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大雪山・ニセイカウシュッペ山

日程:2001年6月23〜24日
メンバー:Fさん、Nくん、ぼく

 夏雲湧き、暑い風吹く週末でした。景色の中で見える牧草地はまるで芝生のように刈り干され、またサイレージ作業で酪農家さんたちは大忙しです。

     この週末は、実家へ寄り東京に検査へ発つ母に会ってから、Fさんと、そして、Fさんと職場を同じくするN君と、大雪山・ニセイカウシュッペ山へと行って来ました。

     層雲峡をはさんで北側にどっしりと端麗な姿で鎮座する、ちょっとした遙かなる山だったのですが、林道の延長によりずいぶんと楽ちんな登山コースとなりました。

「なんで週末にわざわざ疲れに行くのさ」と言う母を何故か切なくなる気持ちを悟られぬよう抱えて別れ、遠○町で食糧や冷えたビールを買い込んで、待ち合わせ場所へ。そして、一度林道13kmを経て登山口の偵察。そして快晴の夕陽に望めるニセイカウシュッペ山を確認。遠いなあ、と思う。

     夜はテント泊。初めて同行したN君は、とても純粋で誠実な好青年でありまして、またアルコールも飲めるため、あまり飲めないFさんとの山行とは違った盛り上がりになりました。星がきれいだ、と何度も感心しています。
夜は不気味なトラツグミの声を間近で聞きながら、暑いような涼しいような体感温度の中、眠りに就きました。

 今朝は4時起床。とは言っても3時には明るくなり始め、1種類ずつさえずる鳥たちのコーラスに起こされました。外は、昨夜の満天の星空がうそのように「くもり」。しまいには、ポツポツと雨まで降り出し。。。

     さっさとテントを撤収して登山口へ。

     すでに数パーティが入山しています。広い散策路のような登山道は次第にダケカンバやミヤマハンノキ、ウラジロナナカマドとチシマザサの茂る、ぐちゃぐちゃの道となります。しかし、いつまでたっても登山らしい斜面というのはなく、だらだらと、ダラダラと道は続いていくのです。視界もないし・・・

 雪渓が現れはじめると足元にはショウジョウバカマが次々と現れます。
ジャージと、新調したザックと靴に身をまとったN君は別段息があがる風でもなく、足が止まる風でもなく、てくてくとFさんとぼくの間をごく自然に歩いています。

     途中でカタツムリを見つけては触ったり、休憩ではちゃんとおやつを食べたりとそれなりに楽しんでいるようでしたが、ガス(霧)で下部が確認できない2ヶ所ある急斜面の雪渓トラバースでは、さすがに怖かったようです。

     Fさんはカタツムリを「エゾタイセツカタツムリ」だとうそぶき、N君は信じてしまったりしている。ぼくもエゾノツガザクラのスズランのような可憐な赤紫の花を食べられるんだよと言うと、N君はひとつ取って口に運ぶ。
みんなうそつきだ、と思ったことでしょう。N君、ごめんな。

     あれこれと時間だけが経ちまして、頂上まで2時間と聞いているぼくと、3時間以上を覚悟していたFさんは、あっけなく初参加のN君を連れて視界が真っ白で風だけが強い、広い頂上へと着きました。

     稜線上は、高山植物が群落ごとに咲き乱れています。白、赤紫、薄黄などと、例え絶景の表大雪は望めなくとも、乳白色の世界に包まれた中に広がる、水滴をしたためた高山植物たちというのも美しいものです。

    これは、会の大先輩であるS口さんが好きそうな山、コースですよね。
    しばらく視界が利くことを希望的観測で待ちましたが、結局晴れずに同様に天気回復待ちをしている何故か山に単行本持ってきて読みふけっている人や、カメラを抱えたとても威勢の良い人などと会話をし、下山しました。

     登る途中で追い越した人は実家のある町に住む知り合いの方であったり、下山時には今は大学で副手をしている学生時代の同級生ともすれ違い、やあやあ、と懐かしがり、なんだか世の中狭いなあ、と思った山行でもありました。

     下界は、やはり晴れでして、夏の陽射しを車窓から浴びながら長い帰路に着きました。

 遥かなるニセイカウシュッペ山は、近くなりました。

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