ラモーンズはパンクロッカー? オタク兼腐肉の日記#5

 ぼくは別にパンクが好きなわけではない。
 最近そう気づいた。

 ぼくはラモーンズが大好きだ。特に『ラモーンズの激情』は、最も好きなアルバムランキングを作るならトップ10には必ず入るほど愛している。

 セックス・ピストルズもそれには及ばないまでも、かなり好きだ。
 THE BLUE HEARTSもとにかく最高だし…………

 ここでパンクの弾が尽きた。

 そう、パンク好きを名乗るにはあまりにも乏しい弾数……ぼくはパンクが好きなんじゃなくって、これらのバンドが好きなだけだったのだ。(あるいは他にバンドを知らないか)

 そんなぼくだからこそ、あえてラモーンズについて語ってみようというわけだ。
 なぜ「だからこそ」なのか。ラモーンズが一番パンクらしからぬパンクロッカーだからだ。

 3コードをスカスカの爆音でかき鳴らし、短い曲を高速で演奏し、革ジャンにジーンズを履いた汚らしく最高にかっこいいラモーンズ。

 パンク、そしてロックの歴史上、重要なバンドであることは間違いない。

 ただ、ラモーンズは売れなかった。

 売れに売れたセックス・ピストルズは一枚のアルバムを残して解散、ムーブメントに後押しされたクラッシュはパンクの名のもとにロックを拡張した。

 それぞれに個性はありつつも、パンクという筋を曲げることなくバンドを成長させたり解散したりしていた。

 『エンド・オブ・ザ・センチュリー』に代表されるように、ラモーンズにはポップさを強調する時期もあれば、『サブタレイニアン・ジャングル』のようなハードコアっぽいことをやっている時期もある。

 アルバムを順に聴いていくと、バンドの成長を感じられる瞬間はたくさんある。メンバーチェンジもそこそこあるし、アルバムごとに表情があるのは間違いない。

 ただ、とことん売れなかった。
 ロックンローラーのきらびやかさに届かなかったロックンローラー、それがラモーンズだと思う。

 セックス・ピストルズは売れたのに解散したし、クラッシュは売れても前に進み続けた。

 ラモーンズはずっとそこそこだったのだ。ライブに人は集まるし、アルバムも継続的に出る程度には集客力があった。時々チャートインもした。

 MVやジャケットはやや安っぽいし、かといって吹っ切れたアマチュア主義を打ち出しているわけでもない…………

 そのいじらしさこそが、ラモーンズを愛してしまう理由だと思う。伝説すぎない、というかなんというか。

 シンプルで、エネルギッシュで、安っぽくて、あんまり上手くなくて、不器用で、ゆえに最高にロック。
 いつまで経っても戦いから解放されないランボーのように、ラモーンズはロックに囚われ続けていた。

 ランボーも最初はけっこう社会派でシリアスだったのに、2、3と続くうちにハリウッド式のド派手なアクション映画になった。そんな寒々しさと愛おしさがラモーンズにはある。どっちもラではじまるし。

 みんながゴダールとかキューブリックについて語っているなか、ランボー3とかコマンドーの話を持ち込むのは気が引けると思う。

 しかし、そこにこそパンクはある。
 なにを言ってたって、好きなもんは好きだし、観たことないもんは観たことない。面白くねえもんは面白くねえし、かっこいいもんはかっこいい。
 そういうアホらしさ、チープな前向きさにこそ、パンクはある。

 ラモーンズはいわゆるパンクらしさからは、少し離れているように見える。
 彼らはショットガンを咥えなかったし、薬物乱用でぶち込まれとしなかった。派手な解散もしなければ、爆発的に売れることもなかった。

 その前向きさ、とにかく音楽をやるぜ! という乱暴さがラモーンズのかっこよさ? なのだとぼくは言いたい。

 ラモーンズはポップだ。だからこそパンクで、だからこそロックなのだ。

 ぼくがパンクというジャンルが好きじゃない、と言ったのはそういう理由がある。

 ラファエロとデュシャンを「アート」というくくりで一緒くたにするくらい、パンクバンドを「パンク」で一括りにするのは乱暴だ。

 色々書いてきたが、音楽なんて好きなように聴けばいい。この記事を読んでラモーンズに興味を持ったら、ベスト盤から聴いてみたら良いと思う。良い曲がたくさんありますよ。


追記:クラッシュとかゴダールとかキューブリックが嫌いなわけじゃないです。あしからず。


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