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お笑い初期衝動

14.酒井くにおとおる

劇場の公演の出番順というのは、若手から始まり、最後の方は、その劇場の看板と言えるベテランの出番になっていくようだ。

その日のトリをつとめるのは、酒井くにおとおるというベテラン漫才コンビだった。
兄の酒井くにおさんと、弟の酒井とおるさんによる兄弟漫才だ。

結論から言うと、これもまた、さすがプロだと思わせる芸であった。


まず、弟のとおるさんの喋りに安定感がある。
この漫才を引っぱっているのは弟さんの方で、フリもボケも大抵弟さんがやる。
そして、フリがしっかりしてることで、ボケがより見事にズバズバはまっている。そんな具合であった。

弟さんは漫才中、身振り手振りの動きすらほとんどなく、終始姿勢正しく立つ姿はとてもカッコよく見えた。
まさに、口先一つで爆笑をとるというやつである。

そしてたまに天然キャラ(若干おかまキャラ)のお兄さんの方が喋り出したかと思えば、お兄さんを十二分に泳がせておいての、弟さんからの絶妙のイジり。これがまた大爆笑。


まるで一冊の漫才の教科書が脳内に埋めこまれてるかの如く、寸分違わず計算通りの爆笑の取り方であった。

すげー。。



僕はそれから17年間大阪に住んでいたのだが、酒井くにおとおるさんをTVで見かけることは、大阪でもたまにしかなかった。
関西の世間的なイメージとしても、“松竹の看板=酒井くにおとおる”とは、あまりなってなかったように思う。

僕などがああだこうだ言うのは恐縮だが。個人的には、酒井くにおとおるさんはもっと評価されて然るべき漫才師じゃないかと思っている。
漫才においてフリがいかに大事かを、僕は酒井くにおとおるさんから知ったのだ。

酒井くにおとおる。
その圧倒的な技術は、今も僕の心に輝いている。




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