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大河内健志短編集

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2020年7月の記事一覧

嵐のあとに(小説『天国へ届け、この歌を』より)

心地よい寝息が聞こえる。 このまま余韻に浸りたい。 眠っている美月に降り注ぐ月の光を眺め…

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武蔵の微笑み(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

武蔵は思い悩んでいたのだった。 小次郎に勝てるという自信がなかった。 今まで数々の試合を…

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短篇『光り輝く大切なもの』

「どうしても出来ないのやったら、せんでもかまへん。その代わり、この会社はもう終わりや。80…

16

あの人の思い出と現実 (『夕暮れ前のメヌエット』より)

ポケットの中に手を入れて携帯電話を取り出そうとした時、田中の家族は小津さんであることを改…

8

『饗宴』

突然、光を浴びせられた。 目の前に、顔を半分覆い隠す黒光りするマスクに、黒いゴーグル。 …

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あのメロンパンをもう一度

焼きたてのクッキーの香りが、部屋中に漂う。 香ばしくて、鼻の奧が生クリームで満ち溢れるよ…

8

近江屋、突入!(『龍馬が月夜に翔んだ』より)

齊藤一は、菊屋の峯吉から、坂本龍馬が今は隠し部屋寝ている。今入った三人組は、十津川郷士と名乗っていて、近江屋の二階にいるとの報告を受ける。 「よし、藤堂平助さんと服部武雄さんが中に入って、中岡慎太郎ら三人を外に出して下さい。あくまで、不法侵入した不逞浪士を排除するという形です」 藤堂が、 「もし、刃向かってきたら?」 「当然、応戦して下さい」 日頃無口な服部が口を開く、 「相手が三人、こちらが二人で大丈夫か。それに近江屋と言えば、元力士の藤吉もおるぞ」 「それは

さまようオヤジ(『天国へ届け、この歌を』より)

後ろを振り返った。 香田さんはまだ別れた場所にいた。 私が振り向いたのが分かったのか、百…

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すべては筋書き通り(『仮面の告白 第二章』より)

これ程までに文章を書くことが楽しいと思ったことがない。 自由に空を飛び回る鳥たちのように…

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