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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」東北特殊鋼(5484) 2012/04/03

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        石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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            ◆Contents◆

  ◇銘柄研究「東北特殊鋼(5484)」
  ◇コラム 大型株が調整し、中小型株が急速に上昇する現実を念頭に

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◇銘柄研究 東北特殊鋼(5484)

 本日は、1937年(昭和12年)創業の、自動車部品を主力とする特殊鋼事業と、仙台市の中心部で西友をテナントとするショッピングセンターなど不動産事業を2本柱とする、東北特殊鋼を研究銘柄として再度取り上げます。

 東北特殊鋼は、製造部門でも不動産部門でも東日本大震災の被害を蒙り、タイの大洪水の被害も受けました。

 しかし、東日本大震災の特別損失の約7億円は2011年3月期に計上を済ませました。そして、2012年3月期は自動車部品の低迷などで大きくアゲインストの風を受けたにもかかわらず、経常利益の段階では、すでにリーマンショック前の業績を確保する勢いです。

 更に、東日本大震災の影響から、タイのチョンブリ県ピントン工業団地内に子会社を設立し、海外生産をスタートする方針を2011年6月16日に開示しました。

http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr2/tdnetg3/20110616/6x50pw/140120110616058596.pdf

 チョンブリ県ピントン工業団地内はタイの東部に位置しており、2011年10月に起こったタイの大洪水の被害は無く、多くの日本企業が同団地内での代替生産を行なったようです。

http://www.newsclip.be/news/20111129_032915.html

 タイの洪水被害の復興で、現地の建設業などの力が注がれたために、東北特殊鋼の工事の進捗に若干の遅れはありましたが、2012年の5月には生産をスタートできる見込みのようで、ホンダなど日系自動車メーカーの生産が2012年4月からスタートすることから、タイミング的にはベストに近い状況だと考えます。

 他方、東北特殊鋼は、2010年に仙台市のショッピングセンターの隣地に10,007.21平米の土地を1,278百万円で取得しました。ショッピングセンターの増設などを予定していたのだと考えます。しかし、東日本大震災の被災と原子力発電所の大事故を受けて、タイに生産子会社を設立することを決定すると、ほぼ同時期の7月8日に、購入したばかりの土地の3分の一である3340.16平米をマンション業者にマンション用地として売却し、残りの6667.05平米を住宅展示場として、契約期間平成24年4月~平成29年3月(予定)で賃貸しました。

 土地の売却により約5億円のキャッシュを取得し、売却益も77百万円計上しています。このキャッシュはタイの子会社の工場新設などに振り向けられるものと考えられます。

 東北特殊鋼の経営陣の決断と行動の速さに加え、タイの子会社設立の場所が洪水の被害の無い位置に立地しているという、企業としての運のよさも感じられます。

 この後に確認しますが、東北特殊鋼は別に2010年に取得したばかりの土地を売却しなくても、すでに過去の利益から現・預金や短期有価証券、投資有価証券などの現金性資産を大量に保有している企業です。しかし、東日本大震災の影響を読みきれず、日本国内での電力不足が想定されたため、ショッピングセンターなどの増設まで新規で取得した土地を遊ばせることなく、一部処分し現金化して、残りの土地を住宅展示場用地として賃貸収入を増やすことにする。そして海外生産子会社を設立する。

 東日本大震災の後で、日本の政治が迷走している初期の3ヶ月程度で、スピーディーに経営戦略を立案して、実行したことに凄みを感じます。

 東北特殊鋼は、リーマンショック後にも赤字化しない強い収益力を持っている企業です。その安定的な収益力の根源は、西友に賃貸しているショッピングセンターで確保している不動産事業収入です。

 この不動産賃貸事業は、東北特殊鋼の不動産管理部門である東特エステートサービスが、旧長町工場用地を再開発し、建設したショッピングセンター「ザ・モール仙台長町」を合同会社西友に賃貸するとともに、ビルメンテナンス業務等を請負っている事業です。

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