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芦別岳

日程:1992年2月22〜24日
メンバー:Kさん、Fさん、ぼく

 芦別岳(1726m)は、屏風岩、夫婦岩を抱えた大きな山容であり、バリエーションルートも存在する魅力的な山である。登山道も新道と旧道があり、旧道から望む本峰は鋭く槍のように聳えている。頂上直下の西側には広いお花畑があって、十勝連峰や夕張岳などへの眺望にも恵まれている。
 2月、今回狙ったルートは、冬尾根ルートと呼ばれる新道尾根のすぐ南側の尾根を使い、半面山の直下で新道尾根と合流して頂上をめざすルートである。尾根自体はあまり急ではないが、標高1000mくらいから尾根は細くなり、傾斜も増してくる。尾根の下部、取り付きあたりでは林道がかなり造成されており、うまく利用できるかも知れない。
昨年2月、Kさん、Fさんがアタックしたが、天候に恵まれず断念。今年2度目の挑戦となる。

2月22日(土)
事前にFさんからの計画書に同封してあった待ち合わせ場所に、札幌、稚内、網走からの3人は12時に富良野出張所に集合。車一台で山部へ向かう。山部の警察署に計画書を提出する。
駅より国道を右折し、最初の踏切のある道路が20線であり、その一本隣の道路を西進。西3号線とぶつかって、そこで除雪されていない林道となる。
右にリサイクルセンターか何かの建物があり、左には紅葉川が流れている。
ここに車を置いて、山スキーなどの準備をする。正面に見えるはずの山容も雲のため見えない。日差しもあって暖かい。
12時50分出発。カラマツ林の中に林道ははっきりと続く。橋を渡る。歩きだして2キロ程で林道は、右上に分け、続く。(赤布あり)
ここからの林道は、ハンノキやらの若木が邪魔をしている。左は沢であり、山腹を横切るように林道は伸びている。やや急になり、林道は二股に出る。この二股にさせる目の前の尾根に右側から取り付く。トドマツを中心にした明るい尾根であるが、低木も多い。
はっきりした樹林帯の尾根を上へ上へつめてゆき、約標高800mのひらけた地点に、15時45分、BC設営。
夕闇が早く訪れ、時折、強い風がテントをたたく。18時、上富良野のSさん(JE8DQW)と定時交信。久しぶりの声。

2月23日(日)
4時起床。Fさんは以前からの風邪のためテントに残ることになった。
Fさんに見送られ、Kさんとヘッドライトをつけて、5時25分出発。やや急斜面をジグザグにつめると一本の完全な尾根上に出る。明るくなりだしたが、北西風が強く、雪も舞う。右隣の新道尾根も時折望める。
6時30分、標高1065m地点を越し、柔らかい雪をラッセルしながら高度をかせいでゆく。白い静寂なダケカンバやトドマツの樹林帯。尾根はさらに狭くなり、急斜面になってくる。Kさんは強い。
7時35分、尾根をつめたクラストした広い地点に飛び出す。半面山1397mである。
風が体を叩く。視界も利かない。一本のダケカンバにぶら下がった鐘を鳴らす。
風を避けて、すぐに熊の沼側へ降りる。真っ白な世界。視界悪い。
ツェルトを被って小休止。
ここからルートは夏道上を辿らずに右にあるはずの第5稜ドーム(屏風岩)とのコルをめざし、一気に雲峰山をめざす。真っ白で広大な斜面に慎重にルート旗をつけてゆく。ジグザグに登高して、ようやく越すと少し降り、トラバースしてコルに出る。
9時5分、ツェルトを被って休む。相変わらず視界が悪い。
少し強引にピークを目指す。あとは頂上への稜のみであるが、右は本谷にスパッと切れ落ち、雪庇もある。左側は急斜面でポントナシベツ沢の方へ落ちているようだが確認はできない。忠実に右に雪庇を見ながら、クラストした斜面をジグザグに登る。叩きつける風で顔が痛い。やや左から回り込むようにして高度感のないまま頂上の岩場に出る。10時30分。
風が猛烈に強く、アイゼンにも履き替えられない。視界も全くない。
スキーで降り、バランスを崩すと板状の雪層がザァーと雪崩れてゆき、冷や汗と共に慎重に降りてゆく。風で顔が痛く、目を開けてKさんを確認するのも困難。
11時35分、熊の沼辺りでツェルトをかぶる。Kさんの持ってきたあんぱんのあんが多いことに驚く。12時にFさんと交信し、登頂して下山中の旨を伝える。
半面山でまた鐘を鳴らして、尾根に降りてゆく。風当たりもなくなった。下りで少し右側の沢に寄ってしまい、すぐに戻る。雪が柔らかくスキーも楽しい。
13時、標高1064m地点にFさんが迎えに来てくれていて合流。
13時15分、BC着。
早速、ビールで乾杯!今回は500mlを5本も持ってきたのだ。長い午後、酔いも回り、3月の山行計画の話をしたり、うとうとしたりしながら、今日中に撤収して下山すれば良かった、と3人でつぶやいたのは夕方だった。のんびりと時間を忘れて過ごす。静かな夜となる。

2月24日(月)
5時20分、睡眠たっぷりで目覚める。朝日を浴びた優しい樹林帯の朝である。
7時5分、BCを撤収して、シールも外して下山。Fさんはショートスキーでかっこよく滑り降りる。ぼくはザックにくくりつけたゴミに振り回されながらヨタヨタと降りる。途中、知らない林道を発見し、少し利用する。
8時5分、車に着いた。ちょうど1時間。振り返ると初めて見る冬の芦別岳の山容。青空の下、真っ白でどっしり構えた半面山と、天に聳える屏風岩、その奥に芦別岳本峰がのぞいている。
その懐へ向かうまっすぐな林道に一本のトレースが残った。

エピローグ
朝早く下山したぼくらは警察署に無事に下山したことを伝えた後、富良野北の峰スキー場へ向かい、900円のゴンドラ一回券を購入。
イチャイチャのアベックとゴンドラに同乗し、たくさんの色とりどりのスキーヤーに混じって、目の前遠くに十勝連峰を望む長いゲレンデを滑り楽しんだ。その後は温泉に行ったのだった。
芦別岳&リゾート満喫山行に大満足で帰路についた。


芦別岳の山容


スキー場にて

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