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歌舞伎ヲタが滝沢歌舞伎2016を観たよ

※私はただの芝居好きなオタクです。
※ブログは個人の感想です。

とうとう手を出してしまいました。
2016年の滝沢歌舞伎です。
私にとって初めて拝見する「滝沢さんの」滝沢歌舞伎。

いやなんか、ついうっかり円盤を買っちゃって。こわいこわい。

この年の滝沢歌舞伎は、V6の三宅健さんを迎えて行われた初めての年で、主な出演者に6人時代のSnowManとジェシーさん、京本大我さん、林翔太さん、増田さんという布陣。Jr時代の目黒蓮さんも参加してますね、あと後にIMPACTorsになる基俊介さんとか。

上記はただの私的メモです。これ読んでくれる人、大概みんな私より詳しいと思うのでスルーしてくださいね。

歌舞伎ヲタなので、歌舞伎に関連するところの感想をざざーっと残しておきます。その後にそれ以外の感想。とーっても長いです(約4,500字あるぜ汗)。

歌舞伎パートについて

一幕の歌舞伎パートは四つの構成で成り立ってました。順に「口上」「祭り」「男女の舞」「蝶の戦い」です。また二幕「鼠小僧」の第一場でも歌舞伎の手法が使われていました。口上を除いてそれぞれ感想を述べます。

1. 祭り

歌舞伎にも「お祭り」という演目がありまして、幕開きの様子からすぐにこれはその歌舞伎をベースにしているんだなと思いました。

滝沢さんは首抜き模様(紋を背中から胸にかけて大きく染めた模様)の浴衣(しかし何の紋か分からない・・・滝沢歌舞伎の紋ってどんなだっけ)、バックで踊るJr.の皆さんは鳶頭のようなたっつけ袴で勢揃いし「WAになっておどろう」の邦楽仕立てで踊るという趣向でした。

鬘や衣装、音楽を今風に寄せていて、これは何でだろうなって思いました。「WAになっておどろう」を邦楽に仕立て直しても、ちょっと物悲しいというか、良さが半減すると思うんですよね。普通にオリジナルの曲で良かったのに。あと個人的に他の時代劇とかでもそうなんですけど、今風の前髪がついてる鬘、好きじゃないっていうのがあります。ちょっと残念ポイントではありました。

でもみなさんうち揃って賑やかな演目です。歌舞伎のように、手拭い撒きがあったのがお祝いごとの感じが出ていて面白かったです。毎公演、2つしか撒かないのかな。すごい争奪戦だよね。そもそも手拭いなんですかね、あれ。誰か教えてください。

2. 男女の舞

これを見て「タッキー、ガチだ」と思いました。
私はこれまで佐久間さんと阿部さんの女方しか見たことがなかったのですが、滝沢さんはレベルが違うというか、日頃から鍛錬を重ねていることがよく分かりました。

滝沢さんって女方をやるには骨格的に少しハンデがあると思うのです。顔つきも顎がしっかりしているし、身体も直線的で男性的です。でもそれを乗り越えてかつ色気を滲ませながら女方の舞踊を成り立たせていて、素晴らしいなと思いました。「自分はこれをやりたい」という意志がはっきりと感じられました。

個人的には顔の工夫でもう少し柔らかく見せられるのではないかと思いましたが、この男女の舞の前は立役なので兼ねるとなると仕方ないのかもしれないです。

3. 蝶の戦い

ここまで見てあることに気づき、ほんとにびっくりした演目です。

滝沢さんと三宅さんが蝶の羽を模した着物に獅子のような頭、あまり見たことのない隈取で舞います。蝶の精なんですかね。Jr.のみなさんも、袖が蝶の羽のような和洋ミックスな着物で激しく踊ってましたね。蝶をモチーフにした躍りといえば、春興鏡獅子の胡蝶が有名ですが、このような拵えで舞うのは見たことがないのでオリジナルなのかも。隈取はお顔に描いたのではなく、シールみたいなものを貼っていましたね。虫っぽい隈取、何か参考にしたのかなと思って探してみましたが分かりませんでした。

物語ははっきり言ってよく分かりません。誰が誰と戦ってるのかさっぱり。最後の方に黒い鱗粉のような紙吹雪が舞って身体に悪そうだなと思いました。

で、何がびっくりしたかって、滝沢さんと三宅さんが大口に白足袋で踊っていることでした。

大口というのは幅の広い角張った袴のことです。能装束から来ていて、格の高い登場人物が身につけます。どう考えても踊りづらいものです。連獅子の後シテでは親獅子・子獅子とも大口袴ですが、今年の滝沢歌舞伎ZEROの連獅子ではそのスタイルではなく四天と呼ばれる長いベストみたいな衣装でした。いつか全員が大口履いてるのも見てみたい気がする。

さらに白足袋。何度も見返したのですが、ゴム引きの地下足袋ではなく、普通の足袋に見えました。

おそらく滝沢さん、三宅さん以外の方はゴム引きの地下足袋を履かれてたと思いますし、今の滝沢歌舞伎ZEROでも岩本さんが度々「歌舞伎の時は地下足袋」を履いていると言ってます。お気に入りのメーカーがあるとかなんとか。

当たり前の話ですが歌舞伎にしろ日舞にしろ、通常はただの足袋なので、グリップが効かず滑るわけですね。以前にも書きましたが歌舞伎役者さんとしては滑る方がよいとも仰っていました。小さい頃から踊られているので慣れておられるんだと思います。歌舞伎役者さんが激しい動きをしていても滑って転んだりしないのは、腰を落として正しい重心で立っているからなのではないかと推測します。

