見出し画像

数のヨミカタの技術1

~数を見るための基本姿勢~

 ”数のヨミカタの技術”の初回は、数字や統計データを読む(見る・解釈する)にあたっての、最も重要な基本的姿勢(考え方)についての話です。

 ”数字によく騙される””数字を正しく理解するのが苦手”と感じる方は、まず数字と向き合う基本姿勢を変えてみてはいかがでしょうか?以下の3つの点に気を付けて数字をヨンデみてください。今までと違って、少しずつ数字と仲良くできるはずです。

1.自分とかかわりのある数字にはこだわる
2.前向きな姿勢を持ちながら、批判的に見る
3.数字は議論のための素材

1.自分とかかわりのある数字にはこだわる
 数字(データ)が含まれる文章を読む際に、「この文章と数字は自分にとって重要か?」と自問してみてください。「興味を持てる内容か?知っておくべきことか?役に立ちそうか?」などの問いかけでもいいでしょう。

 YESの場合、その文章と数字(データ)を慎重に読むことを心掛けてください。文章や数字(データ)が、何を主張し訴えようとしているのか?真実を語っているのか?フェイクニュースの可能性はないのか?などを考えながら、しっかり読んでください。

 No の場合は、さらっと読みとばしましょう!
 読むのを止めてもいいと思います。だって、自分にはあまり有益な情報ではなさそうと判断したのですから。

 それだけ? と思ったみなさん、まずはそれだけです。

2.前向きな姿勢を持ちながら、批判的に見る
 文章中に数字(データ)が出てきたら、「この数字って正しいことを言っているのかな?」と、批判的に数字を見てみましょう。

 20数年前に私が参加していた勉強会で、主催者のK教授が「毎回、論文をこき下ろして終わる会ですね」とコメントしたことが、今でも強く印象に残っています。いつも優しく紳士的なK先生は、勉強会では批判的な姿勢・視点での発言を多くされていました。
 一方、勉強会の最後には、発表者へのねぎらいとともに、前向きな言葉でのまとめがあったことも、よく覚えています。

 この若い頃の体験は、その後、私の数字(データ)のヨミカタの習慣になりました。批判する一方で、作者に敬意を払い、正しいと思うことはしっかりと受け止める、いろいろなことに応用できる考え方です。
 ”批判的”でありながらポジティブに考えていく” この姿勢でデータと向き合ってみてください。

3.数字は議論のための素材
 この考え方は、お世話になったM先生からの教えです。
 M先生の専門は計量経済学ですが、少し以前から、経済学の限界を唱え、既存の経済学のフレームワークについて批判的な問題提起をしています。その一方で、一貫して古典的な計量経済のモデルでの研究と分析を継続されています。

 自己矛盾がありそうですが、私は、そうでないと捉えています。

 一般的にデータの集計や分析は、結果の考察を行い、何らかの結論を導き出すものです。結論を補強する手段として、データの集計や分析を実施することもあるでしょう。M先生も、そのようなプロセスで分析し、論文を発表し続けています。

 しかし、M先生の根本的な思想は、
 数字(データ)は議論する素材・材料であり、議論を重ねることで、良い方向性や結論が見えてくるもの
です。M先生の計量モデルによる分析結果は、先生が世の中に対して、議論の素材(分析結果データ)を提供している と私は理解しています。(もちろん、ご自身の考察も鋭いものがあります)

 データ分析を行い結果を発表すると、いろいろな意見が出ます。肯定的な意見が出ることもありますが、自分では気づかない視点からの鋭い指摘を受けたり、否定的なコメントが出たりします。時には議論が白熱することもあります。
 特に社会科学の分野では、どんなに素晴らしい分析を行っても、その結果(数字)をしっかりと考察・議論することがなければ、せっかくの価値が半減してしまいます。

 

 数のヨミカタの姿勢について論じてきましたが、少しわかりにくい点もあったかも知れません。今後、”数のヨミカタの事例”などの投稿を行う際に、上記のことと関連づけて解説していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?