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セビージャひるね暮らし(26)

※2021年の記録です。

10.11 月 晴れ España旅行第26日目 Sevilla→Madrid

 6時台に目覚めるが、何とか二度寝。7時過ぎよりベッド内でゴロゴロ。

 8時14分に活動開始。トレーニング。完成! セビージャ滞在中のトレーニングは満了である。

 8時半開店のマス(スーパー)でパン0.20を1個。「20センチモのパン」のつもりで「20」と言ったら、20個と勘違いされ、1個2個と数え始めたのでプチ焦った。

 朝食はハモン・イベリコのボカディージョ、カフェ、オリーブオイルを少しかける。これで冷蔵庫はからっぽ。エンサラディトス(塩豆)ちょっと残して捨てた以外、すべて食い尽くした。グローリア差し入れにはホント助かった。

 10時過ぎにアパルタメントを出る。アントニオに鍵を返してチェックアウト完了。ムーチャス・グラシアスと握手してバイバイ。「コルテ・イングレス」(老舗デパート)前のタクシー溜まりへ。サンタ・フスタ駅までイッキにバモース。運ちゃんとセビージャええとこやねー的話。スペイン語うまいって褒められたぞ。つか、チノがスペイン語話すってだけで「びっくり」なんでしょう。4.97。5札持ってりゃパッと渡して終わりだったのだが、10札でお釣りもらう。ちゃんと0.03まで戻してくれた。つか、チップには少なすぎる。スーペルメルカドの袋2枚分じゃねー。

 で、10時20分にはサンタ・フスタ駅。これから4時間ちょい、ベンチに陣取って、ひたすら執筆に励むですよ。

 何日間セビージャにいたんだろ? 9+7+7の23日間か。ホントは24日間いる予定が、1日到着がズレた。それももう夢のように昔に思える。アパルタメント3つ渡り歩いて、借りものながらも「暮らし」だったと思う。誰かに訊かれたら「セビージャ住んでた」って言えるよな。

 毎日よく歩きまわったもんだと思う。中心部は「観光」でお馴染みだったが、川向こうのトリアナや北のサン・ロレンソは、住まなきゃ分からなかったエリア。と、自分、セビージャ何回目なんだ? 最初に嫁さんと来て「黄金の塔」の近くに泊まったよな。2度目が早期退職後1回目のスペイン長期旅行で、セタス近くと「シェルペス」に泊まった。2回目のスペイン長期旅行じゃ来てないんだ。マドリとバルセローナだった。てことは3回目か。意外と少ない。

 ああそうだ。クルマ旅行の時は、旧市街に入り込みたくないんで、トレドみたいに旧市街小さ目の町を専ら訪問したように記憶する。トレドは丘がそのまんま旧市街(ちうか城市)になってて、丘の下に馬鹿でっかい駐車場があった。こういう町ならクルマ平気なわけですよ。その流れでセビージャは忌避したんだっけか。

 今回のセビージャ滞在の最大の特徴は「観光ゼロ」だったこと。カテドラルも闘牛場もロス・ガジョス(老舗のフラメンコ・タブラオ)もどこも行ってない。正確には、金がかかるところには一切行ってない。無料のところだけ。スペイン広場とエルクレス公園とグアダルキビール河川敷。そもそも、金遣うのはスーペルメルカドがほとんど。他に1日1回程度のバル。ロサ&グローリアとのお食事2回以外、レスタウランテは3回のみで、3回とも「東海城」。ホント狭い世界で暮らしてた。いや「暮らす」ってそういうことなのよ。同じことを飽きること無く繰り返す。

 駅で3時間待って、2時間半かけてマドリなら、6時間半の長距離バスとさほど変わらんかったかなーとも思うが、かといって駅以外の場所でスーツケース抱えて過ごすってのも何だし。預けようにも、日本みたいにコインロッカーが無いんだよな。爆弾テロを警戒してるからかも。そういや、ずーっと昔に嫁さんとコルマール行った時だったか、駅のコインロッカーが全て封鎖されてることがあった。あれが「初めてのフランス」で客の利便性への配慮ゼロにあきれたことがあったっけ。今はもう、そのくらいじゃ別に驚かない。世界的に見て、日本のサービスの行き届きぶりが異常すぎる。そう感じている。

