性犯罪の神話 リファイン版 二大巨頭の根拠とその真実

      

 本件は、以前別のところで投稿したもののリファイン版です。(再犯率と暗数のところのみやっています。) 既に知っている方は今回のものは読まなくても問題ないかもしれません。もちろん、また読んでもらえるように少し加筆はされています。 あと、この話は読み手によっては不快になる可能性があります。もし読みたくないというのであれば、そのままブラウザバックなどをしてください。

            それでは本編を始めます

 性犯罪の神話 これを聞くと、被害者女性を取り巻く偏見のことを指すことが多いようだが、私にとっては性犯罪を悪魔になんとしても仕立て上げないと気が済まないのだろうという人たちがいる。 だが、色々な情報を調べていけばわかるのではあるが、世間で流布されている性犯罪で語られることこそ虚構だということを多くの人は知らない。
 これから、性犯罪被害者などにとって不快に思うような事を書かねばならない。だが、私は真実を追求したい視点と現状の状況を何か変えるために残せないだろうか?と思い、性犯罪の神話を違う視点から記録しておきたい。 

   二大巨頭 暗数と再犯率の高さと根拠の崩壊

 まず、性犯罪で語られることが多いこととして①性犯罪は再犯率が高い②性犯罪は暗数が多い ということであろう。 これにより、犯人は野放しになっているが、被害者は救われていないという大きな根拠の中枢をなしているのである。 

1.統計では何ら示されていない再犯率の高さ

 しかし、この二つの根拠には私も何度も指摘してきたことであるが、まず①性犯罪は再犯率が高い というのは日本であっても、その他の国の話を見ても突出して高いという話はないのである。

 こちらは犯罪白書から出たもので、比較的母数も多くしっかりと調べたものを引用させていただきたい。

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/54/nfm/n_54_2_7_3_4_5.html

同種再犯(性犯罪)を犯した者の比率は,性犯罪では前記のとおり5.1%であるのに対し,窃盗では28.9%,覚せい剤取締法違反では29.1%,傷害・暴行では21.1%,詐欺では11.0%(本節第1項参照)と,他の犯罪に比べて相当低い。

 これを見るに、どう見ても再犯率は統計上高いという数値は出ていない。わけである。これは日本だけではなく海外事例でも同様であり、次のような資料もある。

http://macska.org/meg/recidivism.html

米国における再犯率 より >まず挙げられるのは、合計4万6千人の元受刑者を対象とした National Center on Institutions and Alternatives の大規模な調査だが、ここでは再犯率は12.95%となっている。報告書によれば、これは他の犯罪における再犯率と比べてむしろ低い方だという。

 https://www.gizmodo.jp/2015/10/reliable-but-unpopular-therapy-for-sex-offenders.html

こちらでは、>性犯罪者全体で見れば、再犯の確率はほかの犯罪より低いのだ。 これは支援や治療抜きでも低い。 (この記事に関しては他にも興味深いところがあるので是非一読してみてほしい。)

 その他にも、Jurist No1361 前田雅英「ユビキタス社会における犯罪の現状と青少年の保護」 2008年8月  にて、同様の記載があったりと基本的には再犯率に関しては再犯率の高さについて統計に示すようなものはないというのが実情です。

 こういった嘘が流布されているのは、性犯罪をセンセーショナルに煽るために行った、性犯罪が憎いので事実に目をつむっている、ある種の点数稼ぎなど 誇張する理由はいくつもあるかもしれません。 ただ、どんな理由であれど、再犯率の事実は無視されているか、意図的に封じられているのが事実といっても過言ではないでしょう。

2.恣意的に使われるが故に、ついに根拠を持てなかった暗数神話

 今あるデータをもってして性犯罪の再犯率は高いというのは否定されそうですが、まだ、ここで完全に抵抗が収まるわけではありません。 そこに来るのが②暗数の件なのです。 性犯罪は訴える人が少ないからまだまだ実態は多いはずだと。

ただ、この暗数という話ですが根本的な欠陥があります。 
その前に暗数とは何かということを基本的におさらいしたいと思います。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より 一部抜粋
 
現実に発生した犯罪のうち,犯罪統計では把握されない犯罪数をいう。一般には警察が認知した犯罪数を「犯罪発生数」とみなすが,厳密にはそれは「犯罪認知件数」にすぎず,被害者にも気づかれずに終る犯罪や,気づかれても警察に届け出がなされない犯罪も多い。真の犯罪発生数を統計的に正確に把握することは不可能であるが,暗数調査により犯罪の実数を推定する研究が行われている。

 このように定義はなっているわけではありますが、まずは定義から見えるものを検討していこうと思います。

(1) 暗数のどこを指しているのか?
 まず、暗数というのは単純に発覚していないことを指すわけではあります。 発覚していない理由は先に書いた定義のように「そもそも被害にあっているのがわからない」のと「被害があったのを知っていても申告しない」という点に分かれると思います。

 後者はさらに被害があっても、犯罪であるとわかっているにもかかわらず何らかの理由で言わなかったというものと、そもそも犯罪として認識するほどの程度ではなかったから申告しなかったといったものに分けられるでしょう。

 このような区分けがある中で、暗数というのは数字的にも多いという統計はあるのだ! ということを主張される方もいるでしょう。 その最たる例がこのような統計ではないでしょうか?

