鶯と霍公鳥

鶯の初音

2月27日のサンセットの写真を撮っていたら、竹藪の方から鶯が鳴いているのが聞こえてきた。右方面から聞こえてきたと思ったら、左方向からもホウホケと下手な鳴き声が流れてきた。鶯の初音! 今年は少し早かった。鶯の初音は、3月に入ってからの方が多い。
温暖化だからといって早まることはないだろう。鶯が鳴き始めるのは、日の長さが関係するという。毎年、初音を気にしているけれど、2月末前後に鳴きはじめる。
ブンブンスカイファームで鶯の歌を聞きながら、ミツバチの世話や野菜の草取りなどするのは楽しい。巣作りをしたりしているのを、雄が鳴きながら守っている。4月が過ぎて5月初めごろまでが、鶯たちの楽園だ。

ホトトギスの初鳴き

鶯が浮かれて楽しんでいるところに、南の国からホトトギスが飛来してくる。夜寝付けずに布団でウダウダしていると、ホトトギスの憂いを含んだ声が聞こえてくる。今年もやって来ましたか! と鶯の身になってあ〜あと思う。ホトトギスの初鳴きは、あまり嬉しくない。というのは、ホトトギスは鶯に子育てをしてもらうために日本へやってくる。
鶯が卵を産んだのを上から見計らって、巣から鶯が離れたすきにホトトギスは卵を1個産んで巣を離れる。鶯はホトトギスが卵を産み入れたのは気がつかず抱卵する。よくしたことに鶯の雛より1日前にホトトギスの卵が孵る。生まれたての雛なのにすごいのは、鶯の卵を1個ずつ背中に載せて外に放り出す。全部の卵を捨てると悠々自適! 鶯の母が運んでくる餌を独り占めしてあっという間に、巣からはみ出すぐらいの大きさに育つ。ホトトギスの托卵成功!  

高橋虫麻呂の歌

万葉集巻第九1755に高橋虫麻呂のホトトギスの托卵の歌がある。
万葉では、「霍公鳥」と書いて「ほととぎす」と読ませている。

 鶯の 卵の中に 霍公鳥 独生れて 汝が父に似ては鳴かず
 汝が母に似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛びかけり
 来鳴きとよもし 橘の花を居散らし 終日に 鳴けど聞きよし
 幣はせむ 遠くな行きそ 吾が宿の 花橘に 住み渡れ鳥

万葉の時代には、すでにホトトギスの托卵が知られていたのがすごい。
ヨーロッパではゲーテの時代にカッコウの托卵を知ってひどく面白がったいう話が伝わっているという。日本ではそれより千年も早くわかっていたことになる。
我々祖先の観察力の優れていたことを誇らしく思う。

参考文献:万葉集註釈巻第九 澤瀉久孝 中央公論社


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