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「普通」と、「当たり前」と、に囲まれて…(『コンビニ人間』)

私にとってこの本は、
 『人生を変えてくれた本。』『人生を教えてくれた本。』『考え方を変えてくれた本。』『生きやすさを与えてくれた本。』『心の中のわだかまりを溶かしてくれた薬。』
 捉え方は、無限にあるが、確かに言えることは、私にとってこの本との出会いは、確かに意味あるもので、出会うべくして出会った本だと思える。

このような人生を、世界の見方を変えるような『本』に、記事を読むすべての人が出会ってくれたらと思いながら、書いていこうと思う。

※一度でいいから、本を読む人全てにこの記事を読んで欲しいと願っている。

1.紹介する書籍


・村田沙耶香『コンビニ人間』(文春文庫)

★こんな人にオススメ!

  • 「生きづらさ」を感じている人

  • 自分って「変わっている」と感じたことがある人

  • 「常識」がおかしいと思ったことがある人

  • 自分の見ている「世界」を捉え直したい人

  • アルバイトや仕事で悩んでいる人

2.なぜ、この本を勧めたいのか。

私は、20年以上生きてきた中で「生きづらさ」であったり、「なぜ、こんなことになるのだろう?」と考えることが多くあった。
きっと、誰もそういった経験をすることがあったのではないか?
そして、生きている中で誰もが一度は耳にするセリフ、また心の中で「波」が立つ言葉があるはずだ。

・それって「当たり前」でしょ?
・それが「普通」じゃん。
・〜って「変わってる」よね。

誰もが一度は、言われたことがある言葉なのではないか?この言葉を耳にするたびに、『コンビ人間』読んでみて欲しいな、と感じる。

「当たり前」や「普通」に縛られているうちは、周りと"同じ視点"であるということを忘れないでいてほしい。
→「みんな違ってみんないい」という言葉があるのと同様に、自分にしかない「見方・考え方(価値観)」があるのだと知ってほしい。

3.本書のキーワード

①正常と異物


現代社会をまさに表している描写が数多く見られる。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたのだと思った。

(本書p.25より)

主人公である古倉さんが感じた言葉である。私自身もアルバイトの経験があるが、初めてアルバイトを経験して感じたことは、これだ。
特に、チェーン店でアルバイトをしていた私は、それを強く感じた。
マニュアルを第一としてそれ通りにこなすことで、「成立していく仕事」と、それと同時に感じる「誰でもできるという仕事」への違和感。
自分自身、このお店の「部品」に、「歯車」になっている感じがあったが、それを上手に表現している部分だった。

泉さんと菅原さんの表情を見て、ああ、私は今、上手に「人間」ができているんだ、と安堵する。

(本書p.34より)

この部分では、周囲の人に「合わせる」ことで、自分という存在が成り立っていると実感している主人公がわかる。
私たちは、時に誰かの顔をうかがいながらコミュニケーションを取ったり、「空気を読んで」生活しようとしている。そうすることで、周りと「繋がっている」気持ちになれるから。
しかし、
周りの人と同じなんてこと、実はありえないんじゃないのか?私たちは、成長する過程でそれぞれで違った経験をしているのだから、多少は分かり合えることはあっても、実際にわかりあうことはできない。

と思っても、実際には「合わせる」しかない状況もある。

あ、私、異物になっている。ぼんやりと私は思った。
正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。
そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。

(本書p.84より)

「異質」は排除される。
これは、どんなところでも起きている。学校を見ても「いじめ」は遺物を排除しようとする動きだ。
社会でも「この人おかしい」と思ったら、その人とは「関わらない」ようにする。そうやって社会は回っている。

私が考えることは、人間において「歯車」として、不良品であったらそれを排除するのと同様に、社会のシステも「異質」と判定されたら、排除されるシステムになっているということだ。それも、人が人を捌くという環境が出てきるという視点も考えることができる。

②多様性

白羽さんという男性の考え方が私は、大好きだった。

この世は現代社会の皮をかぶった縄文時代なんですよ。
大きな獲物を捕ってくる。力の強い男に女が群がり、村一番の美女が嫁いでくる。狩りに参加しなかったり、参加しても力が弱くて役に立たないような男は見下される。

(本書p.92)

「縄文時代」を例に挙げてくるとは!
はっとさせられた。
でも確かにそうだ。社会に適することができない人、周りと歩幅が合わせられない人、普通を演じることができない人は、ズレていると見られる。
そういった環境が少なくない。
私は、この本を読んで、そんな人に出会った時には、
まずは
「向き合ってみるべきだ」という考え方が生まれた。その人にはその人なりの考え方があるのは当然であるはずだ。
★変わっていると感じる人も、自分の視点から見たときに、変わっているだけであって、自分にだって変わっているところはあるという姿勢をとりながら考えていくことが必要なのだ。

4.本書の魅力

私は、この本を読んで社会に対する見方が変わった気がした。
それは、

 ①社会の構造を把握しようと思い直すきっかけとなったため

現代社会において、どんなこと職に就くにしても、嫌でも「雇う側」と「雇われる側」に分けられる。「雇われる側」のマインドが全てこの本には、綺麗に描かれていた。だからこそ、自分自身に刺さったのだと思う。また、本書を全ての人にお薦めしたくなったのだと思う。

②「普通」ってなんだろうか?と問い直すきっかけになったため

村田さんの本はどの作品を見ても「常識」を疑ってかかる。「普通」とは何か?と今作では挑戦的に物語を描いていた。「普通」なんてものは、ない。あるとするならば、それは私たち自身で作り上げた「妄想」なのかもしれないという感情にさせてくれた。そのことを教えてくれたおかげで、心が楽になった気がした。

③「世間」での自分のあり方について考えられたから

生きていく上で「自己」と「他」については永遠に考えていかなければならない。いくら切りたいと思っても切り離せない。
時に、自分を見つめて自己内対話をしてみたり、他者と比較したり、真似たりしながら何か得られるものはないかと模索してみたり、他者が存在するからこそ、「自分の像」を確立することができる。
それを教えてくれているのも本書だと感じた。

5.おわりに

今回は少し長めになってしまった。でも、伝えたいことはまだまだ無限にあるから、また続きを今度書こうと思う。
とにかく、
本には、「わたしたちを未知の世界へ連れて行ってくれる」という魅力があるということだけでも伝えられていたら幸いだ。
私にとって、村田沙耶香さんの本との出会いは、確かに人生を変えてくれた。
一人でも多くの人が、自分に適した本、作家さん、作品に出会えますように。

おっきい。

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