社会人辞めて博士課程1年やったからどんな感じか書いていく

有料設定ですが最後まで全部無料で読めます。
投げ銭もらえたら授業料免除申請を忘れてすっ飛ばした26万円の足しにします。

博士課程に進むのは意外と簡単

ここで「博士課程」とは「博士後期課程」を指すものとします。
ザックリいうと、修士を取った後に3年通って研究するところです。

入学前に気にしてたスケジュールは以下の感じでした。

4月:学振受付開始
5月:
6月:学振締切
7月:
8月:入試(夏)
9月:学振結果(1次)
10月:
11月:
12月:学振結果(2次)
1月:
2月:入試(冬)、JST次世代等の受付・締切
3月:

博士課程の入試は(今の大学では)8月と2月にあります。

学部・修士の入試と違う点は、ペーパーテストが無いところです。
僕は博士課程の研究計画を口頭で発表する口頭試問だけでした。
(※ただし大学・研究科等による)

博士課程に入るときに必要な点は2点かなと思います。

  1. 所属したい研究室の指導教員と話をしてOKをもらう

  2. 博士課程の3年間で何をしたいかまとめる

口頭試問もよほどのことが無い限り落とされないので事前準備と受け答えをきちんとできれば大丈夫だと思います。

博士課程進学前に情報が少なくて困った部分は以下の部分なので、その辺を書いていきます。

お悩み①どうやって生計を立てるか
お悩み②研究どうするのか
お悩み③入学までのどう動くか

お悩み①どうやって生計を立てるか

在学中に確実に毎月お金がもらえる制度

まず在学中に月給を確実にもらえる制度です。
以下の2つの制度を軸にして考えました。

研究に使うお金もここから賄うことがほとんどでした。

学振特別研究員(DC1 or DC2)(略称:学振)
生活費:月20万円
研究費:年最大150万円

一応一番権威のある制度で、金額も一番多いです。
研究費は分野と研究計画によって変動します。
ただし採択率20%程度で、当たったらラッキーくらいです。

○JST次世代研究者挑戦的研究プログラム
生活費:月15万円
研究費:年40万円(追加で研究費を申し込める制度あり)
少し前から始まった制度で学振の倍くらいの人数が受かってるはずです。
きちんとした研究計画を出せればだいたい受かると思われるので、これを目指していくのがいいと思います。

僕も昨年度はこのJST次世代にお世話になりました。

JST次世代の注意点は、大学によって名称が異なることがあることです。
例えば京都大学では「京都大学大学院教育支援機構プログラム」という名称で、他の制度とひとまとめにして提供されています。
(これほんとわかりにくいので何とかならないかな)

進みたい大学院の制度をしっかり確認する必要があると思います。

類似の制度で「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」というのもあります。
これも大学によって名称が異なることがあります。
京都大学では「京都大学大学院教育支援機構プログラム」にひとまとめにされています。

不確実だけどもらえる可能性があるお金

○大学のTA・RA・RF制度
修士の時に経験したことがある方もいると思いますが、大学が規定する時給でお金がもらえます。(博士課程だと時給2000円くらいです。)
TAは授業補助、RAは研究補助です。
RFは最近始まった制度で、RAと同じように研究補助ですが、時給でなく月に固定給でもらえます。
僕はうまいこと別の研究室でRFとして雇用してもらえたので経済的にめちゃくちゃ助かりました。

その他、各種奨学金や支援制度がありますが、募集人数が少なかったり、金額が少なかったりして不確実性が高いので割愛します。

結局どのくらい貰えるのか

最大で月36万円くらいが可能です。
※内訳:学振採用(月20万)+RA雇用(週上限20時間=月80時間程度×2000円=16万円)

ただし、これは諸々があまりにもうまくいった場合なので、だいたいの人は、月20~25万円くらいに収まるのかなという印象です。

手取りを増やすために以下の事項を欠かさず申請するのが大事でした。

・入学金・授業料の免除申請
・奨学金の支払い猶予申請
・各種税金・保険料の減免申請

これで、新卒~社会人3年目くらいの手取りを確保できます。

僕は授業料の減免申請を忘れて26万すっ飛ばしたのでもし博士進学する人はマジで気を付けてください。

社会人博士

ここまで見てきたように、ぶっちゃけ収入はあまり多くないです。

もし社会人から博士課程に進む場合、可能なら今の職場の雇用形態を変更してつながりを維持したり、博士課程進学に積極的な企業に転職してから進学するのも選択肢の一つかなと思います

例えばメルカリは社員の博士課程進学を支援する制度を始めました。

お金マジ大事。生活防衛。

お悩み②研究どうするのか

博士号を取るには

今の所属では、査読論文を3本出し、それを1本の博士論文にまとめることで博士号がもらえます。

査読論文:
論文を別の研究者がチェック(査読という)をして、採用するか不採用にするか判断されます。
他の専門家のチェックが入っていることから一般的に信頼できる論文とされます。

