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お笑い初期衝動

33.たった一つの共通項

僕は、同期の川田(仮名)という男から声をかけられ、コンビを組むことになった。

川田は舞台役者をやってきた人で。
周囲から「おもしろい」と言われることがあって、芸人に転向しようと松竹芸能に来たという。

僕から見ると、川田に対しておもしろいという印象は特にはなかったのだが。
それでも、思わず「コンビを組もう」となる要因が一つだけあった。

それは、お互いに筋肉少女帯(※)のファンであったことだ。
※大槻ケンヂさんがボーカルのロックバンド


僕は筋肉少女帯がめちゃくちゃ好きなのにも関わらず、残念ながら、それまでの人生において、友達に筋肉少女帯好きが1人もいなかった。

「こんなすごいロックバンドが、なぜ世間に浸透してないんだ!過小評価すぎる!」と、当時悔しいぐらいの気持ちで過ごしていたので。
川田との“筋肉少女帯好き”という共通項は、僕にとって貴重なものに思えたのだ。

「うちに来れば『釈迦』のPV見れるよ」

この川田の誘いに乗っかり、僕は川田宅へ行くこととなった。
『釈迦』とは、筋肉少女帯のメジャーデビュー一発目のシングル曲だ。ファンにとってはたまらない。


冷静に考えたら、【筋肉少女帯好き】と【コンビを組む】を直結させる必要など全くなかったのだが。
最初にコンビを組むときは、このように案外いい加減な理由で決まるものである。



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