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⑪中央アジア、モンゴル・ゴビ沙漠

 真昼の沙漠でするパンク修理ほど、やるせないものは無い。多い時は、一日に3回もパンクした。まず後輪タイヤがパンクし、修理して、次に前輪タイヤがパンクし、修理して、また後輪タイヤがパンクする。という具合である。この時私は、もう後輪タイヤの修理をせずに進むことにした。パンクの穴が小さく、3~4km進むごとに一回空気を入れれば、なんとか騙し騙し進めそうだったのだ。

普通に考えたら、パンクしている状態で沙漠なんかで自転車を押して歩きたくない。しかしこの頃、もうそんなことを言ってられないくらいパンクが頻回に起こっており、修理にキリが無くなっていた。そこで私は考え方を変えた。変えざるを得なかった。

前進出来るだけ御の字だ。それにたまに空気を入れなければならないことにさえ目を瞑れば、これはもうパンクしていないも同然じゃないか。それに僕自身の身体もそう遠くない未来、騙し騙し使っていかなきゃいけない時が来るだろう。これはその時の良い予行練習だ。この様にして私は「旅で大事なことを学んでいる風な自分」に酔いしれ、パンクを見て見ぬ振りをしてやり過ごした。

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