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『天国へ届け、この歌を』スマホ版

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#純文学

短編小説『思い出を失ってしまうことの悲しみ』

お父さんが亡くなってしまったことより、お父さんとの思い出を失ってしまったことが悲しい。 …

大河内健志
4か月前
21

短編小説『嫉妬より奥深に存在する美しい輝き』

自分のレジ袋に目をやった。 突き出ている土のついたごぼう。 スーパーマーケットのロゴが大…

大河内健志
4か月前
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短編小説『夕焼けを見ながら二人並んで歩きたい 』

胸騒ぎがしたので、単身赴任をしている部屋へ予定より1日早く行ってみた。 やっぱり私の予感…

大河内健志
6か月前
12

短編小説『夕焼けと古い街並み』

スヌーピーのエコバックを重たそうに提げる、香田さんの後ろを離れないように歩く。 スーパー…

大河内健志
6か月前
23

短編小説『お父さんの涙』

補助輪なしで自転車に乗れた日、 今でも鮮明に覚えている。 補助輪を外して乗れるように練…

大河内健志
6か月前
28

短編小説『月明かりに照らし出される幻想』

「そろそろ閉店の時間になります」 追い出されるように二人はカフェの外に出た。 「随分、遅…

大河内健志
7か月前
18

短編小説『ひとりで歌うのが好き』

ワタシは、お父さんが自殺した日から、ピアノを弾くのをやめた。 なぜなら、ピアノを始めた頃から、お父さんと遠く離れてしまったような気がするから。 急にピアノが憎くなった。 あれほど練習したのに、弾くとますますお父さんと離れてしまうような気がしたのでやめた。 代わりにギターを始めた。 お父さんの部屋には、ギターがあった。 まだ仲の良かった幼い頃のある日、お父さんがひとりでギターを弾いていた。 近くに寄って、だまって聴いていると、「弾いてみる?」と言って、ギターを持た

短編小説『木蓮の香り』

「貴島さん、分りますか?ここのところに黒い影が映っているでしょう。こちらが、4月結果の分…

大河内健志
7か月前
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短編小説『永遠の深い眠り』

目を閉じた。 美月と妻の美由紀が現れて、お互いに顔を見合わせて笑っている。 美月と美由紀…

大河内健志
8か月前
20

短編小説『行く当てのない旅人』

古い町並みの中に、マンションがぽつりぽつりと現れてきて、仕舞には古い一戸建ての家は売れ残…

大河内健志
8か月前
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短編小説『食が奏でるハーモニー』

それにしても、香田さんの作った料理はおいしい。 その上、お箸とお茶碗の重量感がいい。 こ…

大河内健志
8か月前
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短編小説『輝きを失った黒い革靴』

玄関のドアを開けると、いきなりお父さんがいた。 「ただいま!」 うつむいて靴を磨いている…

大河内健志
9か月前
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短編小説『娘が羽ばたいて行く』

「お父さん、ちゃんと持ってなきゃだめよ」 せっかくの休みだというのに、娘に無理やり近くの…

大河内健志
9か月前
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短編小説『キスで魔法が解けたのかしら』

改めて、オトーサンの横顔を見る。 微かな明かりにも左右されない彫刻の様な彫の深い顔。皺や目の下のたるみが強調されていて、実際よりも老けて見える。疲れているけど、凛とした老人のような表情。私の本当のお父さんも生きていたら、こんな風に年を取っていたのかな。 私も食べてみる。 あれ、私も味がしない。どうしてだろう。随分だしも工夫したのに、このお味噌汁、どうしちゃったのかしら。こうやってキャンドルの明かりの中で、オトーサンと二人きりで食事をするということ自体の感動が大きすぎて、