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⑲中央アジア、モンゴル・ゴビ沙漠

 そのゲルには14歳くらいの可愛らしい女の子と、その兄弟二人とお父さんとお母さんが暮らしていた。ゲルの壁となる布が一部分地面から捲り上げられていて、そこから光が差し込みいい風が入って来る。家族は突然現れた私を大歓迎してくれた。

お父さんに地図を見せながらこれまでの旅のルートを説明していると、娘が興味を持って近寄って来た。年頃の女の子にしては珍しい。村の学校で日本語を習っていると言う。彼女の笑顔は人にとても良い印象を与えた。恥ずかしがってほとんど日本語を話してくれなかったが、隣に座ってモンゴル語と英語を交えて彼女は色んなことを聞いて来た。どうやら日本の漫画ワンピースが好きみたいだ。具体的に何か言った訳では無いが、彼女が何か夢を持っているのは間違い無い様に思えた。眼がきらきらと輝いていたのだ。その夢が叶うかどうかは分からない。しかし夢を持っていることで彼女は既に一つ何かを叶えている気がした。お父さんもお母さんにも、気を遣わせない力の抜けた自然な明るさがあて、その家にはずっと良い風が通り続けていた。

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