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/59/nfm/images/full/h5-3-2-03.jpg

 ここの情報を見るに、確かに性的事件というのは確かに低い数値である。性的事件で届出がある割合は2割にも満たないものである。

 しかし、この統計を見たうえで、先に書いたことをもう一度見てみると、ここには「そもそも被害にあっているのがわからない」ことや被害を知っていても「犯罪であると認識しているのかわからない」ものまではわかるようには何らなっていません。
 あくまで、申告率というのは犯罪だと知っていたうえで言わなかったという性質のものですから、暗数全体を確認するためのものとしては不適当なものだといえるのです。(さらに言えば、何回犯罪被害にあったかまでは示していません。)
ただ、この申告率が間違った形で暗数と同等のごとく扱われているという雑な状況が存在しているわけなのです。

(2) 暗数はしっかりと基準、比較が確立しているのか?
 暗数に関して先ほどのように扱われ方におかしな点があるだけではなく、しっかりとした基準があるかどうかもおかしい状況です。
 皆様にお伺いしますが、「いったい暗数が多いとか少ないというような基準はどこのだれが作ったのでしょうか?また、暗数の過多の線引きはどこにあるのでしょうか?」 と聞かれたらどう思いますか?
 はっきり言いますが、こんなものまず誰も知らないと思います。私自身も公式見解だとかそういったものは聞いたことも見たこともありません。(あったら連絡ください。) 
比べるにしても実にいろいろな要素があるはずですが、どう考えてこられたかの過程も基準わからないでしょう。そんな疑問点を考えるために、私から少し例を出しましょう。
  
 例えば、Aという犯罪が年間2000件わかっていて、実際は2万と仮定する。Bという犯罪は年間100万件はわかっているが、実際は200万件あるという犯罪とで比較してみましょう。 Aは9割ほどわからない状況です。Bは半分はわかっています。 ですがBは100万件も知られていないわけであり、AはBに比べれば数は少なくたった1.8万です。 
 では、みなさんはどっちの暗数が深刻なのかわかるでしょうか? 難しいですよね?割合的に多いのが悪いのか、絶対数が多いのが悪いのか。 ぱっと見るとどちらも深刻に見えるでしょう? ですが、この答えは誰も示していませんよね?
 しかし、なぜだろうかそういったことはすでに検討されたかの如く性犯罪は暗数が多いと扱われてはいないでしょうか?

 また、本当に犯罪の暗数はしっかりと出して、他の犯罪と比べられているかといわれれば怪しいところです。 そもそも暗数といってもどうカウントしたのかも不明です。 数え方を間違えれば、ものによっては本来なら基礎もされないレベルの軽微なものや、常習性がある犯罪をした回数etc 色々と難しいところは多そうではあります。 そういったものをいちいち無理に推計的に数えるとなると、どうしても主観が入りやすいですし、曖昧な根拠による数字といったものは、客観的な統計基準として扱うことができなくなってきます。
 さらには、現実的に性犯罪以外の犯罪で暗数が多そうだと考えられそうなものとしては、人身売買や薬物犯罪(売買・使用・所持)、住居侵入、詐欺など色々と見当はできそうなものはいくつか散見されるわけではあります。ですが、これらについてしっかりと判断した人や比較した人ってどれほどいるでしょうか?おそらく答えるまでもないでしょう。
 
 そして、性犯罪に言われている話が、他の犯罪でまるで暗数がそれほどないかのごとく言われないのはどういったことなのか? と考えた時、暗数の過多や割合という点を中心に論じようとなった時には、真正面から答えることができる人はまずいないでしょう。
 こうなってくると、もはや暗数というのは、他人に対して何らかの印象を決めるために恣意的かつ無理やり使われているだけのものではないでしょうか。

 といった感じで、再犯率と暗数に関して語られていたことについてどこがおかしいかを解説させていただきました。
 その他にも以前にいろいろと書いてはありますが(前篇後篇)、ご興味があれば読んでおいてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?