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リチウムに関する最近のニュース(2022年1月分)

2012年から9年ほどリチウムのメーカーに勤めていた関係で、今でもリチウムに関するニュースは気になります。2022年1月のニュースをまとめてみました。

リチウム価格、今年も急上昇

 リチウムに国際的な価格指標はありません。その代わりとしては、一般的に中国のスポット価格が用いられます。大口契約者は長期契約でリチウムを調達していて、スポット価格で買っているわけではありませんが、リチウム誘導品の価格交渉などでは、中国の価格動向を指標とする場合が多くなります。
 中国の炭酸リチウムのスポット価格は2015年から2017年にかけて急上昇しました。この時の要因はリチウム価格上昇を見越した投機的な動きでしたが、電気自動車(EV)の販売が予想より伸びなかったこと、中国でEVの補助金政策が終わったこと、リチウムメーカーの在庫過剰などから、2018年には価格が下落しました。しかし2020年になると脱炭素への動きが加速するなか、世界各地でEVの実需が増加し、リチウムのスポット価格もロケット上昇を開始しました。2021年は中国の発電規制、リチウム採掘地のコロナ発生などマイナスな要因も重なり、昨年だけでリチウム価格は4倍になりました。
 リチウムの供給が増えれば価格が下がると思われますが、セルビアの新リチウム鉱山開発が環境問題でとん挫したり、チリで左派政権が誕生して国際入札が止まったりで、よいニュースがありません。EV向けの炭酸リチウム、水酸化リチウムだけでなく、リチウムの誘導品にも大きな影響があるでしょう。

ブルームバーグ記事より

電池からのリチウム回収

使用済みリチウム二次電池からのリチウム回収の初期の試みとしては、2012年にドイツ連邦環境省とケメタル(現アルベマール)が共同で行った「Lithorec」プロジェクトがあります。電気化学的な膜プロセスを使用して溶液からLiOHを製造するプラントが建設されました。その後も様々なプロジェクトでリチウムの回収が検討されています。

1月19日に、住友金属鉱山は、関東電化工業との共同開発により、使用済みのリチウムイオン二次電池からリチウム化合物を高純度で回収する技術を発表しました。住友金属鉱山の二次電池リサイクルプロセスのなかで発生するリチウム含有スラグから、関東電化工業の湿式精錬法を用いて高純度リチウム化合物を抽出し、電池材料として再利用可能なレベルの精製に成功したとあります。電池向けのリチウムは金属不純物を厳格に制御しなくてはならず、高度な精製技術が必要とされます。今後の展開に期待したいですね。

住友金属鉱山発表資料より


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