小説、書きたい場面だけ書いても別にいいんじゃない?
前置き
こんにちは。鎌田です。
突然ですが、皆さんは「小説を書いてみたい!」と思ったことはありますか?
私はあります。
めっちゃナメたこと言いますが、小説って絵とか音楽に比べて何か簡単そうだし、手軽に創作意欲を満たせるんじゃないかな〜と思ったんですよね。
で、書いてみたんですけど
小説、全然難しい
舐めてかかったらすっごく難しかったです。
そりゃそうだ。
でも、このまま小説を書けずに終わるのも何だかしゃくです。
とは言え大変な努力はしたくない…楽して書きたいものだけ書きたい…
ということで、提唱します。
「小説、書きたい場面だけ書いても別にいいんじゃない?」
…そう、一枚絵を落書きする文化が漫画を描くこととは別に許容されているのなら、小説でも同じことが言えるはず。
というわけで、実際に小説を書いてみました。立証なるでしょうか。
是非、皆さんの目で確かめてみてください。
「ムクドリ男」
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—「慣習とは反対の道を行け。そうすれば常に物事はうまくいく」(ルソー)—
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1.11/4 14:34 平野精神科クリニック
「平野先生。こちらカルテです」
「ああどうも、ありがとうございます」
手渡されたカルテに目を通す。
八田圭人。22歳男性。大学4年生。主訴は「変な言葉が聞こえる。気分が落ち込んで大学に行けない」とのこと。
大学4年生か。就活のストレスなんかも要因になっているかもしれないな…確認しておこう。
「平野先生、患者さん入ります」
「あ、分かりました。お願いします」
さて。入室時の様子を伺う。既に診察は始まっているのだ。
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—「人が空想できる全ての出来事は、起こりうる現実である」(ウィリー・ガロン)—
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2.11/4 14:40 診察室
「ハッタさん、どうぞ」
「……あ、はい、失礼します」
看護師に促されるまま入室する八田さん。
…ハチタと読んでいたけどハッタと読むのか。呼び間違えるところだった。
看護師に促されてから入室するまでに少しラグがあった。反応がゆっくりな方なのか、あるいは幻聴が聞こえていたのか。
「こんにちは、平野と言います。よろしくお願いします」
「あ…はい、お願いします」
落ち着いて受け答えをされている。やや痩せ気味だが、見た目にはそれほど不健康そうではない。服が少しよれているところを見るに、生活の余裕は少なそうだ。
「今日はどうされましたか?先ほど記入いただいたカルテには、変な言葉が聞こえるとありましたが…」
「はい…そうなんです。特に命令してくるとか、怒られるとかではないんですけど…ずっと言ってくるので嫌になって…」
「そうなんですね…いつ頃から聞こえてきたか覚えてますか?」
「え、えっと…確か…1,2ヶ月前ぐらいからだったかなと…」
「なるほど、1,2ヶ月前から聞こえていたんですね…今日来院されたのは、何かきっかけがあったんですか?」
「えーと…あ、そうです、それも声が言ってたんですよ」
「そうなんですか、どんな風に言ってきたんですか?」
「言ってきたっていうか…言ってるのが聞こえてきたって感じなんですけど。何て言ってたかな…『みんな!倒れる前に頼むから病院行け!仕事はそれからだ!』みたいに言ってたと思います」
みんな…仕事…?確かに八田さんに向けて言ってるような感じではないように思える。
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—「見えている世界が狭い人ほど愚かな者はいない。やはり何よりも大切なのは教養だ」(ブラックシャイン)—
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3.11/4 15:08 診察室
「…分かりました。では今回はお薬出しておきますので、それで様子見てみてください」
「はい…ありがとうございました。失礼します」
診察を終えて、八田さんは来た時より少し明るい表情で退室された。色々不安な中、困っていることを話せて少し楽になったのかもしれない。
…しかし興味深い話だったな。カルテにまとめておかねば。
・八田圭人(22) 男性
・1,2ヶ月前から変な言葉が聞こえる。特に夕方〜夜が多い。
・幻聴の内容は様々。例えば?と聞いたところ
→政治的な発言(これが今の教育機関の現状…日本はもうおしまいです)
→交際相手への愚痴(私も働いてるんだからお前も少しは家事しろよ!って言ったら「は?俺も靴並べ直したり、ゴミ捨てたり見えない家事やってるんだけど?」って言われたんだけど、その程度で家事やったとかほざくな💢小学生かよ💢)
このような言葉が聞こえてくるとのこと。しかし内容は毎回バラバラで、統一性はない。
・来院の動機も幻聴によるもの。
・生育歴や人間関係について聞いたところ、それほど悩みはないが、最近人と話していなくて不安だとのこと。親とは不仲で、地元から離れて一人暮らしをしているせいで大学の知り合いとしか話す機会がないが、皆就活や卒論に忙しくて会えていない。
・就職先が決まっておらず、幻聴もあってあまり眠れていない。食欲もあまりない。
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4.11/4 17:52 生日駅ホーム
毎日のことではあるが、これから自宅まで1時間も電車に揺られなければならないという現実に、どうしても憂鬱になってしまう。
せめて電車内の時間を活用できる趣味でもあればいいのだが…残念ながら私に崇高な趣味はない。せいぜいスマホ片手にSNSを眺めるぐらいだ。
Twitterを開く。TLに流れてくる有象無象のツイートを見ていると、自分が何を考えているのか分からなくなってくる。
というのも、TwitterのTLでは、自身の興味の有無に関わらず様々な情報が流れ込んでくるからだ。自身の意思とは関係なく、大量の発言が目に飛び込んでくる。
今日は知らないyoutuberがテレビに出たらしく、そのyoutuberの名前や発言がトレンド入りしていた。そんなことは私に一切関係ないが、しかしこうして数秒の間はそのyoutuberで脳内が支配されてしまうのだ。
自分の意思とは関係なく聞こえてくる言葉が脳内を埋め尽くす。案外、Twitterも幻聴も似たようなものかもしれない。
…飽きました。やっぱり小説を書くのは疲れますね。おしまいにします。
それではまた次回。
ご清覧ありがとうございました🍍
ここに文章を書くことで誰かがサポートしてくれるなんて、そんな都合の良い話あるわけないよな…いやまさかそんな…ねぇ?