 で、駅のベンチに座っている「旅情感」が、これはこれで貴重なものであり、行き交う旅人の姿を眺めているだけで風情を感じる。ちっちゃい子らが旅行で高揚して元気いっぱいで走りまわり、爺ちゃん振り回されてるなー、とか。どっから来たねいちゃんたちだろうか。タッパでかいからドイツ人か。胸もリュックも馬鹿でかいなー、とかさ。季節のせいか、服装がさまざまなのも興味深い。秋を越えて「ほぼ冬」の婆もいるし、Tシャツバミューダサンダルの、昨日までの自分みたいなアメ公(仮)もいる。上半身タンクトップ…というか、胸に一巻きしてるだけで、肩もヘソも丸出しのマハなおねいちゃんもいる。タトゥー入りの。

 タトゥーはしかし、溢れかえっているよな。特に若い衆。前にも書いたが、これはハッキリ世代差があると思う。ロサ&グローリアにも確認した。グローリア自身はもちろん、旦那も息子娘も入れてないが、甥姪は入れてる、と。でもほんのペケーニョ(小さいの)よ、と言う調子からして、爺婆世代はいかがなものかと感じているらしいと分かった。グローリアは教会の日曜学校の先生もしてるというから、宗教的なもんもあると思う。真っ当なカトリックが入れるもんじゃない。海賊や南の島の土人じゃあるまいし、的な。

「プエルタ・デ・ラ・カルネ」(バル)でサッカー中継観てたら、大半の選手がタトゥー入れてる。日本じゃボクシングの誰だっけ? タトゥー入ってちゃリングに上がれないってんで、ドーランみたいなのを厚塗りして試合に出てて、汗でちょっとずつ流れて、タトゥーがうっすらと見えるようになって、なんてのをテレビ中継して「良識派」の眉をひそめさせていたっけが、若いスペイン人からしたら、アホかいな状態だろう。若い日本人もそうかも。ま、あと10年も経ちゃ、日本でもタトゥー入り若い衆が当たり前の風景の一部になってて、そうなっちまったら、プールも温泉もタトゥー無問題になるんだろうね。

 そういや日本人の「茶髪」も出始めの頃は違和感ありまくりで、まして「金髪」なんざとんでもねえ、だったのたが、今じゃ当たり前の風景になっている。ピンクや青や緑など、人類にありえない髪色を見て、初めてちょっと驚くくらい。それもまあ「ああ、初音さんですか」「まどマギですか」と「納まって」しまうわけで。

 14時15分を回ったのでホームへ。ビジェテのバーコードをスキャンしてもらって下に降りる。セキュリティはすで行列だった。その先でもっぺんスキャン。パスポート確認があると思って用意していたのだが「持ってる」のをチラッと見ただけで確認はされなかった。で、席…6号車の4A窓際…に行ったらご家族だかご町内だかの爺婆集団がいて、まとまって座りたいので席換えてくれ、と。オケーオケーで一つ後ろの席へ。爺婆の言葉スゲー分かりやすい。年のせいじゃない。たぶん、マドリ弁だからだ。「リオハ」(バル)の常連とアントニオの会話がほとんど分かんなくて、多分に萎れていたスペイン語力の自信回復(笑)

 2分遅れで発車した14時47分。

 と、何か停まったぞ、の15時13分。ビネ用ブドウ畑…ビーニャの真ん中。前の爺は「もうコルドバかー?」と冗談言ったり、「モーター壊れた?」など口が減らないことおびただしい。あ、ようやっと動き出した、の15時19分。何なんだ? ちょっと前に反対方向の列車が行ったけど、Ave(アベ。スペイン新幹線)って単線なの? 走り出したけどじぇんじぇん遅いぞ。やっぱ何か故障? 嫌だねえ。と、前の婆が電話してるが、ほぼ100パー聴き取れる。明日の午前中にアントニオさん御一行が家に来るんだってさ。

 やっとこさAve的速度になったか、の15時半過ぎ。

 コルドバ停まって出たーの15時45分。セビージャから30分だから多分遅延はない。行きの長距離バスじゃコルドバから1時間以上かかったことを思えばAveは速いわ。後はマドリまで一瀉千里である。ああ、セルベッサ飲みてえ。この時刻まで「乾いて」いるのは久しぶりであるし。

