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松岡美術館「美しい人びと 松園からローランサンまで」感想と見どころ


1.概要

松岡美術館で開催されている「美しい人びと 松園からローランサンまで」を観てきました。松岡美術館は初めて訪れましたが、コレクションが多岐にわたりとても楽しめました。

「美人画」 という言葉が一般的になったのは明治期以降ですが、美しい女性像は古くは神や仏の姿、また正倉院に伝わる唐時代の女性図などに見出すことができます。

そして、在原業平や光源氏、源義経など物語に登場する魅力的な男性像も、多く絵画や工芸などに描かれてきました。

 今展では、上村松園、伊藤小坡、鏑木清方、伊東深水ら人気の高い「美人画家」たちの作品とともに、江戸時代から昭和時代の日本の絵画と工芸、そして近代の西洋絵画にあらわされた、年齢や性別にとらわれない美しい人びとをご紹介いたします。

*前期・後期で額装作品と床の間の蒔絵棚をのぞき、展示替えをいたします。

展覧会公式HPより

2.開催概要と訪問状況

展覧会の開催概要は下記の通りでした。

【開催概要】  
  会期:前期2023年2月21日(火)~4月16日(日)
     後期2023年4月18日(火)~6月4日(日)
開場時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
     第一金曜日のみ10:00~19:00(入館は18:30まで)
 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
一般料金:一般/1,200円
     25歳以下/500円
     高校生以下 / 無料
     障がい者手帳をお持ちの方 / 無料
    ※美術検定の合格証を持っていると100円引きになります。

美術館公式ホームページより

訪問状況は下記の通りでした。

【アクセス・会場】
JR目黒駅から徒歩15分ほどでした。自然教育園の外周沿いに歩いていけばよいので、ド方向音痴の私でも迷わずたどり着けました(笑)。館内はロビーから見える中庭が綺麗で、椅子も多く設置されていてゆったりした気分で過ごせそうな空間でした。
    
【日時・滞在時間】
平日の14時頃訪問しました。企画展自体は1時間弱で見終わりましたが、同時開催の展示、常設展も見て美術館を後にしたのは16時頃でした。

【混雑状況】
平日の割には人が多い気もしましたが、それでも落ち着て鑑賞することができました。作品と作品の間隔も広くて見やすかったです。

【写真撮影】
一部を除き撮影可でした。ただしシャッター音のするカメラは禁止なので要注意です。

【ミュージアムショップ】
ポストカード、クリアファイル、一筆箋など豊富でした。企画展ごとに図録を作っている感じではありませんでしたが、小パンフレットのようなものが200円で販売されていました。こちらはオススメです。

3.展示内容と感想

展示構成は下記の通りでした。

美しい女びと
美しい男びと
西洋の人びと

出品リストより

美術館のコレクションの中から古今東西の「美しい人」を描いた作品を展示するという趣向でした。いわゆる「美人画」だけでなく、あまり目にする機会のない肉筆浮世絵、院展の出品作など多彩な作品を楽しむことができました。描かれている「美しい人」も身近な人、物語の登場人物など様々だったのですが、日本画においても神話、歴史上の登場人物が重要なインスピレーション源になっていたことが分かったのが面白い点でした。故事に題を取った作品は柔らかな色彩ながら骨太な印象なのが特徴かと思いました。一方で市井の人を描いた作品は季節感や生活感の演出方法に画家のこだわりが感じられれ、中でも伊藤小波の作品は小道具の細やかな描写が印象に残りました。

西洋絵画に関してはほぼ制作年順に作品が並べられていたのですが、こちらも通して見ると作風の潮流があるように思えました。19世紀末まではモデルの美しさをそのまま画面に収めようとしていたのが、20世紀以降はモデルを媒介にして画家が思う美しさを絵に表そうとしていたように感じました。

「美人画」の成り立ちや西洋における横たわる女性像の起源など豆知識も散りばめられており、楽しみどころの多い展示でした。

4.個人的見どころ

個人的に印象に残った作品は下記の通りです。

◆松室 加世子「竪琴」1984(昭和59)年 松岡美術館
◆松室 加世子「燭光」1985(昭和60)年 松岡美術館
和洋折衷というか、和風ゴシックといった趣のある作品でした。金を多用しながらも闇を感じさせるところが魅力でした。

松室 加世子「竪琴」1984(昭和59)年 松岡美術館
※グッズのポストカードを撮影

◆池田蕉園・池田輝方「桜船・紅葉狩」1912(明治45)年 松岡美術館
池田蕉園は2年前にサントリー美術館で開催された「ミネアポリス美術館展」で「花見図」という作品を見て以来気になっており、今回別の作品を見られるのを楽しみにしていました。

作品の奥ゆかしさに魅かれたのですが、今回展示されていた作品も描かれた人々の物憂げな表情が印象に残りました。花の盛りよりも散り際の儚さ、祭りの楽しさよりも宴の終わりの寂しさが連想されました(池田蕉園は31歳の若さで亡くなったそうですが、作者の生涯と作風を重ねてしまいます)。

池田蕉園「桜船」1912(明治45)年 松岡美術館
※グッズのポストカードを撮影

◆鏑木清方「保名」1934(昭和9)年頃 松岡美術館
今回の展示で一番印象に残った作品です。美人画の名手は男性も美しく描けるんだなと感嘆しました…。歌舞伎の演目「保名」が題材とのことですが、描線のシャープさが主人公・安倍保名の凛々しさを、効果的に配された衣装の紫が高貴さを表しているように思いました。

◆梶川文龍斎「源氏蒔絵棚」江戸時代 松岡美術館
棚の面によって源氏物語の名場面が二重、三重に重ねて描かれており、物語性に加えて緩急も演出されているように思いました。

◆キース・ヴァン・ドンゲン「天使の反逆」1923年頃 松岡美術館
退廃的な美しさを漂わせた作品でインパクトがありました。危険な雰囲気に満ちているのですが、どこか知性を感じさせるところが作品のスパイスになっているように思いました。

5.同時開催、常設展の感想

「美しい人びと 松園からローランサンまで」の鑑賞後は同時開催されている「憧憬のペルシア」、「古代オリエント 想像の源」、常設展示も鑑賞してきました。はっきり言って衝撃度はこちらの方が高く、古代エジプトや中東の出土品、古代ギリシア・ローマの彫刻など世界の考古学的に価値が高そうなものを日本人のコレクターがこれだけ所有していたということに驚愕しました。特に常設展の古代東洋彫刻のコーナーが印象に残りました。中国、インドの重量感のある石仏が展示されていたのですが、日本の文化は中国に習いつつも基本的に石より木の文化であり、土壌が違うということを肌で感じられました。

6.まとめ

今回初めて松岡美術館に伺いましたが、展示のバリエーションが豊富でサービス精神を感じる美術館でした。常設展も含めてまたじっくり観に行きたいと思います!

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