実は前からちょっと懸念していたのが、滝沢歌舞伎の面々がゴム引きの地下足袋を愛用していることでした。ゴム引きの地下足袋だと、滑らずに動ける代わりに身体には負担もあるのではないかと思います。つまり重心が少しずれていてもグリップが効くので転んだりしない。ということは本来転んでしまうような体勢でも足が滑らないので足を捻ったり腰に負担をかけたりしてしまうんじゃないかなということですね。また、そのまま続けていると正しい姿勢が習得できないのではとも考えてしまいます。

話を戻しますと、滝沢さんは普通の足袋だったわけです。普通の足袋で踊ることに慣れていて、正しい重心を体得しているんだと思いました。長年の鍛錬の賜物だと思います。

三宅さんも2016年が滝沢歌舞伎初参加にも関わらず、(滝沢さんほど激しい動きではないものの)滝沢さんに着いていっているのはすごいと思いました。これまでにも時代劇や舞台などで色んな経験を積まれているからなのかなあ。よく存じ上げませんが。

最後の方でお二人が持っていた自撮り棒のようなものは「鉄杖(てつじょう)」と言って妖怪などが持つ杖です。能でも歌舞伎でも出てきます。小道具や衣装・隈取などにお約束があって、出てきた瞬間にこの登場人物がどういう属性なのかが理解できるのが伝統芸能のいいところだなと思っています。まあだからお二人の役は蝶の精というか妖怪というか、かなり強い力を持った人外のものということなのですね。宙乗りもあって一幕のフィナーレにふさわしいものだったと思います。

4. 二幕「鼠小僧」第一場

ええ、ここも心底びっくりしたのですよ。
宮舘さんが、鳴物をやっている・・・まじか。

太鼓と鉦(かね)と両方やってましたよね。2019年の滝沢歌舞伎ZEROでIMPACTorsの影山くんが附け打ちをやっていたことも凄いと思いましたが、まさか鳴物を担うとは。どれだけ練習したんだろう、というのと、彼のダンスからも感じられることですが相当リズム感がいいんだろうというのと、あの音の思い切りの良さというか肝の座った感に感動してしまいました。

附け打ちをされていた山﨑徹さんのTwitterにも当時の宮舘さんの様子が度々上がっていて、公演期間中も成長していったんだろうなと思います。

ここの捕物の場面で、月が隠れてしまったので真っ暗闇のなか捕手が鼠小僧を探しているところ、歌舞伎では「だんまり」と言います。観客には見えているのですが、舞台上の人物は周りが何も見えていないテイで、手探りで捕まえようとしている様子を描いています。
これドリフだと「志村、うしろうしろ!」というコントでパロディー化されているのでそっちが有名になってしまい、下手すると笑いが起こってしまう場面なのですが、歌舞伎独特の演技様式なのですよ。
歌舞伎の色んな演目に使われていますが、多くは家宝とか手紙とか大事なものを奪い合ったり、取り違えたりする場面になります。「宮島のだんまり」とか「市原野のだんまり」とか、そこだけで一演目になることもあり、前後の文脈が分からないけどそういうもん、として楽しむこともあります。

さて、この場面では激しい捕物を挟んで「だんまり」があり、どちらも歌舞伎の様式美を大事にしながら現代的なスピード感やアドリブを入れていて、より分かりやすいものになっていました。これを見て、実際に「だんまり」の出てくる歌舞伎などを見ると、「ああ、あの時のあれ!」となって楽しいかもと思いました。

あ、ここの鼠小僧では滝沢さんもゴム引きの地下足袋でしたね。さすがに激しい立ち回りもあるしね。

5. まとめ

通して拝見して思ったのは、「滝沢さんの」滝沢歌舞伎すげええ、でした。滝沢さんは歌舞伎の再解釈をしようと試みているんだなということ、そして日本のある種ベタな(伝統的なというべきか)エンターテイメントへの強い愛を感じました。それらを踏まえて、なるほど演出家・滝沢秀明がやりたかったことってこれらのことか、と朧げながら分かったような気分になりました。

ガチ度が違いました。うまく言えんけど。自ら進んでこれをやりたいと考え、構成を練り、鍛錬を重ねている人から出てくるパフォーマンスってこういうことなんだなって思いました。

このまんまでいいのかという歌舞伎への問いにも思ましたし、もっと積極的に伝統芸能を取り込んでいこうという思いがあるように感じます。
こうなるに至った滝沢さんの変遷とか考えていることを知りたいのですが、何かどこかに残ってはいないのだろうか・・・。相当な思いがあるはずなので、それを知りたいです。

その他

鼠小僧の話の筋が強引すぎて若干ひいちゃった

こればっかりは黒影組を登場させた、滝沢歌舞伎ZEROの方が対立軸が分かりやすくていいなと思いました。
だって江戸の町を笑顔にしたいんなら、岡っ引きのままで人々の安全を守る方が先じゃない??
なんで兄ちゃんまで小判盗みにいくのさ!
私は真面目なんで、そういう感想が先に立ってしまいました笑。

深澤お丸さんには滝沢次郎吉さん

深澤さんのコメディエンヌの才能を引き出すのは、滝沢さんなんだなって思いました。
ああいう感じで深澤さんをいじれる人は今いないんじゃないですか?なんか違うんですよね・・うまく言えないんだけど・・・。ZEROだとお丸さんが誰に対してもお姉さんに見えるんだけど、次郎吉さん相手だと年下に見える!激しいツッコミと甘える感じと両方出しててより可愛い。深澤さんは可愛いです。そして美人。


ふーーーーめっちゃ時間かかったけどこの辺で終わります〜〜。
そうそう、一幕のダンスパートなんかは圧倒的にZEROのが好きだよもうこれ以上書かないけど。

なんと既に2018版も手に入れているのでこちらの感想もいつか書きます。


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