 爺婆団体は総勢6人。自分と席交代した婆含めて4人と、後ろの9番に座ってた爺婆。コルドバ出た時点で「空席」が確定した2番に移ってきた。いいねえ、皆さんご一緒になれて。

 こういうのも極めてスペイン人的であるように思う。ドイツ人だったらバラバラのまんまそれぞれの席に座ってたんじゃないか、と。

 セルベッサはともかく喉が渇いていた。折良く車内販売が来たので水を買う。2エウロス。正気か? 「Cabreiroá」(読めましぇん)とある。ガリシアの天然ミネラル水だとさ。味は…別にどうってことない。水道と変わらんですよ。

 今17時05分。後10分であるかな。ふと思ったんだが、マドリはセビージャよか物価高いよな。以前の実感で1.5倍。自分一人はいいんだが、ゴンサロの前でいちいち驚かないように気をつけよう。「お高い町にお住みで」的なニュアンスが出ちまうからにゃー。

 無事にアトーチャ駅到着。5分遅れくらいだったか。メトロまでスーツケースコロコロ。けっこう距離がある。途中「動く歩道」があったりして、空港みたい。で、グランビアまでの電子ビジェテをカードに入れたんだが、相変わらず分かりにくくて初見殺し。いや、そこそこ以上にスペイン語分かって、現に何度も地下鉄乗ってる自分が分からなくなるんだから、どっか根本的なところに「壁」があるんだと思う。

 思い出しながら書くと、カードを入れろ、と表示が出る。入れる。そこまではオケー。すると「ナンチャラのビジェテを持っている」と「持ってない」の選択肢が出る。そのナンチャラが分からない。スペイン語の問題じゃなく、ナンチャラを知ってるか知らないかの問題。さらに「持ってない」の選択ボタンが色違いで二つある。ここで「詰む」だろ。そんで「簡単モード」にして「持ってないボタン」のどちらかを押すと、1回か回数券か、と聞いてくる。1回にして、駅の名前をアルファベット拾いながら入れてって、そんでようやく金額が表示されるので、コインなり札なりを投入する。札も入るしお釣りも出るのは、昔に比べれば長足の進歩(笑) このシステマ作った奴が誰かは知らんが、マドリ以外に住んでる親戚の爺か婆を連れてきて、できるかどうかやらせてみたら良かったと思う。できないに1万エウロス賭ける。

 とまれグランビアへ。地上は凄い人出。セビージャが閑散としてたわけじゃないが、次元が違う。で、道がメチャ広い。クラクラする。いきなり「スケール」が変わった感じ。オテル・カタロニアは駅近で、ついこないだ行ったばかりなのに「こっちだったっけ?」「こんな距離があったっけ?」と確信がゆらゆらする。セビージャのコンパクトさに慣れきっていたからだ。

 で、チェックインした。前と同じねいちゃんだったから、爺また来たか、とサクサク進むかと思いきや、前以上に馬鹿ていねい。隣りのメガネの子が「研修中」で、その指導も兼ねてやってんだな、と察する。とまれ、クレカで支払い、封筒に入ったレシートを貰う。…前はこれをくれなかったのを思い出した。チェックアウトの際に言ったら「あらためてコピーが必要ですか?」てなことを言ってプリントしたんだ。先輩ねいちゃんも熟練とはほど遠いのでは? ちなみに3泊294.30。ゴンサロ割引が1割くらい入ってるっぽい。ありがたいことである。

 部屋に入ってwifiを繋ぐ。ゴンサロにメールをしたためる。

¡Hola Gonzalo,buenas tardes!
こんにちは、ゴンサロ
He vuelto a Madrid de Sevilla,y he hecho Check-in en el Hotel Catalonia Gran Vía ahora mismo.
セビージャからマドリに戻ってきて、オテル・カタロニア・グランビアにたった今チェックインしたところ。
Estaré aquí hasta el 14 de octubre por la mañana muy temprano,y volaré a Japón en avión a las 13:30 del 14.
ここに10月14日早朝までいます。で、14日13時半の飛行機で日本に帰ります。
Yo no tengo planes en Madrid excepto una prueba de PCR.Puedo verte en cualquier.マドリではPCR検査以外の予定はありません。いつでも君に会えます。
Enseñame tu plan por favor.
君の予定を教えてください。
Un abrazo,
敬具

