短編小説『そよ風にかき消された私の中に潜む悪魔』
二人並んで歩く。
駅前の歩道橋を渡り,香田美月が住んでいる反対側の,自分が住んでいる方へ向かった。
駅に向かう人々とは、逆方向に歩いている。
私にとってそれがささやかな反抗のように思えて心地よかった。
行き交う人が振り返るような浴衣姿の美女と一緒に居ることが、勲章を与えられた兵士のように誇らしかった。
先程から、娘のカンナと一緒に歩いているような錯覚に囚われていた。
家族三人で岐阜の長良川の河川敷に座って見た花火が、今まで見た花火の中で一番感動したという話が自然に