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AIが書いた小説『スカイフック』第15話 強いられた投げ銭

名古屋市街の東のはずれにある村雲小学校の校庭に入ってきた国武中将らは、校庭の隅にある巨大なマグロのカマを立てて盛り付けたような撃墜されたB29の残骸と、傍らに並べてある念入りに作られた案山子の様な米兵の二つの死骸に目を見張った。

見る見るうちに、国武中将の表情が柔らかくなった。

今年(1945年)、1月14日に宇治山田市が空襲を受けて、伊勢神宮も被弾し、かなりの損傷を受けた。これには、さすがに参った。上層部から、かなりのお叱りを受けた。防空体制そのものを疑問視する声も上がった。迎撃できる戦闘機もパイロットも、枯渇している状況で、夜間の空襲ともなると、もうお手上げであった。

その中での今回の快挙であった。

諸手を上げて喜びたかった。取るものも取り敢えず、大阪を抜け出してきたのだった。

それと、今回の名古屋視察には、もう一つ別の目的があった。民間人の国威発揚を促すという意味合いもあったのである。今年に入っては、空襲の目標は見境がなくなり、先般の宇治山田市のように市街地までも攻撃する様になってきた。当然、民間人にも影響が及ぶ。その民間人の不安、恐怖を他に向けさせる必要があった。そのため挙国一致となって本土防衛の為に敵と戦うというスローガンを上げて目をそらす必要があったのだ。

と言う訳で、今回の展示物は誂え向きであった。早速、現場の守備隊長を褒めると、すぐさま近所の住民をかき集めさせて、校庭に集合させた。ここでも、国武中将は一石ぶった。

「皆さん、この無様な姿を見てください。これが、敵国アメリカの兵隊です。髪の毛は伸び放題、だらしのない軍服、ゲートルも巻いていない、おまけに男のくせに首飾りまでしておる。これを兵隊と呼べますか?我々は、こんな連中に負けるわけには行かない。こいつらは、野蛮人だ。民間人の家であろうが、学校であろうが、病院であろうが、爆弾を見境なしに落としてゆく。こんなことは断固として許せん。絶対にこんな奴らには負けられない。我々は、奮然として戦います。皆様も、何卒ご理解を頂けけるようにお願いします」

それだけを言うと国武中将は、トラックに載せてあった「国防献金」と大書きした四斗樽を残骸の前に置いて、そそくさと車に乗って出て行った。トラックの荷台には、まだ四斗樽が、3つ程残っていた。他にも行って四斗樽を置いてゆくのだろう。

要するに、寄付集めに回っているだけなのである。






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