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決めることで消える世界線

かもめんたるのう大さん脚本・演出の演劇を鑑賞した。

かもめんたるはキングオブコントで優勝したことのあるお笑いコンビで、
お笑いだけにとどまらず、『劇団かもめんたる』という劇団を旗揚げしている。

う大さんの表現する、人が変容する部分がとても好きで、
一度は演劇を観に行ってみたいと思っていた。

https://www.youtube.com/watch?v=K_HkBacHNM8

ちなみに上記がキングオブコント優勝時のコント。
狂気的なネタで、観客から笑いではなく、悲鳴があがりエンディングを迎える。

ふとネットを見ていると、う大さん脚本で、
『スルメが丘は花の匂い』という作品を上映するとの情報が。
吉岡里帆さんが主演を務めている。

ちなみに大学時代から吉岡里帆さんの熱烈なファンで、
写真集を買ったこともある。
好きと好きが組み合わさってるし、調べると名古屋でもやっているし、、
これは行くしかない、、と思い、すぐにチケットを予約。
2ヶ月間心待ちにしていた。

そして、舞台当日。

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前から14列目のど真ん中。
舞台の全体像も見やすいし、表情も分かるぐらいの近さで丁度いい位置。

2時間弱で演劇は閉演。
最後は皆スタンディングオベーションで演者を迎えた。

話の内容としては、
ソフトボールををしていた緑(吉岡里帆)がふとしたことからおとぎ話の世界に入り込んでしまう。
その世界では、色々な地域で浦島太郎やシンデレラといったおとぎ話の物語が起こっており、主人公が入り込んだ地域でもスルメ姫という物語が起ころうとしていた。
緑は、そこでスルメ姫の物語の主人公として生まれたクロエと出会う。老婆が、クロエが西の国の王子と結婚して姫になると予言を行うと、町中が必死にクロエが主人公になる物語を成立させようとしている。

この舞台の肝となる部分は、
老婆が予言を行い、町中が協力し合いながら物語を成立させるような生活(恋愛対象になりうる人と離れ離れにされるなど)をすることによって、クロエが本当の気持ちに悩みながら生きてしまうことだ。

物語の主人公(スルメ姫)になりたい自分と、本当に好きな人と結ばれたい自分の中でクロエは葛藤する。

決断することによって、消えてしまう世界線は無数にある。
決断のタイミングが掛け違うと、全然違う自分になっていることも。
無数に張り巡らされたパターンの中で、どのタイミングで、何を選択するかによって人生が左右されてしまう。
まるで恋愛シチュエーションゲームのよう。

旅もそんなことの繰り返しだった。
一日予定が違えば、会う人も変わってくる。
1日ズレていれば、アフリカでレンタカー旅をしていた仲間にも巡り会えていないだろうし、アルゼンチンの旅人の車で南米最南端を旅するような経験もしていない。
タイミングが違えば、行く地域や、国だって変わりうる。

大学時代、自分がどうなりたいのか悩むことが多かった。
自分が目指したいものとか、心の底からやりたいことが
世界には「一つだけ」あって、それを4年間で探さないといけないと思っていた。いや、思い込もうとしていた気がする。

無数にある職業の中から、天職なんかうまく見つけられるのは難しいし、比較もしないのに天職かどうかもわからない。
今考えると何を悩んでたんだろうと思うが、あの時は分かりもしない唯一のものを見つけるのにもがいていた。

大学生活が進むにつれ、唯一の物語を決めつける必要はないかと気楽に考えるようになったが、自分なりに決めつけた予言のようなものに従って生きていたら、今のような生活はなかったのかもしれない。


舞台でも、予言に拘らなくて良かったんだという考えになり、物語は終焉した。
たまたま入ったサークル、たまたま行った国、たまたま行ったイベント。
たまたま募集していた求人媒体、たまたま出会った人。
偶然の繰り返しが重なり合い、今の自分が形成されているし、
これからもそうやって生きていくんだろうなぁ。





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