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7.時間がないなら最後の部分だけでいいから読んで下さい!ぜひ彼の事だけは知って欲しい。

・暇だったら遡って見てみて下さい。


部活に行かなくなってからは
月曜、金曜、土曜に大人の練習について行かせてもらい、暇な人に教えてもらう。
シングルをやってもらったり、色々な種類のショットを教えてもらったりと部活では教えてもらえないような事や、より実践に近いものをたくさん教えてもらえるこの環境でのバドミントンがとても楽しかった。

現に、部活に行っていた時よりも確実に自分のレベルが上がっているのが肌で分かった。
昔から人のまねをするのが得意だった僕にとっては、上手い人に囲まれる練習が合っていたのだと思う。

部活に行っていた時より上手くなっているという現状。
ますます部活に行く意味がなくなり、より一層部活と言うものを排除するようになっていた。


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市内大会

先輩から次の日曜に市内大会があるから朝学校集合との連絡があった。
市内大会とはいえ
バド部があるのが僕の通う中学校ともう一校しかなかったのでほぼ対抗戦みたいな雰囲気である。

その学校は過去に団体戦で全国2位になったこともある中学で昔から有名で、コーチもそこを卒業し大学時代もバリバリやっていた人がやっており、何より全中2位のメンバーがたまに教えに行っているという。

大会当日会場の相手高についた時、普段教えてくれている人が来ていた。
なんでこんなとこに居るんだろう、なんで相手の子たちはその人の前で整列してるんだろう。
そしてその時初めて知った。

全中2位のメンバー7人の内、僕は知らない間にその中の2人から教えてもらっていた。
ましてや、その人たちが連れてくる高校や大学で名前が売れているような人に教えてもらっていたらしい。
ただの優しい面白いお兄ちゃんたちくらいにしか思っていなかったが、どうやらすごい人に教えてもらっていたみたいだ。

試合前にその人が話しかけに来てくれた。

「決勝までは余裕だと思うけど、決勝で当たる奴には勝てないと思う。
 でもあいつは都でも注目されてるやつだからなるべく色々考えながらやってごらん」

なんでやる前から勝てないとか言うんだよーといつも通りふざけていた。
その人と話し終わった後、初対面である相手校の生徒に囲まれ関係を聞かれたことは言うまでもない。

試合が始まった。
相手の一年生は初心者しかいないし、まだそんな月日も経っていなかったことから正直上手な同級生はひとりもいなかった。

自分の学校は男子が2人なのでほぼ部内戦を見てるだけで、試合とも言えない様な緩めの雰囲気だったが、
いざ僕がコートに入ると明らかに「アウェイ」と言うのがビリビリ伝わってきた。

相手は同じ1年生。勝てない相手ではない、しかし、ミスをすれば相手陣営が盛り上がり、得点をとっても静かで相手には声援が送られる、こんなにもやりづらいものなのかと思ったと同時に少し羨ましかった。
男子も少なく部内の立場もない僕の試合には、きっとにこれだけの応援が付くことは無いだろうから。

そのまま順当に勝ち上がり、準決では2年生にも勝ち何とか決勝に行けた。
もちろん向こうからは話に聞いていた先輩が上がってきた

結果から言うと案の定負けた。
手も足も出なかったかと言われればそうでも無いのかもしれないが、向こうが全力でやっていたと思えない内容だった。近くにこんなに強い人がいるのかと感動した。話しを聞けば、僕がブロックベスト8でわーわー言っていた大会で都大会のベスト4までいっていたらしい。そんな人と試合できただけよかった。

僕は準優勝で賞状がもらえたが、女子は強い人が何人もいたので自分の学校から3位までに入った人はいなかった。大会が終わってから自由に試合していいという事でいろんな人に試合を申し込んでもらい、ヘトヘトになるくらい試合をする事ができ、得るものの多い大会だった。

次の日の全校朝会で表彰されたのは僕だけ。部活に出ていない僕だけ。
部員や顧問は僕が練習しているのは知らないから
「練習もしてない奴がたまたま2位になれた」みたいに思われていたらしい。

ただ僕にはそんなことは関係なかったので、相変わらず部活には行かなかった。
練習にならないからと調子のいいことを言っていたが、正直他の部員とあまりに気まずかったから。
もちろんその頃には同級生の女子たちにも「練習してないくせに打てるのがウザい」と言う理由でしっかり嫌われていたし、そのことも知っていた。

だからこそ練習にならないからとか、他の方が練習になるからと理由をつけて部活に行かなかった。
ただその空気に耐えられなくて部活から逃げてたと周りに思われたくなかったから。
でも何も言われないために練習して、結果を残してきた。


しかし、結果を残して目立てば目立つほど
練習が命という他の部活の顧問からは関係がないのに反感を買い、その先生が持つ部活の生徒にひどいことも言われた。

「なんで部活サボってんの」「練習したくないならやめれば良いじゃん」

なんでそんなことをお前に言われなきゃいけないんだよ!!!
そう言いたかったが言えなかった。中学で初めて会った子だし、そんなに話したこともなかったから、ただただ笑ってごまかしていた。


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ドン

そんな事を言われている時
「なんでお前がそんな事言うんだよ!」
僕が言えなかった事をきっと僕が言うよりも強い口調で言ってくれた子がいた。

その子は小学生から一緒の「ドン」というあだ名の男の子
体格はがっちりしていて、めちゃくちゃ優しく、年下の子からもドン、ドンと呼ばれるくらい、誰からも愛される温厚な子だった。
そんな子が僕の代わりに怒っている。


すごく驚いた。
別にすごい仲良かったとかじゃなかったから。

僕はサッカーで彼は野球をやっていたし、放課後に遊んだこともないし、学校では普通に仲良くしてたくらいで、なんならお互いにもっと仲いい奴はいっぱいいた。

それなのに彼はすごく怒ってくれていた
確かに今僕に嫌なことを言ってきている子とドンは同じ部活だけど
それだけで割って入ってきてくれるだろうか。僕には同じことは出来ないと思う。

彼が言ってくれた言葉がその時の僕には信じられないくらい刺さった。

「おかかの気持ち考えたことあんのかよ!
 おかかは部活に男一人しかいないんだぞ!支えてくれる人が部内にいないんだぞ!
 部活行きづらいに決まってんだろ、『俺ら』におかかの気持ちなんてわかんねぇだろ!
 それでも表彰されるくらい外で練習してるんだよ!
 二度とそんな事言うな!」

僕は勘違いしていた。
仲間がいないなんて思っていたけど、部活は違くてもここまで考えてくれていた人がいた。
確かに仲がいい奴らに「部活いかないの」なんて一回も言われたことなかった。

『俺ら』という言葉にすごく優しい彼の人間性が出ていたと思う。
自分もわかってあげられていないけど、僕にはそういう風に聞こえた。

自分のことをこれだけ理解してくれている人がいる
自分のやってきた人が伝わっている人もいる

それだけでいままでやってきたことが間違いじゃなかったんだと
そう思う事が出来た。

周りと違くたって、周りがあってるとは限らない

周りと違くたって、その自分を理解してくれる人も必ずいる

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部活の思い出

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