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手癖

うちには猫ちゃんがいる。
猫ちゃんというものは、換毛期によく毛玉を嘔吐する。
所かまわず吐くため、暗闇では気づくことなくあっけなく踏んづけてしまう。
数年一緒に生活していると流石に慣れてくるため、めったに踏みつけることはないが、斬新な場所に吐かれると見事に踏んづけてしまう。

あららとばかりに、踏んづけたしまった足だけ洗うのだが、浴室でカランのほうが固定されて位置的にも洗いやすいため「カラン」方向にハンドルをひねり、足元だけ洗う。
このとき、慣れは恐ろしいもので絶対に手は1度「シャワー」方向にハンドルをひねってしまう。
「あっ、こっちじゃない!」と慌てて戻せば大抵はセーフ。
冷静に「カラン」方向へひねり直す。
「これって『あるある』だよな」と思いながら石鹸で足を洗い、次に間違えないように、「カラン」の方向を再度確認しておく。
それでも次にハンドルをひねる時は、怖い。
用心して用心して、無事にハンドルをひねりあげる。
万事平静である。

「また間違えてシャワーにしてしまいびしょ濡れになりました」なんてそんなベタな面白い事件なんておきない。
それでも一瞬、こんなことありましたって嘘を書けそうな気がしてしまう。
僕も誰かが喜んでくれるなら、平気で嘘をついてしまいがちな生き物なんだな。
Xでも、これどう考えて嘘だろという話題がよくおすすめに表示される。

まあでも面白いのでいいか

と最近は思うようにしている。
世界は面白いことと、優しいことで溢れているんだという妄想のもと生きるのが幸せに生きるコツなのだろう。
みんな器用に生きているなあ。

ただ、今回無事だっただけで、
シャワーとカランを間違えることは茶飯事なのである。

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