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「別れの言葉」に向き合うことで

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卒業生の別れの言葉。感動しないとまでは言わないが、味気ないなと思ってしまう。きっとそれは、その台詞に子どもの思いが入っていないからだ。これまでの定型文があり、その一部を今年度用にアレンジする。そこにどれだけの思いを込めれるのだろうか。ぼくはそれが嫌で、今年度は「別れの言葉」を一人ひとりに作らせることにした。6年間をふり返り、最も伝えたいことをまとめるのだ。

最初は、字数制限なく思っていることを書く。次に66文字にする。子どもたちはそれなりに頑張って要約する。だから、出来上がった時は満足そうにしている人が多い。しかしこれでは終わらない。次の課題を出す。「ここからさらに55文字にしてください」と。これがとんでもなく大変なのだ。一つのエピソードを66文字に減らすだけでも大変なのに、さらに11文字も減らせというのだから、子どもたちからするとたまったもんじゃない。「先生無理ですよ。これ以上減らせません!」。そんな気持ちが伝わってくる。

でも、向き合わせる。ここが肝だからだ。66文字だとまだ甘さが出る。言葉が精選されていないからだ。しかし、55文字にすることによって、たった一文字を減らすために、何度も読み返し、辞書を引き、よりよい言葉がないかと探し始める。この繰り返しが、6年間の思いを55文字の中に凝縮させる。そして、子どもたち自身の腹に落ちていくのだ。こういう長く苦しい時間を越えて生み出されたものにこそ、人の心を惹きつける力があり、滲み出るものがある。

何とも非効率的で、面倒くさいことをやってるなと思わないでもない。しかし、これを乗り越えた時に、心と技術がさらに成長し、卒業生としてふさわしい姿になると考えている。

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