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#47 ファンデリー(3137) 2020/02/18

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       山本潤監修「グロース銘柄発掘隊」 第47号

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 山本潤氏率いる「株の学校」で、山本氏をはじめとする講師陣の薫陶を受けた精鋭アナリスト達が、成長株を発掘し、その内容を詳細にレポートします。

 毎週火曜日配信、1回に1銘柄の深掘りレポートです。


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               【目次】


■はじめに
■ファンデリー(3137) 客員アナリスト 影沢おはぎ
■モデルポートフォリオ


※本メルマガの一部内容を、億の近道へ抜粋の上掲載することがございますので、あらかじめご了承下さい。


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■はじめに


 NPO法人イノベーターズ・フォーラムのご協力により、客員アナリスト
たちのレポートの有料メルマガを提供しております。

 グロース銘柄発掘隊の隊長は東京2期生です。
 彼の指揮下、隊員たちは、週に一本のフルレポートをディープに発表します。
 どれも個性あふれるレポートです。

 投資家のみなさまにおかれましては、ぜひ、グロース銘柄発掘隊の客員アナリストたちへのご支援をよろしくお願い申し上げます。

(山本潤)


【発掘隊より】

 グロース銘柄発掘隊は、5年から10年以上の長期投資に耐えると思われる銘柄を発掘し、調査分析するものです。配信した銘柄は短期的に株価調整する場合もありますが、対象企業の前提条件が変化しない限り、問題ないと考えます。
 配信した銘柄は定期的にチェックしております。もし、前提条件が変わったりビジネス環境が大幅に変化した場合には、あらためてフォローコメントを配信致します。

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ファンデリー(3137)

【会社概要】

[小売業から製造小売業へ]

 製造小売業(SPAモデル)とはアメリカの衣料品小売大手GAPのドナルド・フィッシャー会長が提唱しました。1986年に発表した「Specialty
store retailer of Private label Apparel」の頭文字を組み合わせた造語で、製造から小売までを統合した最も垂直統合度の高い販売業態です。
 日本ではユニクロ(ファーストリティリング)やニトリ、飲食業界では塚田農場(エーピーカンパニー)などが導入しています。素材調達から開発、販売までのすべての工程をひとつの流れとしてとらえ、サプライチェーン全体のムダ、ロスを極小化するビジネスモデルと定義されます。
 自社の考えを反映した製品を安価に提供できるというメリットがある反面、工場などの製造設備を必要とする為リスクも大きくなります。

 時価総額100億以下の企業が50億円の投資をして製造小売業に変革しようとしています。
 この企業の追い求めるSPAモデルとはどういったものなのでしょうか?


 ◆概略

  ファンデリーはメディカルフードデリバリー(以下MFD)事業、マーケティング事業の2つのセグメントを持つ会社です。


 ◆MFD事業

  メディカルフードの宅配セグメントです。
  メディカルフードとは
  「通常の食品若しくは特定の栄養素の摂取、消化、吸収、若しくは代謝の能力に制限又は障害のある患者、又は通常の食事の改良だけでは対処できない他の特別な医学的に決められた栄養素の条件がある患者のために、特別に調製及び加工されている。」
  とFDA(アメリカ食品医薬品局)では定義されています。
  主に「食事療法が必要な方に塩分、カロリー、たんぱく質等を抑えて提供する食事」、「咀嚼困難な方が食べられるように柔らかく加工した食事」というものをイメージして頂けると良いと思います。

  現在国内で食事制限が必要な対象者は数多く存在します。
 ・高血圧症有病者と正常高血圧者の合計は5,000万人超(約2人に1人)
 ・糖尿病が強く疑われる者と可能性を否定できない者の合計2,000万人超(約4人に1人)
 ・脂質異常症が疑われる人は4,000万人超(約5人に2人)

  こういった食事制限が必要な人に対して栄養士が開発した冷凍の健康宅配食を提供するのがMFD事業です。
  この事業の特徴は販売チャンネルです。
  病院で健康宅配食のカタログ「ミールタイム」を医師、栄養士の方から必要な方に紹介してもらいます。
  これを紹介ネットワークと呼びます。

  このミールタイムというカタログは面白い特徴があります。
  食品に含まれる脂質や糖分が写真付で紹介されているなど、ちょっとした教科書のようになっています。
  高血圧や糖尿病には医療行為に加えて食事指導もする必要があります。
  毎回の食事指導には教材が必要になります。この教材に使って貰えれば手に取ってもらえる機会が増えるのではないか?こういった狙いから生まれたカタログなのです。
  双方にメリットが生じることから紹介料などは発生しません。

