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明石市の出生率と疑義について

 少子化対策が成功しているという事例は取り織り上げられるのだが、近年では、明石市がその対象として取り上げられている。


 彼は積極的に子育て支援をしていることを喧伝しており、子供に対してしっかりとお金を使うこと。北欧やフランスのような福祉重視のスタイルを方向性として定めている。

 その動きはマスコミにも注目されて、インタビューなども多数行われている。また、国会にも召集されるようなこともあり、少子化対策について意見を述べるほど注目を集めているのだ。

 世間の意見だけを見ていると、明石市が少子化対策を特別に行ったから出生率が向上した、人口も増えた。と、知らない人からは見えるだろう。だが、私のような知っている人間からすれば、こういった主張を素直に首肯するようなことはない。むしろいくつかの疑義をはさむことを当然行うのである。


1 まず始める前に 兵庫県内の市町村別出生率と明石市よりも多い市町村について


 まず、軽いジャブとして明石市の話をする前に、兵庫県内の出生率について、市町村別の合計特殊出生率を取り上げるとしよう。

https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf02/hw07_000000009.html より

兵庫県/合計特殊出生率 (hyogo.lg.jp) のエクセルデータから(2022/8/29時に取得)

 マスコミはよく明石市を取り上げるのだが、実際のところ明石市よりも出生率の多い市町村というのは兵庫県内にも存在している。 

 令和2年の段階だと具体的には、宍粟市1.72  南あわじ市 1.70 豊岡市 1.65 朝来市 1.70 新温泉町 1.63 加東市 1.72 といったところだ。 比較的山岳部に属している地域や、兵庫県でも北部方面に位置するところに多い。

 では、これらの市町村はメディアに取り上げられているのか?といえばNOである。そもそもここで取り上げていないと、明石市以上の市町村を知らなかっただろう人が大半だと思われる。

 理由は簡単である。リベラル側の少子化対策に都合のいい話がないだけだ。これは既に「少子化論の矛盾の渦」でも述べたのだが、福井県のような地域は取り上げても、それよりも同等以上の九州地方や沖縄県、山陰地方をほぼ取り上げないのと同じである。

 育児制度や子育て支援といったものが自分たちのお眼鏡にかなうようなほど整えられていないことや、他に都合の悪い現実が目の前にあるから、とりあげられないのだ。

 まずは軽くごあいさつ程度に、ひとつの現実を突きつけさせてもらおう。

2 周辺都市の推移および考察される事象について

 ここからが本題なのだが、明石市の出生率についてはどのようなからくりがあるのだろうか?ということを考える必要がある。その考えの一つの参考として、下記のような記事があげられるだろう。


 これは、明石市の人口の推移について紹介されている記事なのだが、この記事の内容を見ていると興味深いことが書かれている。

(1)県内からの転入数が増えていることと考えられること

県内の他市町との間では転入者が転出者を982人上回った。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202203/0015160363.shtml

年齢別に転出入を見ると、転入超過数が多かったのは、25~29歳323人▽30~34歳323人▽0~4歳183人▽35~39歳146人。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202203/0015160363.shtml

 明石市に入ってくる人口というのは、県内においては転入する人間のほうが多く、しかも転入してきている年齢については、ちょうど子育て世代直撃の年齢の人が多く集まってきているのだ。
 
 ここから何を考えられることはあるだろうが、いろいろ考えられることがあるだろうが、その中の一つの回答として

 もともと子供を産むだろうと期待される人々が、高い福祉目当てに移り住んできただけではないのか?そして、その人々は本当ならほかの市町村でも産んでいただろうが、移った結果、他の市町村から人を奪っただけではないか。

 とは、考えられないだろうか?ということだ。

(2) 周辺の市の出生率動向について


 人の移動における影響があったのではないだろうか?と考えた時に、出生率はどう変化したのだろうか?といったところを探ってみるといいだろう。

 グラフでわかりやすいものもあったので、少し紹介するが

https://www.city.kakogawa.lg.jp/material/files/group/6/dai2kijinnkou.pdf  より


 明石市は2013年から人口増が起こってはいるのだが、2015年段階では実は周辺の市町村と比べてもそこまで出生率に違いはなく、水位も同じように動いている。ここのグラフにない市町村でも2015年には、出生率が高い傾向にあった(隣接の播磨町は1.66)。

