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大きな木とスミレちゃん(4)


いきなりのスミレちゃんとのお別れの翌日。

マヤは、日差しの明るさで目を覚ましました。

時計を見ると、9:00AM!?!?!?

マヤ:「お母さん!?どうして起こしてくれなかったの!?学校・・・」

マヤのお母さん:「今日は、お休みしてもいいかなって思って。だって、昨日の今日だもんね。今日は、部屋にこもるのもよし、散歩に出るのも、お母さんとお出かけだって、OK!」

そう言って、お母さんはウィンクをしてみせました。

マヤは、苦笑いしながらも、なんだか安心していました。

マヤ:「お母さん、ありがとう。読みかけの本があるから、今日はリビングでゆっくり読書してもいい?」
マヤのお母さんは、またウィンクして返しました。

マヤは、何も触れず、静かに自由にさせてくれた母の存在が、とても心地よくて安心していました。その日は、母はいつものように家事をこなし、マヤは読書したり、一緒に手伝ったり。ゆったり、そして、まったりとした時間を過ごしました。

マヤ:「お母さん、スミレちゃんって、もしかしたら、あの木の妖精だったのかな。」

マヤのお母さん:「それ、あるかもしれないよ!スミレちゃんも一緒に過ごしてくれるお友達が欲しかったのかもね。いつか、バッタリ会うことがあったりして。」

そう話しながら、マヤとお母さんは笑いあいました。


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スミレちゃんとの不思議な出会いと別れから、10年の時がたち、マヤは、東京で大学生になっていました。大学では、同じく読書好きな友達が沢山できました。その中でも、ブッククラブで出会った沖縄出身のレイカちゃんと、不思議なくらい意気投合し、仲良くしています。

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ある夏休み。
レイカちゃんと一緒に、マヤの実家で夏休みを過ごすことになりました。

マヤ:「次の夏は、レイカが出身の沖縄に行こうよ!」
レイカ:「いいね!でも、すっごく暑いし、マヤは溶けちゃうかも。」
マヤ:「だからって、冬に行ってもなぁ。海行けないじゃん。」
レイカ:「沖縄の人は、海は泳ぐとこじゃなくて、まったりと夕焼け見たりして、楽しむの!」

二人、笑いあいながら、家路に向かいます。

レイカ:「うわぁ!!立派な木!なんだか、沖縄のガジュマルを思い出すわぁ!」

二人が立ち止まったのは、あの、スミレちゃんと出会った木が移植された公園の横でした。

マヤ:「この木、移植されてたの。元々は、私の寄り道先だったの。小学校の近くの公園。」

レイカ:「どうかしたの?なんだか、マヤ、急に遠くに行っちゃた感じ。」

マヤ:「ごめん。ごめん。スミレちゃんっていう子の事を思い出してたの。すっごい不思議な出会いだったんだ・・・。」

レイカ:「ね、せっかくだし、コンビニで買ったサンドイッチ、あの木の下で食べない??」
コクリと頷くマヤ。・・・久しぶりだなぁ・・・。

そして、マヤは、レイカにスミレちゃんの話をしました。

いつも急に現れて、マヤが来たら降りてくるって言っていたこと。
スミレちゃんが通っていた学校も、住んでいた家も知らなかったこと。
手作りのワンピースをくれたこと。

マヤ:「きっとあの木の妖精だったと思うんだよね。不思議すぎて、実はレイカに初めて話すんだ。お母さん以外は、ね。」

マヤは、ウィンクしてみせました。

すると、レイカは急に立ちあがり、真剣な顔で、

レイカ:「きっと、妖精だったんだと思う!」

マヤは、レイカのその様子に思わず笑ってしまいましたが、レイカは真剣に続けます。

レイカ:「沖縄では、ガジュマルっていう大きな木があって、この木は幸福を運ぶ木って言われてるの。そして、この木にはキジムナァっていう妖精っていうか、精霊が住んでるって言われてるの!実は、私と弟、子どもの時に見たことあるんだよ。」

レイカは続けます。

レイカ:「お母さんもオバァも、オジィも、みんな信じてくれたんだよ。キジムナァは、赤毛で、いたずらっ子で、いっつも遊び相手を探してるんだって。すっごい賑やかに走り回って、いたずらしあって遊ぶんだって!」

そういって、スマホでキジムナァを検索し、見せてきました。

マヤ:「ワンピース着てる・・・。でも、キジムナァって、男の子じゃん!」
レイカ:「女の子もいるんだよ!」

そして、またスマホを差し出してきました。

レイカ:「私のオバァが育った村では、キジムナァは幸せを持ってくるって言われてて、私のオジィは、子どもは純粋だから、見えるんだよって言ってた気がする。そして、お父さんが言うには、キジムナァは仲良くしてくれた人間のお友達は、ずっと守ってくれるから、悪くしちゃいけないよって教えてくれたんだよね。結局のところ、何が本当のことなのか分からないんだけどね。でも、なんか、沖縄っぽい気がして、私、好きなの。キジムナァ」

マヤ:「ちょっと待って!スミレちゃん、彼女もあまり友達がいないと言っていた。そして、その理由が、きっと当時のマヤと同じだって。周囲の子たちと比べて、静かな子で、あまりにマイペースだったから。。。」

レイカ:「ほら!スミレちゃんの周りが、忙しくいたずらばっかり、賑やかに遊んでばっかりの子だらけだったとしたら・・・?」

そして、二人は上を見上げ、

マヤ:「スミレちゃん、私が木の下に来たら、降りてくるって言ってたしなぁ・・・」

マヤ:「ところで、レイカってどうして東京の大学を選んだんだっけ?」

レイカ:「実は、沖縄の大学に決まってて、そっちに行くつもりだったの。両親に経済的な不安かけたくないし。そしたら、急に、本当にいきなり、奨学金がもらえることになったの!みんな、そごい驚いて、私、また悩みだしたんだよね。そしたら、お父さんが、せっかくもらえたチャンスだ!行ってこい!って言ってくれたんだ。」

マヤ:「レイカと弟って、キジムナァ見たことがあるんだよね。。。」

静かにそう呟いたマヤに、

レイカ:「そう、遊んだ記憶があるの!一回だけだけどね。」

シーーーーーーーン・・・・・・・

マヤ:「スミレちゃん!?」
レイカ:「あの、キジムナァ!?!?」

二人飛びあがりました。

マヤ:「レイカがスミレちゃんだったのかも。」
レイカ:「遊んだ、あのキジムナァって、スミレちゃんだったのかも。」

マヤ:「でも、沖縄と静岡・・・。海を越えなきゃ・・・。」
レイカ:「そして、木はガジュマルではない。。。」
マヤ:「仮に、スミレちゃんが、木の妖精だったとして、沖縄以外にも木に住む精霊とか妖精がいるとして・・・」
レイカ:「幸福を運んでくるとして・・・。守ってくれるんだとしたら・・・。」

マヤ:「これからも、仲良くいてね!」
レイカ:「もちろん!こちらこそ!だって、私、東京で大学行くの、すっごく不安だったの。でも、マヤと知り合って、安心したんだー。大学では、沖縄出身って知ったとたん、飲み会の声がかかったり・・・。私、そんなんじゃないのに・・・。」

マヤは笑って、
マヤ:「私がレイカのスミレちゃんみたい!」

二人は、笑いあって、来年の夏は、沖縄でガジュマル巡りの旅を決めました。

マヤ:「ダイエット始めなきゃ。」
レイカ:「せっかく色白になってきたのになぁ・・・。こんがり色に戻っちゃうなぁ…」


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