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東京都現代美術館「デイヴィッド・ホックニー展」感想と見どころ


1.概要

東京都現代美術館で開催されている「デイヴィッド・ホックニー展」を観てきました。たまたま書店でホックニーのエッセイ「春はまた巡る デイヴィッド・ホックニー 芸術と人生とこれからを語る」を見かけて興味を持ち、今回の展覧会を楽しみにしていました。
※今回紙の作品リストがなく、PDFの作品リストのダウンロードに失敗したため作品名がうろ覚えです。どこかにダウンロード用URLないかな…。

東京都現代美術館では、2023年7月15日(土)から11月5日(日)まで、「デイヴィッド・ホックニー展」(主催:東京都現代美術館、読売新聞社)を開催します。現代で最も革新的な画家のひとりデイヴィッド・ホックニー(1937年、イギリス生まれ)の日本では27年ぶりとなる大規模な個展です。

ホックニーは60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表し続けてきました。本展は、イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、近年の風景画の傑作〈春の到来〉シリーズやCOVID-19によるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作まで120点余の作品によって、ホックニーの世界を体感できる機会となるでしょう。

展覧会公式HPより

2.開催概要と訪問状況

展覧会の開催概要は下記の通りです。

【開催概要】  
  会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
 休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
 観覧料:一般 2,300 円 / 大学生・専門学校生・65 歳以上 1,600円 /
     中高生 1,000円 /小学生以下無料
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。

展覧会公式HPより

訪問状況は下記の通りでした。
    
【日時・滞在時間】
日曜日の10:30頃入館しました。作品数は多かったのですが作品と作品の感覚が適度で、スムーズに鑑賞できました。企画展は12:00前に見終わり、美術館2Fのカフェで昼食。その後常設展も回って14:00頃会場を出ました。

【アクセス】
東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」から歩いて10分ほどでした。1回しか曲がらないのでわかりやすいと思います(私は曲がるところで通り過ぎてしまいましたが…)。

【混雑状況】
当日券の購入窓口には列ができていましたが、混雑しているというほどではありませんでした。大型の作品が多く離れて見る方が多かったのも見やすさの要因かもしれません。

【写真撮影】
1F展示室のみ撮影可でした。

【グッズ】
ポストカード、トートバッグなどおしゃれなものが多かったです。特に団扇が目を引きました。ありそうでなかなか見かけない気がします。

3.展示内容と感想

先述の通り最新のエッセイを読んでホックニーに興味を持ったため、「大ベテランにも関わらずiPadといった新しいツールを積極的に取り入れる好奇心と創作意欲が旺盛な人」といったイメージを抱いていました。実際に作品を目にすると、確かに様々なメディアが使われていてエッジが立っていたのですが、ホックニーが一貫した興味関心に基づいて制作しているというマインドも伝わり、見ごたえがありました。

展覧会はテーマごとに8章にまとめられていて、ほぼ年代順に展示されていました。と言いつつ最初に2020年にiPadで描いた作品「No.118、2020年3月16日 「春の到来 ノルマンディー 2020年」より」(2020年、作家蔵)が出迎えてくれるのですが、微妙な空の色合いを様々な色の線を重ねることで表現している点が印象に残りました。初期のアクリル絵の具で描いた作品やリトグラフの作品の中にも同様の傾向が感じられ、元々タッチペンや指で線を引くiPadと相性の良い作風だったのかなと思いました。

初期の作品はアメリカ西海岸のカラッとした空気感が感じられる一方で、リトグラフの波や雷を描いた作品は「和」が感じられて面白いなと思いました(作品名を控えてこなかったのが悔やまれる…)。後で調べるとホックニーは福田平八郎の「漣」を見て衝撃を受けたという記事を見て納得しました。

※参考サイト

ホックニーは「自分が見た光景をいかに知覚した通りに作品化するか」ということを長年追求しているそうです。「龍安寺の石庭を歩く 1983年2月、京都」(1983年、東京都現代美術館蔵)は線遠近法では台形として描かれる庭をいかにして人間が知覚した通り長方形として表すかということを追求したそうですが、複数の視点で撮った写真を繋ぎ合わせることで本当に長方形の庭を再現しており、テーマに対する思い切った回答だと驚きました。その進化系と思われる「2022年6月25日、(額に入った)花を見る」(2022年、作家蔵)は見ていると酔いそうになるのですが、人間の知覚は色んな情報をバランスを取って調整しているんだなと妙に感心してしまいました。

人物を描いた作品も魅力的なものが多かったのですが、中でも「両親」(1977年、テート蔵)という作品が印象に残りました。その前に展示されていた「クラーク夫妻とパーシー」(1970-71年、テート蔵)では凛々しい立ち姿の女性の独立心のようなものを感じたのですが、こちらの作品は女性(ホックニーのお母さん?)がかがんでいる男性と視点を合わせるように座っていて、長年連れ添った夫婦の呼吸のようなものを感じさせました。

2Fの関連書籍展示コーナーより

後半はiPadで描いた大型の作品が展示されていて、生命力あふれる描写に魅了されました。「春の到来」(2011年、ポンピドゥー・センター蔵)の連作はコントラストの強い色彩にインパクトがあったのですが、特に道や水たまりの描き方が印象的でした。ピンクで塗られているのですが、春から夏にかけて色が濃くなっていき、ホックニーの目には光の強さがこう感じられたんだなというのが伝わってきました。

デイヴィッド・ホックニー「春の到来」2011年 ポンピドゥー・センター蔵

最後の部屋に展示されていた「ノルマンディーの12か月」(2020-2021年、作家蔵)は圧巻でした。事前に90mの大作という情報を見てiPadで描いてるのに作品のサイズってあるのか?と思っていましたが、1作品ごとにプリントアウトして絵巻のように貼り合わされていて、まさに四季の移ろいが表現されていました。長閑な農村風景の中にも雨が降ったり車で訪問する人がいたりと、人が描かれていないにも関わらずドラマを感じさせるところに情緒がありました(遠慮なく作品が壁に釘で打ち付けられているドライさがなんとも…)。

デイヴィッド・ホックニー「ノルマンディーの12か月」2020-2021年 作家蔵

4.まとめ

作品のバリエーションが豊富なだけでなく、人がものをどう見るかということを考えさせられるとても面白い展覧会でした。全体的にユーモアと優しが感じられ、心が豊かになる展示でした。会期まだありますので、気になっている方は是非観覧されることをお勧めします!お子様連れも楽しめると思います!!

5.余談

地下のレストランを狙っていたのですが激混みで断念…。2Fのカフェに行ったのですが、サンドイッチもミルクティーも美味しくて大満足でした。こちらも色々試したいメニューがあったので再訪したいと思います(笑)。

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