女性アーティスト物語 グロリア・ ヴァンダービルト(1)
ニューヨークのソーシャライトにして、デザイナー、女優、香水メーカー、作家、アーティストであったグロリア・ヴァンダービルトの幼少時代に住んだペントハウスが売りに出されたというニュースが少し前にあった。ニューヨークの中でも特に地価の高いアッパーイースト・マンハッタンにおいて、1720平米あるというから驚きだ。価格は3200万ドル(日本円で約41億円)。
アメリカン・プリンセスの誕生
産まれたときから人々の注目を集め、その成功も不幸もドラマティックであった、グロリア・ヴァンダービルトの数奇な人生を振り返ってみよう。
アメリカを代表する富豪、鉄道王コーネリアス1世の子孫として、1924年に生を享けた彼女は、伯母の友人であったハーパーズ・バザールの編集長に見いだされて15歳でモデルとして活動を始め、ヴォーグの表紙を飾るようになる。その美貌とと突き抜けたセンスでニューヨークのファッション・アイコンとして君臨し、多くの分野でのデザインも、次々と出版する本も大成功を収めた。
貴族のいないアメリカにおいて、王侯貴族のような優雅な生活。しかし、そのセンスは、単なるヨーロッパ趣味の踏襲や、流行の追随には終わらない。アメリカ文化の一つであるパッチワークを屋内装飾に多用したり、フォークロア的なもの、中世的趣味をぎりぎりのバランスで詰め込んで、昇華させる、たぐいまれなセンスを持っていた。
こう聞くと非常に恵まれた人生であるが、彼女の人生にも大きな影の部分がある。
(続く)
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