花の窟ー御綱掛け神事(1)

花の窟神社には2月2日の春季大祭と10月2日の秋季大祭があります。「御綱(縄)掛け神事」と呼ばれます。『日本書紀』に書かれている「土俗 此神の魂を祭るには、花の時に花をもって祭る、又鼓吹幡旗を用て歌い舞いて祭る」に由来します。『日本書紀』に書かれている祭りがそのまま現在まで伝わっているとは思えませんが、少なくともイザナミに捧げられた祭りが現在も行われていることからも、「主役はイザナミ!」の祭りであることには違いがありません。しかも三山の祭りと違ってこの祭りには誰でも参加できるパートがあります。秋には「お白洲(しらす)引き」という行事が同時進行で行われます。
祭りの当日、朝10時に花火が打ち上げられ、有馬の里に号砲が響きます。神主、巫女、上り子、氏子が並んで鳥居から境内に入ります。祭りの始まりは、上り子6人が「御綱(縄)掛け神事」に使う道具を受け取り、神社の裏手より山に登り、御神体の頂上部へ上がります。御神体の上では、まずお祓いが行われ、塩で清められた後、重しをつけたロープを下ろし、境内に置かれた「御綱」をくくりつけ引き上げます。神様と繋がることができると言われ多くの人が引き上げられる御綱に触ります。神様に繋がる御綱ですから、綱をまたいではいけません。反対側に移動するときは必ず綱をくぐります。引き上げられる御綱に付けられた三流(みながれ)の旗の部分は壊れないように多くの人の手渡しで慎重に扱われます。2月の例大祭では前年に掛けられた御綱が切れずに残っていることが多く、新しい御綱と古い御綱の2本が見られます。これは縁起が良いとされます。御綱は自然に切れて落ちるに任せます。人が切って落とすことはありません。引き上げられた御綱はウバメガシの木に結び付けられ、その中に紅白の餅が入れられ、藁で編んだ紐でぐるぐる巻きにされます。御綱が結ばれている頃、氏子を先頭に御綱の先端からゆっくりと国道42号線に向かって引き出して行きます。結ばれるまでに国道の目の前まで引き、そこで合図を待ちます。国道を通行止めにして、御綱は七里御浜海岸へと引かれ、波打ち際までまっすぐに出されて行きます。上り子の指示を聞きながら御綱は煙突のような塔の凹みにかけます。御綱を左右に動かし、引いたり戻したりしながら調整して掛けるのですが、上手くいく年と時間がかかる年があります。御綱が掛かると、御綱を堤防にいる氏子さんに渡し、御綱を柱に縛り付けると終わりとなります。その後、上り子より、御神体の上から14個の餅が投げられます。それが終わると上り子も御神体から降りてきます。「御綱掛け」が終わると境内に戻り、神事が行われます。祝詞奏上、巫女4人による浦安(うらやす)の舞、豊栄(とよさか)の舞が奉納され、玉串が捧げられます。


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