 スペルチェック的な機能を使ったら、文法的に正しく書けたように思う。

 で、買い出し出立。ここで初めて「使えた」のがGoogleMapだ。「食料品店」のフラグを立てたら、最近の「ディア」を表示した。おけーおけー。「マス」か「ディア」さえあれば、スペインで暮らしていける。で、行ったら店内は若いドイツ人多数。そうだよな。考えることは同じだよな。赤ビノ3.35とパン、ハモン、ケソ(カマンベール)、缶セルベッサ4缶で9.80。セビージャと変わらない。いい感じである。

 帰オテルして格納。再出立。そうだ一つ忘れてたと「ディア」再訪してウオトカ購入。アブソリュート12.65。「必需品」にはちゃんと金を遣うのだ。

 そのままパセオへ。時刻は19時40分くらい。プエルタ・デル・ソルまで歩いてみる。広場はすんごい人出。セビージャとは次元が違う。クラクラクラ。夕焼けがキレイだったので写真を撮る。で、適当歩いたら四角い広場へ。マジョール広場だ。こっちも人いっぱい。テラサ席大繁盛。この広場のすぐそばの安宿に泊まって、広場のバルで、でっかいキノコを使ったピンチョ食ったら旨かったんで、ねいちゃんに「これなんてキノコ?」と訊いたら、わざわざ厨房まで確認しに行ってくれて、戻っきて見せてくれた紙に「setas」(セタス=キノコ)と書いてあったんだ。思い出したよ。

 で、どっかで軽く一杯、と思ったのだが、人が溢れてて、その多くがドイツ人で興が削がれる。ごめん。でも、カラマレスが看板のバルに行列作ってんだぜ。イカ天食うのに並ぶってか。信じられんですよ。つか、バルに並ぶか? 混んでたら別のとこ行くだろフツー、と。

 ここで「帰オテルが正解」と悟るのが成長した自分。オテルに戻り、買い出したブツで始めたザマスよ、の20時半。

 まだちゃんと冷えてない缶セルベッサでも十分すぐる。セビージャのアパルタメント3番目の隣のチノ食品店で買ったポテチの残り。パン。ハモン。カマンベール。そんで赤ビノ。ウオトカ水割り、とご発展中の21時58分でござるよ。

 マドリにいる間も観れるだけ観よう、とNetflixジブリ鑑賞。「千と千尋」だ。この作品の一番凄いのは出だしの十数分。「日常」から「異界」へとイッキに持っていく。夜の海を満艦飾の船が渡ってきて神様が下船していく下りは圧巻だ。その分「会話」は少なく、スペイン語勉強にはイマイチであるな。

 マドリはセビージャとは一桁人の多さが違う。さらにセビージャでは珍しかった「一人」がそこかしこに散見される。なるほどこれが「都会」レベルちうこと。東京は、さらに「都会」なんだろう。

 ジブリ作品観て、これだけは確実に覚えた言い方。「Date prisa」(ダテプリサ= 急いで) しょっちゅう出てくる。も一つ「venga」(ベンガ=来て)はtu話法でも定番だということ。正しくはven(ベン)だが、ちっちゃい子にしか言ってない。友達相手ならvenga。闘牛に対してもvenga。gaが付いた方が語調がついて、言葉として言いやすいちうこともあるように思う。そうだよな。高坂アニメにしても「ベンガベンガベンガベンガー」だからサマになるわけで、「ベンベンベンベン」じゃ口三味線だ。こういうのも「生」じゃなきゃ分からんこと。

 アンダルシーア弁ナメてたのは反省事項。語尾が違うとか「知識」として知ってはいたが、実際「分からん」とまでは思ってなかった。カステジャーノ(カステラ語=いわゆるスペイン語)話者には分からんから「弁」なわけだよ。

 言葉というのはしかし面白い。そもそも日本語以外何も知らなかった頃は、英語ができれば世界中どこでも100パーコミュニケート出来ると思ってた。「出来る」は当たってたが、せいぜいで10%。英語圏で暮らすんでなきゃ、英語極める必要はないと分かった。もっと学びやすく、「普遍」に近い言葉があると分かった。それがスペイン語。学んでて心底楽しい。それが英語や、学生時代に2年間やって死ぬほど嫌いになったフランス語との最重要な相違点。スペイン語は楽しい。

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