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おろろん変化球 Redmond単身赴任日記 Vol.3 コヨーテの普遍性


パワーライントレイルというトレイルを走っていました。
季節は夏、カラッと晴れ上がった休日の午後。
緑豊かなトレイルを走るのは、最高です。
パワーライントレイルは起伏の連続するトレイルです。
その途中傾斜のきつい坂の上に登り切って、一息いれた時でした。
トレイルの左側は緑豊かな傾斜になり、3mくらいの下には草に埋もれた道の
ようなものがありました。
ふと気がつくとその草に埋もれた道に、一頭の犬の様な動物と目が合いました。
段差の距離はあれども、実際の距離は近いです。
犬?いや、首ひもに繋がれていない犬がこの場所にいる事は無いと思いました。
キツネ?大きさとしては、キツネか中型犬ほどの大きさです。
毛並みもキツネの様です。ただ違うんです。
なんというか、凶悪さというか、邪悪さが。目が怖いのです。
これはあくまで、僕の偏見と当時の狼狽から来ていると思いますが、
なんかポケモンのかなり悪い奴が、現実化したようなイメージでした。
僕は一歩も動けず、目もそらせずにいました。
どれくらいの時間がたったでしょう。1分は無かったと思いますが、5秒10秒の時間では無かったと思います。それくらい見つめ合いました。
正直、怖かったです。
なんか、小さいけれども、毒もってんじゃないかとも思いました。
それが「フン」という感じで、何事も無かった様に歩き始めて、
見つめ合いは終わりました。ほっとした僕は再び走り始めました。

パワーライントレイルです



「多分、ハイエナを見たんだと思うな」
僕は日本人のゴルフ仲間の友人に言いました。
「いえ、それはコヨーテです」断言する友人。
全く自分の無知を恥ずかしく思いました。
調べたらハイエナとコヨーテは全く違う哺乳類でした。
坊主頭のトレーナーと染色長髪のボクサーくらい違いました。

コヨーテを知り、興奮した僕は次の日会社の同僚に言いました。
事前に発音を調べました。どうもケイヨーテとコヨーテと二つ発音があるようです。
「昨日、ケイヨーテを初めて見たよ。びっくりしたよ」
彼は言いました。
「ケイヨーテは嫌いなんだ。子供の頃飼っていた、チャボの雛を持って行かれたんだ」
「そうんなだ......」
なんか、悪いこと聞いちゃったな、っと同時に2つの驚きがありました。
「チャボって米国でも飼うんだ」
最初英語の単語が分からず、辞書で調べたところ、チャボと判明しました。
僕も子供の頃チャボを飼っていたので、そして同じ様に犬に持って行かれた悲しい経験がありました。彼には嫌な事を思い出させてしまったと思っています。
もう一つの驚きは、彼はシアトル生まれのシアトル育ちだと言うことです。
この地区で、最大の都市であり、この地区をまとめてシアトルと呼んでしまうこともあるほどに、まぁシアトルです。
その都会のシアトルに住んでいても、ケイヨーテが、チャボを。
確かに昔は今程の大都市では無かったと思いますが、それでも驚きました。
ケイヨーテって、そんなにいるんだ、昔からそれほど身近な動物なんだと。

もう、10年程も前の事です。
師匠筋のお嬢さんが、アラスカから友達と一緒に日本を訪問しました。
その時夕食を共にしました。なんとなしに、話題は銃の話しに。
そこでアラスカから来た友達は言いました。
「家の周りにはコヨーテがいるから、銃は必要なんです」
その時は、なんか獣がいるんだな、大変だなぁ、くらいに思っていました。
今となっては、コヨーテが周りに沢山いたら、確かに怖い気がします。

初めてコヨーテに遭遇してから、一年たつかたたないかのうちに、二度目の遭遇がありました。たまにいくゴルフ場なのですが、そこには二つのコースがあり、一つはイーグルコース、もう一つはコヨーテコースです。そのコヨーテコースの何ホール目かで二打目を打とうとした時に、ふっと右手の丘の様に小上がりになっている方を見ると、コヨーテと目が合いました。距離にして10mは離れていません。また一頭です。
また、じっと見つめています。私もなんか怖くて目が離せませんでした。
10秒位はそうしていたでしょうか、そのうちまた、「フッ」っと目をそらして去って行きました。

ゴルフ場のケイヨーテです。キリッとしてると思います。


確かに緑の多いゴルフ場ですが、一体どこに身を潜めているのか分かりません。
その後そのコースには何度か行っているのですが、コヨーテとは遭遇していません。
ただ、不思議な事に二度目に遭遇したコヨーテは、最初の時のように邪悪、凶悪な感じはしませんでした。ただキリっとして、冗談は通用しない相手だなという印象を強く持ちました。日本に帰国する前に3度目の遭遇があるのか、無いのか。
遭遇したいのか、したくないのか、微妙です。

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