博士課程は3年間なので、だいたい1年に1本論文を出すことが必要です。

入学前に学振やJST次世代の申請書を書きますが、そこで研究計画も一緒に書きます。
僕は社会人のうちに研究計画をある程度立てておいたので、博士課程に入ってからいいスタートが切れたかなと思ってます。

ただし、これは「博士号」を取る必要がある場合の流れです。
「博士号」を取らない場合を次に書きます。

博士号を取らない選択肢

博士号をとらないキャリアパスも考えられます。

例えば助教になるには博士号が必須でないケースもあるのを知りました。

また、3年間で新しい技術とかを身に着け「満期退学」という形で次の就職先を探すというのもありだと思います。

研究職に博士号持ちとして採用されるか、教授を目指すか以外ではすぐに博士号が必要になることは無いので、もし博士号を取れなくても別のキャリアも全然あるみたいです。

ただ、せっかく取れるなら博士号取っといた方がかっこいいかなと個人的には思います。

今年やったことで楽しかったこと(触れられる範囲で)

今年2月に研究で1人で1週間くらいロンドンに行きました。(研究です。)

研究費で行けたのでだいぶお金が浮いて助かりました。

ちょっとした空き時間で大英博物館とか行けて楽しかったです。

お悩み③入学までどう動くか

ここからは、博士課程に進もうと思った時に、どんな感じで動いたらいいか経験を基にベターな流れを考えます

○査読論文を1本出す(1年くらい)+準備

まず修士論文をまとめて1本査読論文を作ります。

査読論文があることで、学振やJST次世代が採択される可能性が上がります。
気長にやりましょう。

この作業と並行して、

・行きたい研究室を探し、教員とコンタクトを取る
・今の職場の上司等と相談する(支援制度があるか等)
・RAや研究員を募集している教員を探す(意外といます)

をやっておくといいと思います。

僕が今やってるRFも、Twitterで募集されていた同じ大学の教員にDMでコンタクトを取り、入学年度からのRF雇用(当時はRAスタートでしたが)の打合せをしました。

この辺の地盤固めで博士課程中の生活の安定感が変わります。

論文が採用されたら次のステップに進みます。
ただ、査読論文が無い状態で進むこともできます。

○学振の申請書を出す(入学したい年の1年前:4月~6月)

行きたい研究室の教員に適宜チェックしてもらいながら、学振の申請書を準備しましょう。受かればラッキーです。

○学振の結果待ち(入学したい年の1年前:9月~12月)

学振の結果が返ってきます。
受かればラッキーなので結果はあまり気にせず行きましょう。

○入試準備(入学したい年の1年前:12月~2月)

8月にも試験がありますが、学振の結果が分からない状況で受けても精神上よくないので、2月がいいんじゃないかなと思います。
ただし、早めに決めておきたいという気持ちから8月の入試を受けて、職場の引継ぎや次の生活の準備を進めておくのもありです。(僕は8月入試でした。)
ちゃんと準備してればだいたい受かります。

○JST次世代等の申請(1月~3月)

分母が多いのでこっちが本命です。
大学事務に確認しながら申請して生活費をゲットします。

大まかにはこんな感じかなと思います。

博士課程がおすすめの人

かっこいい話はいろんなところに書いてあるので、違う視点から書こうと思います。

・9時5時とかで働くのが無理な人
コアタイム(研究室にいなきゃいけない時間)が無い研究室だと割と好きな時間に好きなことできます。
平日の真昼間に映画館で映画見れます。

仕事でメンタル病んだ人(僕)
上の通り割と時間に余裕があるので、一回好きなことして落ち着く時間としても使ったらいいと思います。
奨学金借りて無職ニートでも博士課程は入れますし、働きたくないけど社会的に死にたくない場合選択肢に入れてもいいと思います。

・転職のクッション
仕事辞めたいけど、次をすぐに探すのがだるいときに一回クッションで使うのもありです。

・子育て終わった人
次の人生の一歩目に。

・海外で仕事したい人
博士課程になると自分で使える研究費があるので、将来海外で仕事したい場合、研究フィールドを海外にすることで海外で色々経験を積むことができます。

終わりに

博士課程や博士号取得者を取り巻く環境にはいろいろといわれることも多いです。

ただ、僕は今のところ楽しくやれてるので向いてたんだなあと思ってます。

自分の好奇心の赴くままに調べて、まとめて、発信するのは楽しいですね。

今年度は同じ研究室の博士課程進学者がいないので、仲間が増えるといいなあと思ってます。


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