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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」安田倉庫(9324) 2015/10/06

※このレポートは2015年10月に作成されたものであり、企業情報や数字等は当時のものです。またリンク先の変更によりリンク切れの場合があります。あらかじめご了承の上お読みください。

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        石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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            ◆Contents◆

 ◇銘柄研究 安田倉庫(9324)
 ◇コラム 機関投資家と違い1年毎の運用成績で縛られない事を活かす
 ◇期間限定コラム バランス・シートを読むための簡単な知識(6)

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◇銘柄研究 安田倉庫(9324)


 本日は、1919年(大正8年)に創業された総合物流企業の安田倉庫を研究銘柄として取り上げます。

 総合物流企業である安田倉庫は、1919年の創立以来、大消費地である東京・横浜を中心に拠点を展開し、顧客の物流効率化をサポートして成長している企業です。

 現在では、首都圏、関西圏に19ヶ所の物流拠点(=東京・横浜を中心とする首都圏に16ヶ所、関西は大阪に3ヶ所)の物流拠点を配置し、倉庫スペースの提供のみにとどまらず、商品の流通加工から全国配送まで、豊富な実績、ノウハウで顧客の物流ニーズに応えています。これは同業者のなかでもトップクラスの数です。


 いまや倉庫業は、単にモノを保管し輸送するだけのサービスではありません。たとえば、品質検査・商品の銘入れ・セット組み・梱包・包装・返品処理など、倉庫ではさまざまな流通加工作業が発生します。

 つまり安田倉庫は、「倉庫」を集中するモノや情報を迅速かつ正確に処理・加工し、物流をコントロールするクリエイティブな場として考え、それに最も適した立地として首都圏を中心に拠点を配置しています。

 一方、配送においても、商品特性や輸送条件に合わせた最適な輸送手段を選択し、俊敏に安全に対応することが求められています。首都圏については安田倉庫グループの自社直送体制にて配送、全国配送については提携業者の中から最適な配送サービスを選定します。


 このように、サプライチェーンを支える総合物流企業として、好立地の物流センター群を基盤にロジスティクスを一括提供しているのが安田倉庫の現在の姿です。


 一方で、輸出入に関わる海外・国際物流業務にも力を入れており、中国には上海・天津に、ベトナムにはハノイに現地法人を、北京・香港・ハノイには駐在員事務所を展開しています。平成24年には、インドネシアのジャカルタに駐在員事務所を開設し、成長著しいアジア地域の物流サービスで成長することを狙っています。

 企業の生産拠点が、アジアを中心とした海外にシフトしている現状に対応して、安田倉庫では世界的なネットワークの確立を目指しています。日本から現地に、現地から日本へ、いずれも引取から国際輸送・税関手続き、配送・据付まで一貫した物流サービスを展開しています。

 特に衣料品関連が多い中国や東南アジアとの輸出入では、材料輸出から製品輸入まで安田倉庫オリジナルのハンガーコンテナによる輸送システムが高い評価を得ています。

 このほか、液体貨物をはじめ医療機器、精密機械、プラントなどそれぞれの物流特性に合わせたきめ細かな対応で、質の高い国際輸送サービスを実現しています。

 また、輸送においても陸海空と多彩な輸送手段を一元的にコーディネートする複合一貫輸送サービスを提供しています。これらの業務を、海外各地の物流事情・貿易実務・法規制等に詳しい、豊富な専門知識を持った現地スタッフが責任を持って完遂していきます。

 さらに、輸出入申告・通関手続きなど輸出入に関連する事務業務についても、総合物流企業として蓄積された知識と経験を活かし国際輸送センターが中心となってフルサポートしています。

 不動産事業では、資産を有効に活用するために、既存の物流施設と都市環境の調和にも配慮しながら、地域の再開発を行っています。首都圏にある拠点のスクラップ&ビルドによって、積極的な地域開発を推進しています。

 安田倉庫が基盤をおく首都圏は、不動産開発・有効活用において大きな可能性をもった地域といえます。なかでもベイエリアは近年とくに注目され、オフィスビルやワークショップ、賃貸マンションとして生まれ変わっています。

 安田倉庫でもこの流れをいち早く察知して、周辺環境との調和を図りながら、所有する物流施設用地の用地転換や高度利用による既存不動産の有効活用を図っています。

 たとえば、港区海岸にある「ピアシティ芝浦ビル」は、地上16階・地下3階のオフィスビルで、高層階は総戸数48戸の賃貸マンション(「ピアシティ芝浦ハイツ」)として活用しています。

 また、横浜駅西口地区では、関係会社の安田ビルとともに、周辺地域の発展に歩調を合わせながら着実な再開発を行い、大きな成果をあげています。さらに、グループ内のビル管理専門会社により、設備管理から内装工事、警備・清掃までを総合的に行うビル管理サービスも提供しています。平成20年3月には、北海道・函館の自社倉庫跡地にホテルを建設しました。

 こうした技術や経験、ノウハウを内部に蓄積していくことで、他社にない高いレベルのビル管理サービスを実現しています。


 まず、本日の研究銘柄として安田倉庫を選んだ理由を説明します。


1.安田倉庫は、含み益が大きな賃貸不動産や自社使用の土地を保有していること。

 安田倉庫の時価総額は10月2日の終値915円(30,347,628株)で計算すると277.7億円です。

 1)賃貸不動産
  2015年3月期の有価証券報告書に開示されている、安田倉庫の賃貸不動産の簿価は281.48億円です。時価は455.15億円です。

  賃貸不動産の含み益は173.67億円です。

 2)自社使用の土地
  安田倉庫の自社使用の倉庫などは、地区ごとにまとめて開示されているので、自社所有の倉庫などの時価は推計できません。しかし、土地簿価21
  1.6億円+建物及び構築物の簿価294.0億円=505.6億円に対する賃貸不動産の簿価281.48億円の比率は55.67%です。残りの44.33%の自社使用部分にも、賃貸不動産と同様に大きな含み益があると予想されます。

  例えば、東京都の芝浦営業所に所属する倉庫の底地の面積は26000平方メートルで簿価は2.91億円です。全てが芝浦営業所と同じ場所の物件ではないかもしれません。しかし芝浦営業所の近隣公示地の価格は1平米当たり885千円です。かなり大雑把な試算ですが26000平米×885千円=230.1億円という数字が出てきます。

  もともと倉庫業でスタートした企業ですから、自社使用の倉庫などの取得時期も早いことが想定されます。

  不動産の時価を考えると、安田倉庫の資産価値は時価総額に比べて、非常に割安であると考えて良いと判断します。


2.安田倉庫は膨大な投資有価証券を保有しています。

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