頂で事済ませて くだり…
気は軽くなるが油断は出来ない

明け方は  おついたち参りの人とすれ違う… 　なんとなく力がはいる爪先…… 　ケーブルカー跡あたりの急坂が一番滑りやすい　　夜に慣れきった目に 汗と朝日がしみる　やっとくだりきって二の鳥居に着くと足の筋肉はガタガタになっている　振り返って お山に御挨拶一礼…　懐かしく思えるラーメン模様の橋で川音を聞く…　
夏の光溢れる せせらぎに涼しい風……　

清瀧や 波に散りこむ 青松葉

芭蕉の句が ふと口をついて出る

駐車場は深夜の満車が嘘みたいに空いている……　脱力しきり……

(参拝はあくまで自力で……)の注意書にあるように　愛宕詣は 本格的な登山であり　軽い気持ちのハイクではない……

今年の夜間参拝は諸事情で中止になったと聞く……　

よろしければ皆さん
来年 是非 いかがでせう

私は当分の分 すでに登らせていただいたので 暫く参る予定はごさいません
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#俳句の日

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