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Q.性生活でがんが広がるんじゃないか,という疑問について

子宮や卵巣にがんがあった場合、男性が触れたりつついたりすると、がん細胞がお腹のなかにばらかまれるのではないか、と不安になっているがんサバイバーの方がいます。
これってたしかにものすごく気になることですよね。

手術でがんを取りきったとしても、刺激によって小さながんが飛び散ったら、と考えると怖くて何もできなくなってしまいます。
そして性生活は二の次になってしまう、しない代わりにがんが転移しないで!って駆け引きしている感じ。

がんの転移は血管、リンパ管や腹水、胸水なんかに微小ながん細胞が入り込んで、他のところに移動してそこで育っていくことで成り立ちます。
ただ、普通は移動能力が高くないがん細胞のなかでも、その機能を変換して(上皮間葉転換っていいます)、もとあった場所から逃げちゃうやつらが転移を始める。
そしてほとんどのがん細胞はどこかのプロセスで免疫作用によって死んでしまうけれど、その免疫を回避して、そのがんが転移しやすいところでがん細胞が育っていくというわけです。

転移はそのがん細胞の特徴とたどり着いた場所の相性という細かなレベルで起きていることなので(どうしてそのがんがその場所に転移しやすいか、は完全には明らかになっていませんが)、これが単純な外からの刺激によって助長されてしまうってことはありません。

また転移の一つに播種というのがあります。婦人科がんでは腹膜への播種が多いです。
腹膜播種は、「がん細胞が大きくなるとがん細胞が剥がれ落ちて腹腔内に散らばってしまうことで起こる転移です」ってよく簡単にサイトに書いてあります。

この「剥がれ落ちる」という言葉に不安があると思いますが、やっぱり播種に至るにもがん細胞の特徴と腹膜との相性の問題があります。外から刺激されたことで剥がれ落ちるのではなく、「剥がれ落ちやすい特徴を持つがんがあり、そして剥がれ落ちたがんが定着しやすい環境がある」というような状況が細胞レベルであって、初めて腹膜への播種が成立します。

なので性生活が刺激になって剥がれ落ちるというような単純な話ではないっていうことです。もし外からの刺激で剥がれ落ちることがあるなら、先生はかんたんに診察したりオナカを触れないなって思います。

そのためこの疑問に対する答えは、
ノー。
がんの広がりとセックスは関係がないので、がんが広がるのを怖がってセックスをやめてしまう必要はありません。

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