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Reflections on The Uses of Argument『論述の技法』省察録(2)

第2回 Preface to the Updated Edition


 
本書はタイトル頁の前にアムステルダム大学のフランズ・ラン・エメレンの前書きがある。なかなか面白い。読んでみよう。
 
The Uses of Argument, Updated Edition
 
『論述の技法』 最新版が出版された。わくわくする、みたいな文章の勢いがある。
 
A central theme throughout the impressive series of philosophical books and articles Stephen Toulmin has published since 1948 is the way in which assertions and opinions concerning all sorts of topics, brought up in everyday life or in academic research, can be rationally justified. Is there one universal system of norms, by which all sorts of arguments in all sorts of fields must be judged, or must each sort of argument be judged according to its own norms?
 
 
書き出しはこうだ。
 
1948年以来、スティーブン・トゥールミンは、我々は日常生活であれ学術研究の中であれ、あらゆる事に対して主張や意見(assertions and opinions)を述べているが、どのようにすればこれらの意見を合理的に正当化することができるのかを考え出版してきた。彼が考えてきた中心テーマは、あらゆる分野のあらゆる論述文を正当だと判断することができる普遍的な規範はあるのか、それともそれぞれの論述文は独自の規範に従って判断されているのか、であった。
(紹介中断)
なるほど。論述とそれがなりたつ仕組み、つまり論述argumentと 論述行為argumentationの研究が彼の研究テーマと言うことだ。次を読んでみよう。
 
In The Uses of Argument (1958) Toulmin sets out his views on these questions for the first time. Reacting severely against the “narrow” approach to ordinary arguments taken in syllogistic and modern logic, he advocates—-analogous with existing practice in the field of law—a procedural rather than formal notion of validity. According to Toulmin, certain constant (“field-invariant”) elements can be discerned in the way in which argumentation develops, while in every case there will also be some variable (“field-dependent”) elements in the way in which it is to be judged. Toulmin’s “broader" approach aims at creating a more epistemological and empirical logic that takes both types of elements into account.
(紹介終了)
上記の展開は以下のような感じで進む。
 
トゥールミンは『論述の技法』(1958年)の中で、三段論法と現代論理学の「狭い」アプローチで論述の妥当性を形式的に評価する方法に厳しく反応し、法律の分野での論述で用いられているような手続き的概念を使って論述の妥当性(validity)を判断する新しい方法を提唱している。トゥールミンによれば、論証の展開の仕方には一定の不変の要素(「分野不変(field-invariant)」)があり、一方、その判断の仕方には、あらゆる場合に可変の要素(「分野依存(field-dependent)」)があるという。トゥールミンの提唱する「より広い」アプローチは、この二つのタイプの要素を両方とも考慮することができる新しい認識論的経験論的な論理学の創造を目的とするものであった。
(紹介終了)
とまあこんな感じで文章は展開する。
 
本『省察録』では英語と日本語を合わせて使っていくが、上記に見るように、ここでの日本語は英語の訳ではない。英語のdiscourseを読み取り、それを日本語で書いたものである。discourseは談話と訳されるが、カタカナでディスコースとして本書では使っていきたい。意味は特定のテーマについて人と人との間で真剣に交わされる話し言葉や書き言葉である種のスタイルや意味の塊をもつものである。書籍を読む場合は語り手と読み手が書き言葉でコミュニケーションを行っている状態とディスコース論では考える。
人文・社会科学において、ディスコースとは、言語を通じて表現される形式的な思考方法を表すものである。学問の論述の妥当性は形式的な決まりでは決定されず、テーマごとに議論されているコンテキストにおいて妥当性が検証される(分野依存性がある)というトゥールミン型の論述について肯定的に説明するというディスコースが構築されていて、それにしたがって読んでいく。すると、トゥールミンの方法の独創性に読者は納得し、それが最後のパラグラフに流れていく。最後のパラグラフの英文はこうだ。
 
In spite of initial criticisms from logicians and fellow philosophers, The Uses of Argument has been an enduring source of inspiration and discussion to students of argumentation from all kinds of disciplinary backgrounds for more than forty years. Not only Toulmin’s views on the field-dependency of validity criteria but also his model of the “layout arguments”, with its description of the functional moves in the argumentation process, have made this book a modern classic in the study of argumentation.
 
論理学者や哲学者仲間からの最初の批判にもかかわらず、『論述の技法』は40年以上にわたって、あらゆる分野の背景を持つ論述行為(argumentation)の学習者に不朽のインスピレーションと議論を与え続けてきた。有効性基準(validity)の分野依存性に関するトゥールミンの見解だけでなく、論述行為プロセスにおける機能的な動きを記述した「レイアウト論述」のモデルによって、本書は論述行為研究における現代の古典となった。
 
となる。
 
さてここで、エメレンのディスコースがわかったので、さらに分解していこう
 
トゥールミンの『論述の技法』は論述行為を二つの視点から整理している。
1: 法律の分野での論述で用いられている有効性基準(validity)の分野依存性(field-dependent)の提案
2:「レイアウト論述」のモデルで論述行為(argumentation)プロセスを記述する方法の提案
 
となる。これらの提案は発表当時には論理学者や哲学者仲間から批判されていたが、その後に40年以上にわたって、論述行為を研究している人に対して『論述の技法』は大きな影響をあたえてきたのだ。
 
となる。以下読解をすすめていくにあたって、出発点は上記の1と2にあることをしっかりと確認しておいてもらいたい。
 
まとめ 
トゥールミンの論述の技法は次の二つが基本となる。
1:分野依存性(field-dependent)
2:「レイアウト論述」(“layout arguments”)

本稿終了
 
 

 

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