 2015年には県全体の出生率は1.48だったが、2020年には1.39まで減少した。0.09ほど平均として減っているのだが、2015年と2020年と比べると、明石市の周辺の区域が平均より減り幅が大きい。

 順にみてみるが、加古川市1.56→1.36 播磨町1.66→1.46 稲美町1.36→1.32 垂水区 1.57→1.39 西区 1.32→1.21  と隣接する地域だけ見ても稲美町を除いて下落率が平均より高い。

 確証というわけではないのだが、この数値の減り方を考えるに、周辺区域から人を吸収している結果ではないか?もちろん、平均的にもっと減っているような区域も存在しており、特に西播磨地区はほぼ平均以上に減少している。すべてにおいて明石市が原因というわけでもないとも考えられる。

 しかし、もう少し範囲を広げても、淡路市1.62→1.37 長田区1.35→1.22 兵庫区1.42→1.21 三木市1.34→1.22 小野市1.63→1.46 加西市1.46→1.26 などといった明石市から近い地域で平均よりも下げている市町村及び区がかなりあるのだ。これを偶然として片づけていいのだろうか?先の転入超過の話と併せて考えれば、単なる憶測として片づけるべきではないだろう。

3 では、本当に少子化対策の効果はあったか?


 さて、ここまで考えたうえで、少子化対策の効果は本当はどこまであったのか?もちろん、移住した人間が明石市にいたからこそ、他では産むことがなかった人がいるはずだ。もともと現地に住んでいた人にも効果がといいたいだろうが…。

 結論から言えば、当の市長ですら把握できていないだろう。

 
 それもそのはず、もし他人が明石市に移動しなかったら産まなかったかどうか、どこまでが別のところでも産んでいただろうか。なんて把握できるわけがない。少子化対策で純粋に効果がある範囲なんてのは計りようがないだろう(できているなら、現地の人の出生率増加も含めて、具体的な数値とともに喧伝しているだろう)。

 政策の効果なのか?それとも他から奪っているだけなのか?誰がそんな証明をしてくれるだろうか?

 この話は海外にて出生率を(元)移民が押し上げているのではないかという話に似ている。産んでもらえる人間をよそから移住させて、それをまるで自国の少子化政策のおかげのように喧伝する。実際にどこまで効果があるのかは伏せながら。

 明石市のやっていることは、移民か県内などの移住者かという違いでしかないのだ。

4 明石市はわかるだけの事実を出すべきでは?


 これらの疑問に対して、明石市が行えそうなことについては

①実際の政策効果をできる限りわかるようにデータで出す。
②データが出せないならごめんなさいする。

 しかないだろう。

 どうあがいても喧伝するだけの効果はないだろうが、正直に(できるかどうかは別として)効果を示せる範囲を提示できるのなら、いくらか失望はされるかもしれないが、ちゃんと答えた分誠実に見てはもらえるかもしれない。

 できないのであれば素直に謝罪・・・といいたいところだが、そんなことは行わないだろう。前からもそうだし、今でも変わったという話は知らないから。

 もし答える場面が出てきたとき、どういう風に返答するのかは知らない。だが、少なくとも色々な考察ができる中で、都合の悪い部分を無視して少子化対策のおかげだけで、人口も増えて出産を促進する効果があった。というのであれば、人を騙しているのと何が違うのだろうか?

 残りはおまけである。カンパという名目でも、支援という名目でも好きにしてもらっていい。

参考


2022年9月21日追記


 返事が来る期待はしていなかったが、これは・・・。

 2015年のデータで古いということを話しているが、こちらの疑問はあくまで同じ年度比較で周辺区域の出生率が県平均よりも下がっていることや、転入数及び年齢層から検討できることなどを疑問として提示しているのである。 年数がどうとか関係のない露骨な論点そらしなのだが、本当にやってくるのだから困ったものである。

 わかってはいた・・・わかってはいたが、本当にやられるとがっかりするしかないのだよなあ。 願わくば、もう少し客観的なデータなり論理的な意見が欲しかった・・・・。俺なんかよりも知識も地位もあるのだから。

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