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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#小説

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りを…

大河内健志
3週間前
10

短編小説『嫉妬より奥深くに棲む魔物』

旦那が単身赴任をしている北大阪のマンションにきている。 名古屋で受けた精密検査の結果が悪…

大河内健志
4か月前
26

短編小説『美味しさが奏でるメロディー』

久々に手料理を味わっている。 それにしても香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸…

大河内健志
5か月前
36

短編小説『夕焼けを見ながら二人並んで歩きたい 』

胸騒ぎがしたので、単身赴任をしている部屋へ予定より1日早く行ってみた。 やっぱり私の予感…

大河内健志
5か月前
12

短編小説『夕焼けと古い街並み』

スヌーピーのエコバックを重たそうに提げる、香田さんの後ろを離れないように歩く。 スーパー…

大河内健志
6か月前
23

短編小説『お父さんの涙』

補助輪なしで自転車に乗れた日、 今でも鮮明に覚えている。 補助輪を外して乗れるように練…

大河内健志
6か月前
28

短編小説『月明かりに照らし出される幻想』

「そろそろ閉店の時間になります」 追い出されるように二人はカフェの外に出た。 「随分、遅くなってしまったね。申し訳ない」 「私の方こそ、引き留めてしまいまして、申し訳ありません。時間を忘れて、話し込んでしまいまして、すいません。貴島支店長、夕食はどうなさいます」 「そうだね、スーパーも終わってしまっているので、近くのコンビニで何か買って帰ることにするよ。香田さんは、どうするの?」 「何にも食べません。普段は、自炊しているのですが、さすがにこの時間になると、健康に悪い

短編小説『ひとりで歌うのが好き』

ワタシは、お父さんが自殺した日から、ピアノを弾くのをやめた。 なぜなら、ピアノを始めた頃…

大河内健志
7か月前
19

短編小説『木蓮の香り』

「貴島さん、分りますか?ここのところに黒い影が映っているでしょう。こちらが、4月結果の分…

大河内健志
7か月前
30

短編小説『永遠の深い眠り』

目を閉じた。 美月と妻の美由紀が現れて、お互いに顔を見合わせて笑っている。 美月と美由紀…

大河内健志
7か月前
20

短編小説『行く当てのない旅人』

古い町並みの中に、マンションがぽつりぽつりと現れてきて、仕舞には古い一戸建ての家は売れ残…

大河内健志
8か月前
14

短編小説『食が奏でるハーモニー』

それにしても、香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸とお茶碗の重量感がいい。 こ…

大河内健志
8か月前
18

短編小説『輝きを失った黒い革靴』

玄関のドアを開けると、いきなりお父さんがいた。 「ただいま!」 うつむいて靴を磨いている…

大河内健志
9か月前
17

短編小説『娘が羽ばたいて行く』

「お父さん、ちゃんと持ってなきゃだめよ」 せっかくの休みだというのに、娘に無理やり近くの公園まで連れてこさせられた。 娘のカンナが、どうしても補助輪なしで自転車に乗りたいので付き合わされている。 補助輪を外した途端に、不安になったらしく、荷台をしっかりと持って傾かないように支えろという。 支えるというより、右に左に倒れそうになるのを引っ張り上げる様な感じで、結構重労働なのだ。 それでもカンナは、私が支えているのをいいことに勝手気ままに自転車をこぎ出す。 「お父さん