あの日の少年から、未来を生きる子どもたちへ――GENERATIONS論考(2021.8.29)

(これは2021年に受講したライター講座の課題として提出した記事の序文にあたる論考を移植し、一部追記・修正したものです。)



GENERATIONS from EXILE TRIBE
(以下、GENERATIONS)について、なるべく多くの人に伝わるように説明するとしたら“EXILE一門で、三代目J SOUL BROTHERSの後輩グループ”だ。

そして、音楽グループとしての彼らのパフォーマンスを一言で表現するならば“少年”。かつて少年だった頃の自分達を心の中に住まわせ、同時に未来に希望を抱く次世代の少年少女達へ向け、彼らは歌い踊っている。

そのあり方を“子ども向け”と呼ぶと稚拙なもののように聞こえるかもしれないが、それはイコール“子ども騙し”ではない。何故なら彼らの真髄は、各人の高いパフォーマンススキルと真摯なエンタテインメント精神によって作られるライブのステージにあるからだ。

直近のアルバム『SHONEN CHRONICLE』とそれを引っ提げてのツアーは、そんな彼らの思いが色濃い形で結実した内容であった。

DREAMERS」「EXPerience Greatness」といった若者へ向けたエールソングを中心に置いたセットリストや、子どものラクガキのようにカラフルで少し不気味さもあるコンセプトアートを多用した映像、キッズダンサー達とのコラボレーション、そして様々な視覚的アプローチを仕掛けたアトラクションの如きダンスショーケース。中でも無音の会場内にけたたましくストンプの音を響かせ、肉声で客席を煽り、身体性のみでドームの観客へ挑んだ佐野玲於のパフォーマンスは非常に鮮烈かつ情熱的だった。

このライブでは終盤に「少年」というバラードが歌われる。

あの日の少年 今の僕を見て何を思う? どんなこと思う?
あの日の少年にもしも会えたなら 伝えたいんだ
迷わなくていいよと

GENERATIONS from EXILE TRIBE「少年」

夢を追いかけた少年時代から今までの道のりを振り返り、決意を新たにするというストーリーを持つ楽曲である「少年」。この曲で歌われている心のあり方こそが、彼らの表現の根幹を支えていると私は考える。更に言えばGENERATIONSが幅広い世代のファンに愛されている理由も、おそらくそこにあるのだ、と。

2020年、緊急事態宣言を受け5月に急遽デジタルリリースされた「You & I」という楽曲がある。GENERATIONSを応援するファンへの思いを込めて作られたこの曲は、奇しくもコロナ禍の世に放たれたことにより、彼らにとって非常に重要な一作となった。

GENERATIONSの楽曲にメロディックかつエモーショナルなEDMが多いのは(デビュー当時のトレンドであったという理由も大きいが)、その瑞々しいサウンドが2人の歌声をとりわけ表情豊かに輝かせることができるからだ。

この「You & I」は、その好例の一つである。シンプルなコード進行に乗せ、数原龍友のクリアで抜けのよい高音と片寄涼太の甘く儚げに響く低音、そしてそのハーモニーとユニゾンが深いリバーヴの中で響き渡る。少しずつ感情の波を高めていくような2人の掛け合いは、サビに至るとオクターヴユニゾンになり、大海に辿り着いたかのように優しい音色に受け止められていく。

ただし、その音色の中で綴られているのは、無謀と言っていいほどに強大で無差別的な愛だ。詞には“愛”という言葉こそ出てこないが《一瞬交差した視線で撃ち抜かれて/微かに触れた指で熱くなって》と、人と人との間で少しずつ想いが積み重なる様子が描かれ、やがてそれは《例えば明日地球が終わって/すべて消えてなくなっても(中略)君がいるならそれでいい》と、視界を埋め尽くすほどに大きくなっていく。

これほどの大それた感情表現やサビで繰り返される《一つになろう》というメッセージはともすれば綺麗事、もしくはやはり子ども騙しのようにも聴こえてしまうかもしれない。しかし、それでもこの強大なメッセージをあくまでポップスとして衒い無く鮮やかにパフォーマンスで色付けし、多くの人の心へと届けられるのがGENERATIONSというグループである。何故なら、表現者としての彼らはいつでも無謀で広大な夢を見る少年だからだ。

MVなどからも見ることができる「You & I」のダンスは、詞の中にある感情のグラデーションを立体的かつ具体的に表現しながらも、あくまで整然としており、大仰な印象は少ない。それでいて、各メンバーの時に力強く時に優しく穏やかな表情や指先まで研ぎ澄まされた動きには、彼らの演者として意識の高さと受け手に対する真摯な姿勢がしっかりと垣間見える。

そうしたパフォーマンスを通して、2020年から一年かけて様々な場所で鳴らされた「You & I」は多くの人の心へと届き、『紅白歌合戦』のステージでも歌われ、名実ともに彼らのポップネスを象徴する楽曲となった。

それぞれの音楽的ルーツはロックやヒップホップ、R&Bなど様々である彼らだが、こうしてポップミュージックの領域で勝負し続けていることにもまた“少年”たる彼らの思いがあるように感じられてならない。無論、その中で人気を獲得し続けることもまた“子ども騙し”では務まらない。ポップアーティストとしてのスタイルを貫徹してきた一流のエンターテイナー、それがGENERATIONSというグループなのだ。

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