  現在は仕入れ先に栄養士が開発したメニューを製造委託し、仕入れ、販売する業態です。
  この事業の投資として新工場を設立し、SPAモデルへと事業を成長させようとしています。


 ◆マーケティング事業

  1.ミールタイムの紙面広告枠の販売
    カタログ「ミールタイム」の紙面広告を販売する業態です。
    3、6、9、12月にミールタイムが発行されます(薬局向けミールタイムファーマは3、9月の年2回)
    その広告枠を販売します。

  2.紹介ネットワークを利用したサンプリング等の業務受託
    この事業は食品メーカー等の健康志向の試供品提供のサポート業務です。試供品の提案があるとファンデリーは紹介ネットワーク約22,000箇所に紹介します。
    およそ500~1,000の希望機関に試供品を無償で送付します。
    その試供品を医療機関が必要であると判断した方に提供してもらいます。医療機関から感想などのフィードバックをもらい、食品メーカー等に提供します。

  この2つの業態です。
  MFD事業同様、カタログ「ミールタイム」と紹介ネットワークを基幹としたビジネスであり双方の相乗効果が見込めます。
  こちらは営業利益率の非常に高いビジネスです(2019_3月期73.7%)


 ◆利益構成(2019_3月期)

  ・MFD事業
   売上高2,975百万円(売上構成比88%)
   営業利益741百万円(利益構成比71%)
   営業利益率24.9%
  ・マーケティング事業
   売上高419百万円(売上構成比12%)
   営業利益309百万円(利益構成比29%)
   営業利益率73.7%
   ※“全社費用”を除く


[経営者と沿革]

 ◆人と向き合う仕事とは

  代表の阿部公祐氏は損害保険の会社出身(現楽天損保)であり、代理店を設置する業務にあたっていました。
  既存の保険会社のシェアを奪うためには経営層への営業が必要であり、経営者に対する営業をする過程で経営者を志します。
  人と向き合う仕事は何か?と考え衣食住の中で最も人と向き合えると考え、食の事業で独立を決意します。
  2000年9月にカウンセリングデリバリー事業で独立しました。
  これは栄養士が顧客の自宅へ食材とレシピを直接届け、お届けの際にカウンセリングをしてくれるサービスでした。
  営業効率の悪さからこの事業は思うように成果が上がらず、事業は失敗しかなりの窮地に追い込まれます。
  そんな中で需要があった療法食を冷凍でやろうと決まります。

  この療法食が必要な人が集まる箇所は病院であり、そこにカタログを置いてもらうためにどうすれば良いか、そんなアイデアからミールタイムがスタートします。
  この医療機関が栄養指導する際の教材にしようというアイデアは多くの医療機関に受け入れられます。
  2003年9月に事業立ち上げ準備がスタートし、実際に販売がスタートする2004年4月までに紹介ネットワークは1,000箇所を超えていたそうです。
  この時点での従業員はほんの数名でした。
  このスピード感に阿部氏の行動力が見て取れるのではと思います。

  食といえば栄養士であると考えており、栄養士の立場向上も経営理念にあるようです。
  商品も栄養士が開発し、営業も栄養士の観点からのプレゼンが可能です。
  栄養士の紹介動画も用意されており、ひとりひとりに対してしっかりと役割があるように思えます。

  スタートした際は他社商品の仕入れ販売も行っており1食800~900円程度でしたが、自社開発の食品に切り替えを進め1食あたりの価格は現
  在と同水準まで下がります。
  そこからさらに売上げが拡大、テレビに取り上げられるなどの反響でさらに認知度を増し現在に至ります。
  2015年に東証マザーズに上場しました。
  上場した理由には新工場設立への強い思いがあるようです。
  SPAモデルへの強い思いが取材からも感じ取れました。
  このSPAモデルへの変革には経営者の強いリーダーシップが求められます。
  全社をあげてこの新工場立ち上げに取り組む様子からそのリーダーシップは発揮されている、そういう印象を受けました。

【ビジネスモデルと競合優位性】


 ◆MFD事業

  健康宅配食の販売高が収益です。
  紹介ネットワークを介し、顧客にカタログを提供し、注文を受け、製造を委託し、仕入れ、宅配で販売します。

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