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僕と彼女のコーヒーブレイク (コーヒーSS)

最近つくづく思うんだけど
あなたって好き嫌い多いわよね

好き嫌いなんてないよって
出会った頃聞いたけどすっかり騙してくれたわよね

いたずらっ子を嗜めるように彼女は僕を軽く睨む

彼女がこう言い出したら、最終的に僕が謝るまで彼女は喋り続ける。
僕がそうだよね、ごめんと謝ってしまえばすぐ終わるのだが
今日は、少しだけ彼女に立ち向かってみたい気分だった

えっでもさ、嫌いなものは少ないじゃんか。
確かに好きじゃないものは多いけどさ。

アッ、また出た、お得意の『好きじゃない』、そればっかりじゃん。。。
好きじゃないから食べたくないってさ、嫌いと一体全体どう違うわけ?

うーん、今日の戦況は芳しくないようだ、彼女の表情が険しくなってきたのでこれ以上立ち向かうのは諦めよう。勝てない戦はしないに限る。

あ、そういえば、グアテマラが飲み頃だったはず。。。
僕は圧倒的劣勢を立て直そうとコーヒーの話題を振る

あ、ねえ、コーヒー淹れるけど、飲む?

淹れてくれるの?うれしい。

破顔一笑。
彼女の切り替えの速さに僕はずっと救われてきた。
彼女の笑顔はいつだって僕の世界を平和にする

彼女は自称カフェイン中毒
いつでも飲みたい、飲めればなんでもいいんだと言いながらドリップコーヒーを淹れて毎食後に飲んでいる、職場にも持っていっているようだ

僕は自分のことをカフェイン中毒とは思わない。飲まない日があってもつらくないし、でもやっぱり好きじゃないものが多いから(笑)ドリップコーヒーは好んでは飲まない。
飲むとしたら豆から曳きたてのコーヒーが飲みたい。

彼女に言われて気づいたのだが、僕は食べられるけど好きじゃないものが多い。
味が濃いものと予想に反して甘いものはできれば口にしたくない。
ソースやドレッシングは自分が好きな分だけかけたい、などと言って、飲食店でもドレッシングを別皿でオーダーしてしまう。
彼は自分で料理することがあるのだがそれはひとえに、自分の好きな味で食べたいだけなのだ。
彼女が作ってくれる料理にも薄味注文をし続けたので、彼女が苦労したことは想像に難くない。それが冒頭の、騙された、のやりとりだ。
しかし僕は、彼女に指摘されるまで、自分という人間は好き嫌いのない人間だと思い込んでいた。。。。。
あ、別皿にして、とか、自分でかけるから、などというのは結構なわがままなのだなと彼女が分からせてくれた

そんな僕はコーヒーに対しても自分勝手だ
最近になって比較的リーズナブルなブレンドも買うようになったが
月に何度もシングルオリジンの豆を200gずつ購入する。
近所の安売りスーパーでドリップコーヒーを探す彼女にしてみれば高い買い物だと思う

コーヒーを淹れるのは、僕にとっては雑味との戦いだ
すっきり、香り高く上手に淹れられる日ばかりではない
何だかモヤっとした味になる日はある、嫌な後味が残ることも。。。。
お湯の温度が高かったのか、さては今日の湿度が味に影響を?などと自分以外のせいにしたりする。

でも彼女は僕の淹れたコーヒーをいつも
おいしい、美味しい、と笑顔で飲んでくれる

ドリップしてもサイフォンで淹れてもいつもニッコリしてくれる。
僕の思う、出来や不出来に全く関係なく。

だから今日も彼女の笑顔を見たい。
その幸せな時間のためにコーヒーを日々淹れ続ける。

——END——


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