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#92 ワコム(6727) 2020/12/29


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       山本潤監修「グロース銘柄発掘隊」 第92号

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 山本潤氏率いる「株の学校」で、山本氏をはじめとする講師陣の薫陶を受けた精鋭アナリスト達が、成長株を発掘し、その内容を詳細にレポートします。

 毎週火曜日配信、1回に1銘柄の深掘りレポートです。


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               【目次】


■はじめに
■ワコム(6727) 客員アナリスト 小月睦
■モデルポートフォリオ 12/1更新


※本メルマガの一部内容を、億の近道へ抜粋の上掲載することがございますので、あらかじめご了承下さい。


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■はじめに


 NPO法人イノベーターズ・フォーラムのご協力により、客員アナリスト
たちのレポートの有料メルマガを提供しております。

 グロース銘柄発掘隊の隊長は東京2期生です。
 彼の指揮下、隊員たちは、週に一本のフルレポートをディープに発表します。
 どれも個性あふれるレポートです。

 投資家のみなさまにおかれましては、ぜひ、グロース銘柄発掘隊の客員アナリストたちへのご支援をよろしくお願い申し上げます。

(山本潤)


【発掘隊より】

 グロース銘柄発掘隊は、5年から10年以上の長期投資に耐えると思われる銘柄を発掘し、調査分析するものです。配信した銘柄は短期的に株価調整する場合もありますが、対象企業の前提条件が変化しない限り、問題ないと考えます。
 配信した銘柄は定期的にチェックしております。もし、前提条件が変わったりビジネス環境が大幅に変化した場合には、あらためてフォローコメントを配信致します。


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■ワコム(6727)

【会社概要】

 ◆沿革


 同社は1983年に創業の液晶タブレットやペンタブレット領域におけるグローバルリーダーです。
 創業後に世界初のコードレス・ペンタブレットを発表するなど、創業時から研究開発にこだわり、世界最先端の製品を出し続けています。

 同社は日本の企業ではあるものの国別の売上構成比を見ると日本はわずか17%と大半を海外で稼いでいます。
 創業後、大きく飛躍するきっかけとなったはアメリカ市場でした。1990年にDisnyの「美女と野獣」というアニメーション映画の制作に同社のタブレットが採用されたことをきっかけに一気にハリウッドでシェアを獲得しました。
 その後、アジア法人の設立等世界各国で規模を拡大しながら、2003年にジャスダック、2005年には東証一部に上場し現在に至ります。

 2020年3月期の売上は885億円、営業利益55億円(営業利益率6%)といった規模感です。


 ◆事業概要


 事業セグメントは大きく2つあります。「ブランド製品事業」と「テクノロジーソリューション事業」です。

 1.ブランド製品事業

 ブランド製品事業の主力製品はペンタブレットと液晶タブレットです。
 ペンタブレットとは、黒い板状の製品で、PCに接続し、Adobe社のイラストレーターやセルシス社のCLIP STUDIOといったソフトウェアを起動してイラストを書くための入力ツールです。
 同製品のユーザーはプロのイラストレーターや漫画家、アニメーターから趣味で絵を書く程度のライトユーザーまで幅広い層を対象にしています。
 また、今年に入ってCOVID-19の影響により教育現場での需要が高まっています。オンライン授業を滞りなく行うために教師側はweb会議ツールを使いながらペンタブで画面上に文字を書いて、対面で行っていた授業と比較的近い状態で教えられるように工夫しています。

 ペンタブレットは5000~6000円程度で購入できますが、ここ数年中国製の廉価版が市場に普及しつつあり、シェアを奪われている状態でした。しかし今期2Q時点では昨対で55%増と大幅に増加しています。これは、主に教育機関からの需要による底上げです。教育機関では価格以外にも、一度に大量納品が可能であるかや、納品後のサポートの充実度なども重要なため、世界各国に営業所をっている同社に声がかかります。

 液晶タブレットはペンタブレットとは異なり、iPadのような液晶画面付きのタブレットに直接イラストを書き込める製品になっています。
 こちらもプロの漫画家やアニメーターから趣味で絵を書いている人まで幅広い顧客層を抱えています。
 ペンタブと異なるのはエントリーモデルからハイエンド製品まで機能と価格帯が幅広く揃っている点です。
 詳しくはYoutubeで「液タブ 比較」とかで調べていただけるとユーザー視点の具体的なレビューを見ていただけます。
 価格帯に関しては、エントリーモデルのWocom oneやCintiq16シリーズでは安いモデルであれば4~7万円程度からラインアップされており、個人が買うのに求めやすい価格帯となっています。
 プロ仕様のCintiq Proシリーズは最高で40万円台のものまで様々なスペックの機種を取り揃えています。

 ブランド製品事業の売上は、425億円でセグメントの利益率はここ数年4%と過去の水準を見ても丁重に推移しています。過去10年間におけるデータでは最もブランド事業の利益率が高かったのは、2011年の21%です。最も良かった時期の1/5の水準まで下がっています。主な要因としてはプロダクトミックスの悪化です。
 ブランド製品事業の中でも最も粗利率が高いのがペンタブレットで4~5割が利益となります。それに対して、液晶タブレットはハイエンド製品ほど粗利率が低く高いものが売れるほど利益が出ないという状況になってしまいます。過去の業績を見てもセグメント利益率が21%を達成した2011年の液晶タブレットのブランド製品事業における売上構成比は、29%でしたが、2020年3月期のタイミングでは、47%まで増えています。
 粗利率の高かったペンタブが中国製の廉価版に押されていたこともあいまって利益水準が大幅に下がっているという状況です。


 2.テクノロジーソリューション

 テクノロジーソリューションは、サムスンやレノバ、マイクロソフトが販売しているペン付きのデバイスに対し、自社のデジタルペンに活用している技術を提供しています。グローバル企業に同社の技術が取り入れられるのは単に優れた特許を多く保有しているからではありません。同社は安定した品質の製品を大量生産できるというサプライチェーンも含めて評価されています。
 いくら世界的なハードウェアメーカーであってもペン付きの製品を出すのは一筋縄では行きません。中途半端な状態で製品を世に出せばリコールといった事態に陥りかねないからです。同社はペン付きのタブレットを作り続けて40年弱になります。ノウハウ、生産体制、流通も含めてここまで安定した品質の製品を提供できる企業がいないのです。
 サムスンにデジタルペンの技術を提供し始めたのは10年前になります。
 ペン付きのスマートフォンで唯一成功しているGalaxy noteに同社の技術は使われています。サムスンで実績を作った後は、サムスン依存から脱却するためのヒューレット・パッカードやレノボ、Google、Microsoftを始め世界トップクラスのハードメーカーを相手に技術を提供し始めました。
 10年前はわずか60億程度であった売上は2020年には450億円と主力のブランド製品事業と肩を並べる規模になっています。粗利率は約20%程度でセグメント利益率は15%以上をかねがね維持しています。

【成長ドライバー】

[オンライン授業の普及によるペンタブの販売拡大]

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